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山根君

(いきなりなんだこいつ? それに彼女とは一体……)

 彼のいきなりの発言に僕はたじろぐ。だが高圧的な年下男子に負けてはいけない。


「君は一体何者だ? 彼女とは一体誰のことだ? 全く身に覚えがない内容なら年下だろうが容赦しないぞ!」

「とぼけるな! よく菊地さんがお前の家に行くのを知ってるんだ!」

「何!?」

「それにお前は彼女と仲良いこともなっ!」

「……もしかして菊地って由美のことか?」

「! そうだ!」


 それはかなり身に覚えのある内容だった。


「由美だなんて……、菊地さんのこと馴れ馴れしく呼びやがって……」

「えっと山下君だっけ」

「山根だ!」

「ゴメンゴメン、君は由美とどういう関係なんだ?」

「しばらく前に告白して、俺は彼女にフラれたんだ」

「あぁ、そうなのか」

「彼女に理由を訊いたら好きな人がいるって」


(あぁ、それはまあ僕のことだろう)


「そして彼女が友達と話している内容を偶々聞いていたら彼女の口からちらほらと男の話が出て来る」

「……」

「気になって彼女を追っていたら、お前の家に行くじゃないか!」

「付いて行ったのか!?」

「あぁ!」


 彼は臆面もない顔で真っ直ぐ僕を見てくる。綺麗な瞳だ。真剣に目を向ける姿は由美のことをまだ好きなことが伝わって来る。


「そしてお前の家の前に着いたら彼女は軽く緊張しながらいつも家に入るんだ」

「そうなのか」

「そうだ!」


 悔しい顔を滲ませ歯を食いしばる。


「学校では一度もあんな感じの彼女を見たことないのに……羨ましい……」


 彼は少し俯き加減で言った。


「そして友達にも見せない顔を彼女はお前に見せる」

「え?」

「お前と会っている時の彼女の顔は友達といる時とはまた違った嬉しそうな顔をしているんだ!!」


 知らなかった。由美にもそんな面があるなんて。


「その顔を見るたびに胸が閉まる気持ちになる……」


 彼は辛そうな声に変わり、項垂れた。


「彼女はこいつのどこが良いんだ……。どうして、どうしてこんな奴のことを……」

「山本君……」

「山根だ!!」

「あ、ゴメンゴメン」

「……たく。間違えるなよ」

「君は未だに由美のことが好きなんだな」

「! ……あぁ」

「そうか……」


 僕はため息を吐きながら空を見上げる。そして真っ直ぐに彼を見直して、


「君のその行動力と気持ちはよく分かった……」

「岩田……」


しかし……と僕はひと呼吸置いて彼に思いの丈を告げた。


「けど君の行動はまるでストーカーみたいだな」

「え!?」

「というか由美のストーカーだ」

「!!」

「これは警察に通報するしかないか?」

「はぁ!? なんでそうなるんだ!?」

「だって由美をつきまとっているから」

「うっ!」

「由美からはそんな話は聞いていないが、迷惑しているかもしれないからな」

「そ、それは……」

「通報するか」

「ま、待ってくれ。そこまで悪いことはしてないぞ!」

「それを決めるのは警察だ」

「何でだよ! 俺の気持ちが分かったって言った癖に!」

「気持ちが分かるのと違法行為をするのは別だ」

「ひ、卑怯だ! 聞いておいてそのやり口は高校生の癖にズルイぞ!!」

「わはは。何とでも言え!」

「くっ、他にも俺みたいな奴は学校に沢山いる。そこでは彼女がアイドル的な人気があることを忘れるな!」


 彼は急いで来た方向に帰って行った。


「今回は大目に見てするのを止めてあげよう山神君!」

「だから山根だっ!!」


 そうして僕ははぁと軽い疲労を感じながら家に帰ると、由美が待ちくたびれた感じでリビングの椅子に座って待っていた。


「兄ちゃん。お・そ・いーっ」

「いや~、ゴメンゴメン。急にやぼ用が出来て」

「ふーん」

「どうした? なんで僕の部屋で待っていないんだ?」

「昨日、お姉ちゃん達に勝手にお兄ちゃんの部屋に入るの禁止令が出されて」

「へぇ、そうなのか」


 昨日連行された後、そんなこと言われたのか……。


「そんなの気にせず入りそうなものなのに」

「既にお姉ちゃん達がおば様に手を回していたみたいで」

「そ、そうか」

「さてもう帰ってきたことだし、問題ないから部屋に行こうお兄ちゃん♪」

「え? あ、うん」


「え? 登下校中に気になること?」

「あぁ」


 部屋に入ってくつろいだ時、僕は一応由美に訊く。

 今日、山坂君に聞いた内容は実際に由美が感じているか気になったからだ。


「どうして?」

「学校で由美はアイドル的存在と聞いたことがあるからなんか色々あるのかなと思って」

「あぁ。まぁ偶に目線を感じることがあるけどそれ以上のことはないから安心して。子供の頃から良くあることだからあまり気にしないかな」


 そうだったのか。子供の頃からそんな事があったなんて。別嬪は別嬪で苦労があるということか。僕はつい考えさせられた。そしてふと思った。

(待てよ。麻美姉や美海もそんなことあるのだろうか? 二人が来てから訊いてみよう)

そして空が暗くなると、学校帰りの二人が家に来た。


「え? 視線?」

「そう」


 二人は不思議そうな顔をしながら言った。


「そんなのあるのは当たり前じゃない?」

「そうなのか?」


 僕は驚いた顔でいると、麻美姉は微笑みながらこう言った。


「美女は見られてなんぼだからね」


 やかましいわ!

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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