座談会
三人集まったので“美人”なりの苦労話について色々訊く事にした。麻美姉が開口一番に喋る。
「そうねぇ。やっぱり興味ない男からいっぱいアプローチがあるのは大変よねえ」
それは僕も思う。もしそういう事が僕にも起きたとしたら、少し嫌な気分になるだろう。
「嫌な気分にはならないのか?」
「うーん、全くないと言えば嘘になるけど、やっぱり女として魅力があると感じてくれる人がいると思うと嬉しい方が先にくるわね♪」
豊満な胸を張りながら彼女の謙遜のないニヤけ面の様子につい少し腹が立つ。一方美海はどうかというと、
「やっぱり彼らに気を使わないといけないから嫌ね」
「お前はそうだよな」
「うん」
告白してから反応が素直になったものだからまだ少し戸惑う。
「気は使うけど、自信湧かない?」
「私は姉さんと違うのよ!」
「まっ、それもそうね」
「多少は慣れているとはいえ、やっぱり人から見られてる気配があるからどうしても気になるわ」
「そうなの? 由美はどうなの?」
「私? 私はあんまり気にしたことないから分かんない」
「何それ? 女の子なんだし変な人もいるんだから、もう少し周りに気をつけないと駄目よ!」
おっ麻美姉、由美に姉らしいこと言うじゃないか!
「そんなにスキだらけなら、変な男につけ回されるわよ!」
「ぶーーーーっ」
つい僕は思わず吹いてしまった。
「どうしたの要ちゃん? 汚いわ!」
「い、いや。別に……ゴメン」
ま、麻美姉的確過ぎる……。
「後はそうね。階段に上がる時の男子の目線とか」
「あーー」
「うんうん」
美海がこの話題を言ったら、周りの二人は共感した。
「それは仕方ないわよね」
「まぁ、そうだけど嫌じゃない?」
「まあねー」
「私はあんまり気にしないようにしているかな?」
「そうなの姉さん!?」
「だってスカートが短いんだから見えるのは仕方ない部分はあるというか、見えるのを覚悟しているというか、可愛いための犠牲というか」
「私は絶対に隠すわ。パンツ見られたくないもの!!」
「私も流石に押さえるかなー」
僕はつい黙ってしまう。男としてあまり触れられたく内容だからだ。
そうか、麻美姉はスカートの中見られるのあまり気にしないようにしているのか……。
「ま、それはそうなんだけどねっ」
「当たり前じゃない!」
「ま、私も流石にそれは姉ちゃん寄りね」
「姉さん、これからは隠してよね」
「え?」
「え? じゃないわよ。隠してよ!」
「え、う~んまぁ……ね」
「えっ? ちょっとどういう反応それ?」
「いや、別に??」
「別に?? じゃないわよ。変よ返事が!」
「お姉ちゃんどうしたの?」
「え? いやその何? それは人によるんじゃないかなと思って」
「は?」
「え? お姉ちゃん?」
麻美姉は姉妹からの目線をそらした。なんか様子がおかしいぞ?
「いやだってそれをしないと丸見えに……え? まさか姉さん……」
「ん?」
「見せたいの?」
「え?」
「えぇ!!?」
「何言ってるの美海。そ、そんな訳ないじゃないっ!」
そう言いつつも顔を赤らめ、目はかなり泳いでいるぞ。
「そうなのか? 麻美姉!?」
「え?」
「私達に誤魔化しは通用しないわ!」
「う……」
観念したように麻美姉は首を縦にふった。
「そ、そうだったのか……」
「偶にいるじゃない。露出癖の人が! まさかとは思ったけど姉さんそういう趣味が……」
「お姉ちゃん、姉として尊敬していたのに……引くわーっ」
「うっ」
そ、そうだったのか。これからは目線に気をつけないと。
「姉さんの意外な一面を見てしまった。だから見られるの平気……いや、それどころか快感だったのね!」
「え? ちょっと美海、それだと私は変態みたいじゃない」
「充分変態よ!!」
「う……」
「ところでお兄ちゃんはどうなの?」
「え?」
「そうね。男子の意見は気になるわねっ」
「え?」
「男はなんでスカートの中を見たいの!?」
「えーと……」
困った……。これを訊かれたくなかったから、あまり話さない様にしていたのに……。
「それはそのーっ……」
三人はじーっと僕の方を見る。
「やっぱり女子の下着は気になるから……?」
「はぁ。もうどうして男って馬鹿なのかしら?」
「面目ない」
「まぁ、けど私はお兄ちゃんに見られるんだったら嬉しいかなー♪?」
「え?」
「勿論それは私もそうよ!? 要ちゃんが一番よ!!?」
「えぇ!?」
「それは私も……って私は違うわよ!!?」
美海だけ顔を赤らめながら目を泳がす。分かりやすい。
「他に苦労はないのか?」
これ以上は気まずいので僕は急いで話をそらした。
(全くこの三姉妹は……)
まぁけど少なくとも麻美姉は他の内容も苦労と感じてなさそうだが。しかし意外にも彼女から言った。
「やっぱりラブレターの多さは大変ね。一人一人にちゃんと断りを言わないといけないから」
「うんうん」
「そうねーっ」
「言葉にしろ、書くにしろ相手の気持ちを考えながら返事しないといけないから」
「うんうん」
「まぁ、そうねーっ」
(あぁ、成る程。それは大変だな。麻美姉にも苦労があったのか)
そう思っていると、女子からの嫌がらせとかねと美海が言い、ピタッと僕達の空気が止まった。
「美海虐められてんの?」
「え?」
「え? お姉ちゃんはないの?」
「由美もあるの!?」
「うん。それはちょっとね」
「そ、そうなんだ。私はないわ……」
「それは姉さんが副会長として学校で男女ともに尊敬されているからよ」
「そ、そうなのかしら。そんなこと今までになかったから」
「それは確かにあるかも。小学校の時、友達がよくお姉ちゃんのこと羨ましそうに言ってた」
「そ、そうなの?」
麻美姉は何とも言えない顔になっていた。
「ま、とにかく二人に何かあったらお姉ちゃんに相談しなさい。私が何とかしてあげる!」
「姉さん……」
「お姉ちゃん……」
麻美姉……流石長女にして副会長だ、頼れる!
「けど姉さんが原因で虐められたことある」
「え?」
「中学の時によく姉さんと比べられて」
「そうなの!?」
「それは私も私も~」
「え? 由美も!?」
「うん」
「け、けど次こそは何とかしてあげるから!」
「けど高校生活始まったばかりだからまだないわね」
「あ、そ……」
「そもそも私はお姉ちゃんと学校違うから頼めない」
「あ」
結局まだ駄目なようでした。
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