睨み
久しぶりの更新です
そのまま由美は二人の姉達に連行されてこの部屋を出た。
三人がいなくなったので静かだ。
(明後日デートか……)
僕は布団に横たわりながら思った。
三人とは小さい時から遊んだりするが、いざ『デート』と明確に言われて1:1で遊ぶのは初めてかもしれない。
なんか意識するとドキドキする。
僕は布団に潜り込んで少し唸った。
翌日、久しぶり(?)の一人の静かな朝を迎えた。
陽射しが部屋を明るくし、心地よい室温になり、僕はついうーんと伸びをする。
下のダイニングに行き、家族と賑やかにご飯を食べる。
「今日も美味しいね母さん」
「そう? ありがとう要!」
さて学校へ行こうかと家のドアを開けると、爽やかな天気……をよそに麻美姉と美海がいがみ合っていた。
「どうしたんだ二人とも!? 朝から近所迷惑だぞ!」
「だって姉さんが『今日は要ちゃんと恋人つなぎで行くの♪』っていうから!」
「へ!?」
「良いじゃない別に。減るもんじゃなし」
「!」
「駄目なものは駄目って言っているのよ!」
「美海にそんなこと決める権限なんてないでしょうよ」
「無くても駄目なの!」
困ったなぁ。一体どうすれば良いんだ?
この空気を止めれるはずもないし……。
「美海ったら。要ちゃんに対して何か吹っ切れたようね」
「! ……まあね」
美海は少し頬を赤らめながら言ってる。
なんかこっちも恥ずかしいな。しかし……、
「早く登校しないと遅刻するぞ」
二人は睨み合いながら僕とくっ付いて登校する。
「いい姉さん、要はねクラスでは結構静かなのよ?」
「そ、それくらい想像出来るわよ」
「この前だってクラスの友達がいなかった時、寂しそうな顔でチラチラと周りを観ていたわ」
(こら~、美海の奴はなに小っ恥ずかしいことを言っとるんだーっ!?)
ちらっと麻美姉の顔を見ると小馬鹿にしたではなく、悔しそうな顔だった。
そして彼女はなぜか少し俯いて、絡めている腕の力が弱くなり沈黙になった。
しかし直ぐにギュッと僕の腕を絡め、彼女はぐいっと寄って来た。
(近い、近いってっ)
「美海は覚えてないだろうけど、子供の頃公園で要ちゃんったらお漏らししたことあるのよ」
「!?」
「!」
「あの時は大変だったわ~っ、バレたらお母様に怒られるって言って、私ん家のお風呂に連れて行ったんだから」
「そ、そうなの要!?」
「お、覚えてない……」
「ひど~い、一緒にお風呂に入ったじゃな~い?」
「え!!?」
「!??」
「可愛くて小さかったわ♪」
「な、なんですって!??」
思い出した……。確かに麻美姉と風呂に入った気がする。
しかしそんな原因だっけ? それに関してはあまり覚えていない……。
それよりも……、
「ちょっと要! 今の話本当なの!?」
美海は強引に僕を揺さぶる。僕は彼女に揺らされて気持ち悪くなった。
「く、苦しい……」
「ちょっと美海、要ちゃんが苦しそうじゃない!」
「だって姉さんは要のち……。と、とにかく見たのね!?」
「とにかく離しなさいよ。話はそれから!」
「くっ……」
美海はようやく服から手を離した。
(く、苦しかった……)
「まぁ、そうね見たわ。小さくてまだ可愛らしい感じのブツを♪」
「く、羨ま……い、いいえ、別に微塵も興味ないけど!」
「妬かないの♪」
「くっ……」
二人の睨み合いは学校に着くまで続いた。
(というかこいつら僕の小っ恥ずかしい話ばかりしてないか!?)
そして校内に入り靴箱を出て廊下に差し掛かると美海は、
「じゃあね姉さん。ここからは私達とは別々の方向よ」
美海は楽しそうに笑い、麻美姉はやはり悔しそうだった。
「く、仕方ないわ。今は要ちゃんを美海に預けるけど、油断しないことね。あまりに余裕こいていると、足元すくわれるわよ」
「ご心配なく。私はそこまで柔な脚じゃないから」
「~~~」
「~~~」
二人が学校でもバチバチしているものだから、はぁと僕はついため息をつく。
「行こう美海」
「そうね要♪」
僕は二人を引き離さないときりがないと思い、とりあえず美海を教室に連れて行った。
そしてクラスに着くと彼女と分かれ、お互いの友達の所に行った。
さて放課後僕は部活もないので自宅に帰る。
空が紅く夕日に染め上げられ日が少しずつ長くなり、この時間でも暖かい気温を感じる。
(うーん、もう暑い夏か?)
そう感じている時、前からチリリリリンと音が聞こえてくる。
見ると、一人の男子が自転車で僕に急いで近づいてくる。
(な、なんだ??)
そして僕の前に着いたと思えば、急に自転車を止めた。
誰かと思い顔を見ると明らかに知らない子だった。そして服から察するに北中の制服だ。だから彼を分からない訳だ。しかし彼は僕に睨みをきかせる。
(今日はどうも眉間に皺を寄せる人間が多いな。それに彼は何者だ?)
「お前が岩田か?」
「あ、あぁ」
「俺は中3の山根だ」
「はぁ……」
で、この年上に対して無礼者が僕に一体何の用だ?
「俺はお前に彼女を渡さない!!」
「はい?」
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