いきなり許嫁!?
桜の並木道に春を感じながら、僕は気持ちよく歩く。
今日は待ちに待った入学式だ。
「よーし、今日から楽しみの高校生活だ!!」
僕は岩田要。この春、高校一年生になった。
大変だった高校受験を終え、次に待っているのは待望の青春だ。
「要~」
後ろから僕の名前を呼ぶのは菊地美海。子供の頃からの幼馴染みだ。
髪は肩まで伸ばしており、目はぱっちりとしている。僕が言うのも何だが彼女は小学校から美人で評判だった。
「美海」
「なにいっちょ前に気合入れてんのよ」
「そりゃあだって苦労した受験を終えて、青春の高校生活を手に入れたんだ。愉しまないと損だぞ!」
「ふふ。本当馬鹿なんだから」
「馬鹿とは何だ。馬鹿とは」
「早く行こ。チャイムが鳴る10分前には学校へ行かないと」
「そんなに急がなくてもいいじゃないか」
「何言っているの。10分前行動は一応社会の基本よ」
「ったく。相変わらずだな」
(散る桜を見ながら歩きたかったのに)
僕は美海を少し恨めしく思いながら一緒に学校へと走った。
クラス分けを見ると、美海と同じ4組だった。
「要とまた同じか~。やだなー」
嫌には聞こえないトーンで美海はこっちを見てにやにやしながら言う。
(こっちだって、美海と何回同じクラスが続いていると思ってんだ。全く辟易するぜ)
僕はため息をはく。
彼女とは小5の時からずっと同じクラスが続く。これで6連続だ。何かを感じずにはいられない。
入学式を終え、クラスへと向かうと知らない同級生が沢山いる。
これは印象良く行動せねば、と思いながら右の前の方にある自分の席に静かに座る。
(ま、普通はこうなるわな)
僕はとほほと思って静かにいると、美海が壁にもたれながら、いつものように話しかけてくる。
「同中あまり居ないね」
「まぁ、そうだな」
「北中はこの高校にそこそこ入学していると思うんだけど」
「まぁ、他のクラスに多いんじゃね?」
「そうなのかしら」
彼女とたわいもない話をする。
そして美海は自分の席に行くと、背中にちょんちょんと叩かれた。振り返ると知らない男子だった。
「えーとこんにちは」
「あ、どもっ」
「俺、上田って言うんだ。宜しくな」
(おお、遂に高校の友達が出来るか?)
「僕は岩田って言うんだ。宜しく」
「ところでさっき話してた女子は誰?」
「美海のことか?」
「か、彼女さん!?」
「まさか。ただの幼馴染みだよ」
「なんだ~、そうなのかぁ。それにしても彼女かなり可愛いな」
「ま、まぁそうだな」
(まぁ、知らないだろうな。あいつに負けず劣らず美人な女子がこの世にいることを)
僕はふふふと思うと、上田が続ける。
「これは噂の話なんだがな」
(早いな。もう噂が流れているのか)
「この学校の副会長はかなりの美人さんらしいぞ」
(えっ。それってもしかして……)
軽く担任から説明を終えた空き時間に廊下から歓声が聞こえる。どうやら生徒会が闊歩しているらしい。
見るとイケメンでいかにも出来そうな男が一番前を歩いており、後ろには複数の生徒を連ねている。
そしてその中に見覚えのある女子が一人いた。
「会長。失礼します」
「あぁ」
と言った否や彼女は僕のクラスに入りいきなり美海に抱きつく。
「美海~。入学おめでと~」
「わ、姉ちゃん何??」
「お姉ちゃんからのお祝いのハグよーっ」
(やれやれ。やっぱり麻美姉か)
彼女は菊地麻美。僕の一つ上で髪の長さは胸まであるロングヘアーだ。睫毛が長くどこか大人の色気がある。
「あっ、要ちゃんもこのクラスなんだ」
「おう」
「ふーん。また美海と同じクラスなんだ」
麻美姉は僕と美海を交互にじっと見る。
「なんだよ?」
「別にっ」
ツンとしながら、彼女は生徒会の集まりに戻っていった。そして一番前にいる生徒会長と思われるイケメン男子と目があった。
(なんだ?)
生徒会が去った後、僕は男子達から詰問を受けた。
麻美姉とはどんな関係なのか、恋人なのか、彼氏はいるのかと色々訊かれた。
学校の初日が終わると、もう僕はほとほとに疲れた。
(美海との関係も男子達に散々訊かれたし。少しだけ中学時代の悪夢を思い出す)
いつものように美海と帰ると、彼女は同情するように言う。
「大変だったわね。要」
「あぁ、全くだよ」
「男子って本当に女を外見で判断するわね」
「まぁな……」
「本当男って馬鹿ばっかり」
そこは僕も反論出来なかった。
(まぁけど、美海ももう少し穏やかな口調になって欲しいものだな)
「ん? 今何か良からぬことを思ったでしょ」
「いや、別に」
「嘘。顔見れば分かるんだから」
「何も思ってないよーっ」
「あっ、こら待ちなさーい!」
僕は走って家に帰った。
そうしてご飯を食べ一人でのんびりしていると、外から笑い声が聞こえてきた。
(またいつもの感じか。菊地のお父さんとこから帰って来たんだろう)
実は僕の父と菊地の父は中学からの同級生で非常に仲が良く、子供の時から家族同士でよく遊んだものだ。
「要ー。ちょっと降りて来ーい」
家に入った親父が下から僕を呼ぶ。
なんだ? と思い降りてみると、下に菊地三姉妹がいた。
「お兄ちゃーん」
一番下の由美が僕に抱きついて来た。顎までの高さのショートヘアーで性格は甘えん坊だ。人懐っこく、年の近い兄弟がいないので妹みたいな存在だ。
ここまで言えば分かると思うが由美も容姿端麗で、菊地三姉妹は美人で有名なのだ。
よしよしと撫でていると、残りの姉妹の方から舌打ちが聞こえてきたので、さっさと由美を姉妹の方に返した。
「えー、皆に集まったのは他でもない」
菊地父が開口一番に言う。
「実は昔から馨とで叶えたかったことがあったのだ」
馨とは僕の父の名だ。
「何よ?」
「ふむ。ずっと酒の肴程度の話と思っていたが、遂に叶えようと思う」
「だから何をよ?」
「そう慌てるな美海よ」
「……」
「実は我々に息子と娘が出来たら、親戚になろうと思っていたんだ」
「え?」
「それってつまり……」
「ん?」
「つまり要君が儂の娘達の許嫁になって、一人を選んで欲しいのだ」
「ええ!?!?」
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