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相談相手

 喫茶店から出た僕達はここから近くの城址公園に行って散策する。


「んーっ、木陰が涼しくて気持ちいいー!」


 美海は気持ちよさそうに伸びをする。陽射しは暑いがそれ以外は風が吹き涼しい。


「そうだな~っ」

「散策日和ね!」

「え? けどお前はよく運動しているだろ?」

「そうだけど散策したい時もあるわーっ」

「僕は運動不足になりがちだから丁度良いな」

「こんだけ気持ちが良いと一人で歩くの勿体ないし」


 こっちに素直な笑顔を向けてくるものだからついドキッとする。


「あぁ、なんだ。それなら良かった」

「うん!」


 城址公園は歩くには十分広く、周回する頃に僕だけへとへとになっていた。


「何もうへたったの? 情けないわねっ!」

「お前の体力と一緒にするなよ!」


 陽も少し傾いてきたからそろそろカラオケに行こうかな……。


「次はこの公園をランニングで1周ね!」

「え!? それは勘弁してくれ!」


 しかし結局、僕も走らされてしまった(僕のスピードには合わせてくれたが)……。

(少し皮が剥けた……)

 そしてこの公園から歩いて15分先にあるカラオケに行って、美海を先に歌わせる。なぜなら僕は足が疲れて座りたかったからだ。選曲は僕が’80~’00の懐メロ、美海が最近の曲を歌う。お互いに違う曲を歌うが選曲が重ならないから逆にそれぞれの曲が新鮮に感じて楽しみ熱唱する。歌う時は楽しみ、歌ってない時は盛り上げる。


「あー、楽しいわね!」

「そうだなーっ」

「どう、私の歌唱力は?」

「相変わらず上手いなー」

「そ、ありがと!」

「僕のコップは……あった。そうか。移動したりしたからあっちにあるのか」

「私が取るわね!」

「良いよ、自分で取るっ」


 そうしてコップを取ろうとした時、疲れが出たのか足がグラッとなり美海の方にドタッと倒れてしまった。


「わっ!?」

「きゃっ!」


 彼女を軽く押し倒してしまい、彼女の上に僕が四つんばいの形になってしまった。目の前に髪が少し乱れた美海がいるから僕はついドキドキしてしまった。何分見つめ合っただろうか。彼女の顔はどんどん紅くなっていき、僕は時間の感覚がなくなる様な感じに陥る。そして彼女は目を閉じて唇をそれの真ん中に寄せていく。


「み、美海?」

「……」

「……」


 ど、どうする。まだ許嫁に選んでいない美海とキスをするか!? 美海が待っている。据え膳食わぬは男の恥か!? よし、行こ……と思ったが、僕は途中で止まる。

(しかし僕はまだ美海のことを……)

 僕はキスをせずすっと離れて座った。


「……? 要?」

「帰ろう、美海」

「え、でも……」

「帰ろう」

「……分かった」


 僕達はカラオケボックスから出てそのまま一言も喋らず列車に行きそのままお互いの家に帰った。部屋に入った僕はトントンとベッドを叩く。

(最低だ……僕は。麻美姉も美海も、由美も真剣に僕を好きになっているのに僕はどうした? 三人から一人をなかなか決められず、彼女達の気持ちをないがしろにしていないか!? けど僕は……)

 色々考えた挙げ句ある人に相談することにした。それは……、


「要君どうしたの?」

「よ。お久」


 同じ小、中学の時の同級生だった霧島美希だ。彼女とは習い事が同じで家も近くだから区域も同じだった。だから菊地姉妹とは別で小さい頃から仲良かった。しかしそれぞれ別の高校に入ってから連絡はしてなくて疎遠気味だったが、女の意見を知るべく奮起して連絡を取ってみたのだ。


「実は……」


「え!? 今そんなことになってんの!?」

「うん……」

「許嫁……」

「うん……」

「菊地さんとねぇ……」

「うん……」

「しかもあの有名だった姉妹揃って」

「うん……」


 美希はしばらく無言になった。


「好きなの?」

「え?」

「三人のこと好き?」

「も、勿論好……」

「恋愛感情として?」

「え?」

「恋愛感情として好きなの?」

「それは……」


 僕はそれ以上答えられなかった。果たして恋愛感情として好きだっただろうか? 勿論僕は彼女達のことを好きだし、大切に思っている。しかし僕は彼女達にどういう意味で好きなのだろうか?


「答えられないってことは恋愛感情としては好きじゃないってことね」

「え? けどそれじゃあ僕は一体彼女達をどう好きなんだよ」

「そりゃあ幼馴染みとしてじゃない?」

「幼馴染みとして?」

「そう」


(成る程。幼馴染みとして……か。とてもしっくりいく答えだ)


「どうすれば良い? 勿論彼女達のことを好きだし大切な存在だ! でも決められない」

「私に言われてもそれは分からないわ……」

「そうだよなーっ。分かった、ごめん」

「ううん。大丈夫」

「ありがとう、じゃ」

「あ、待って要君!」

「ん?」

「もし良かったらいつでも相談して? 私が大丈夫な時はいつでも相談に乗ってあげるから」

「あ、あぁ、ありがとう美希。助かるよ!」

「うん、じゃあ、またね」


 通話を辞め、僕は思う。

(久しぶりに連絡取ったが、やっぱり美希は話しやすいな)

 なんたって僕が初めて好きになった相手だからだ。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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