美海とのデート(1)
翌、日曜日。
僕は8:00頃に目を覚まし、朝ご飯を食べて部屋に戻りぴしっとした服に着替える。そして美海が待っている駅前に向かう……あれ、いない!? いないんですがこれは如何に!?
確か約束の時間は列車の時間に合わせて10分前の10:20だったよな? もう約束の5分前だぞ?
それから10分ほど待っているとへとへとになりながら美海が来た。
「美海遅……どうした美海? いやに疲れているな!」
「はぁ、はぁ……姉さんに……色々邪魔されて……」
「麻美姉が!?」
「そうよ……!」
「まさか……」
「夜食に睡眠薬仕込むわ……ドアに南京錠するわ……最後は通せん坊するわで大変だったんだから……!」
逆によくそんな状況で来れたな……。
「そ、そうか……」
「起きたのは15分前だし……、ドアは施錠されていたからぶち抜いて来たし……」
「え!? ぶち抜いてきたのか!?」
「えぇ……。今頃父さんは泣いているわね」
「お、おう……」
菊地の親父さん少し可哀想……と珍しく思ってしまった。そして大分美海の息切れが収まってきた。
「さて呼吸の乱れも収まりそうだし、列車も来そうだからそろそろ行くか?」
「えぇ」
そして列車に乗り、市内へと向かう。
「どこ行く?」
「え? あぁ、ごめんなさい。考える暇がなくて、ほとんど計画立ててないわ」
またかい……。
「じゃあ一緒に考えるか!」
「えぇ、そうね!」
そして列車の中で僕達はデートの計画を立てた。
昼ごはん:喫茶店
城址公園散策
カラオケ
といった感じだ。
さて市内に到着して僕達は徒歩で喫茶店に向かう。
「どこの喫茶店に行くの?」
「えーと、この近くに喫茶店があるんだ」
「へーっ、詳しいじゃない?」
「そりゃあだってきの……」
「きの?」
「いや、何でもない……」
それを言ってしまうと、なんか美海の琴線に触れる気がする。そして喫茶店に着き、僕達はくつろいだ。待っていると学生さんのバイトらしいウェイトレスが来たので、お互いにランチを頼んだ。
「私はミックスサンドイッチセットと紅茶」
「僕はしょうが焼きセットとオレンジジュース」
美海がふふっと笑う。
「相変わらずの子供舌ね」
「煩いなーっ。コーヒー、紅茶苦手なんだよ」
「けどそういう所が良いわね」
「え? あぁ……そうか?」
あれ? なんかデジャブ? しかし、今日は可愛いウェイトレスだなと思って見惚れていると、隣から高圧的な目線を感じた。
「ん、んん!!」
僕はびくっとして見るのを止めた。
「良い雰囲気の店ね!」
「……あ、あぁ、そうだな」
「喫茶店らしい渋い建築じゃない!」
「あぁ」
ふーんと彼女は言いながら周りを見回して、
「やっぱり喫茶店と言えばマンガね!」
そして美海はマンガを取りに行き、食事が来るまで机の上に積み上げたそこそこの冊数のあるそれらを読みふけった。
相変わらずマンガ好きだなーっ。美海は少年漫画から少女漫画までいける口だ。グロいのとホラーは苦手だ。最近はどうか知らないが。特に彼女はラブコメが好きで、恋愛系のマンガを300冊は揃えている。この前そう言っていた。
僕は彼女の楽しそうな顔を見てから、スマホをいじった。昼前だからか客はまだ少なく、しばらくくつろいで待っていると注文の品が来た。
「いただきます!」
「いただきます」
「美味しいわ、ここの料理」
「それは良かった」
食事を楽しんでいると美海が突然大事な話を振ってくる。
「ねぇ、要」
「ん? なんだ?」
「私は貴方の為に何が出来る?」
「え」
「一歩でも貴方の許嫁に近づきたいの! だから私、許嫁になる為なら何でもするから!」
「いきなりそんなこと言われてもだな……」
「そうよね、ゴメン。急ぎすぎた……」
「……」
「……」
「……美海は、美海のままで良いよ」
「え? でも……」
「繕ったって仕方ないさ」
「……」
「美海らしくいてくれ」
「分かったわ……」
そうでないと僕は彼女に何か申し訳がないと思ったからだ。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
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