由美とデート(1)
昼頃部屋でくつろいでいると、由美から連絡が来た。
『13:00頃に駅前集合ね♪』
そして僕はそろそろ行く時間になったので、制服に着替えて家を出ようとすると、母が僕に不思議そうな顔で声をかけた。
「今から学校に行くの?」
「いや、違う」
「じゃあなんで制服に着替えてるの?」
最もな疑問だ。僕も知りたい。
「それは……ちょっと最近のファッションかな?」
「最近のファッションって制服がトレンドなの?」
知らない。
「相手が制服で会いたいって言ったから仕方なくこれで行くんだ」
「ふーん、変わった人と会うのね」
確かにそれは言える。けど母さん。あなたがよく知ってる人物ですよ。
「そう。ところでご飯どうする?」
「向こうで食べるよ」
「分かったわ」
そして僕は家を出て駅前に向かった。そこに13時10分前に着いたら、既に由美がテニスのラケットケースを持ったまま中学の制服を着て待っていた。
「由美ーっ」
「あ、お兄ちゃん♪!」
「待ったか?」
「ううん。今来たとこー」
「で、どういうデートプランなんだ?」
「え?」
彼女はキョトンとした顔で僕の方を見る。
「お兄ちゃんが考えてくれてないの?」
「へ?」
「?」
「何言ってんだ。お前が誘って……お前まさか……」
「ん?」
「デートプラン考えてなかったのか!?」
「うん、そうだけど?」
「なんで……?」
「デートプランって男が考えるものじゃないの?」
はぁ、と僕はため息を吐く。(駄目だこいつ……)
「いいか? 由美から誘ってきたんだから由美が作らないと」
「え? そうなの?」
「そう!」
「そうなんだ。初めてのデートだから知らなかった」
え? それって……、
「今まで男とデートしたことないのか?」
「うん♪ これが初めて」
そ、そうなのか? そう言われたら僕も1:1のデートするのは初めてだった。彼女は目をきらきらさせながら僕を見つめる。僕は髪をガシガシさせながら、僕も人のこと言えないなと思った。
「そうだな。じゃあ一緒にプラン考えるか」
「うん♪」
「けどその前に列車のダイアル見たか?」
「見てないよ?」
見てみると後2分でここに来る予定だった。危ねっ! そして列車に乗りその間二人で市内をぶらぶらするデートプランを考えた。
まずは食事をしに、ラーメン屋に行くと由美は明らかに不満そうだった。
「えー、せっかくのデートなのにムードなーい」
「いやいや、贅沢言うなよ。安くて美味しいところと言えばラーメンだろうが。それにラーメン好きだろ?」
「それはそうだけど……」
彼女は口を尖らせむくれている。
「じゃあ、どこ行くんだ?」
「うーん、あっ、じゃあ喫茶店にしようよ」
「あー、喫茶店かぁ」
最近喫茶店には行かないなぁ。悪くないが行かないから場所分からないぞ。
「構わんが、僕あまり喫茶店知らない」
「ググれば良いじゃん」
由美が調べたら、ここから徒歩で5分の場所に喫茶店があるそうだ。そして僕達はそこまで歩く。
「へっへー、お兄ちゃんとデート♪ デート♪」
由美は幸せそうな顔で僕の横を歩く。
(全くいつも明るい奴だ)
「そんなに嬉しいか?」
「当たり前じゃない。お兄ちゃんとデートだもん。嬉しいに決まってるよ!」
「そうか?」
そんなに言われると、僕も嬉しいな。
「テニスはどうだ?」
「うーん、一応レギュラーだから、頑張らないと」
「そうだな」
こいつは小学校の時からテニスやってるから、中一の後半の時は既にレギュラーに選ばれていたな。ところで……。
「学校はどうだ? 例えば男子との関係とか」
「男子……うーん、そうだね。相変わらずちょくちょく告白されてるね」
「そうか……」
そして山崎君の言葉を思い出す。
──くっ、他にも俺みたいな奴は学校に沢山いる。
「男の存在をにおわしているのに男子って懲りないよねー」
「そんなことしているのか!?」
「友達との会話の端々にちょろっとね」
のほほんとしているとはいえ由美も女。こ、怖い……。
そして僕の腕に絡みに来る。
「お兄ちゃん♪」
「ゆ、由美!?」
「いつもお姉ちゃん達にされてるんでしょ? 私だけ除け者にしてズルイ!」
「別に除け者にした訳じゃあっ」
「離さないんだからねっ♪」
「ったく」
「今日は私だけのもの~♪」
そして喫茶店に着き、お互いにランチを頼んだ。
「私はたまごサンドイッチセットと紅茶」
「僕はカレーライスセットとオレンジジュース」
由美がぷっと笑う。
「本当お兄ちゃんって子供舌~♪」
「う、煩いな! コーヒー、紅茶苦手なんだよ」
「けどそういう所が可愛い♪」
「……」
こうして僕達は喫茶店でわいわい話ながらのんびりと過ごした。店を出て、腕を組みながら次はボウリングセンターに向かう。
「ということは女子友達も薄々由美に男がいることを知っているんだ」
「うん」
「そっかーっ」
「けどにおわしているだけで、彼氏がいるとは一言も言ってないの」
まぁ、確かにいないからな……と思っていると突然後ろから声が聞こえた。
「由美!?」
「え?」
──そこでは彼女がアイドル的な人気があること……
という言葉が頭によぎりながら声の方向を見ると、そこには由美と同じ制服の女子生徒がいた。
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