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ヒトノモノ  作者: Kusakari
藤原 パート1
53/120

ヒトノモノ その53 脳内

五十三

 学校にいると、いつも何かに見られているという恐怖が僕の中にありました。思春期に特有な自意識過剰というものかもしれません。誰かが僕をバカにするために、邪な視線を自分に送っているような気がしてならないのです。この視線を感じると、僕は何もできなくなりました。その目は僕の欠点を探しているのです。そして、その視線は欠点を見つけた瞬間、侮蔑の色を向けるのです。


 そのうち、視線だけではなく、声が聞こえるような気がしました。笑い声は自分に向けられた冷笑のように聞こえ、もごもごした話し声は悪口に聞こえました。「気持ち悪い」。「臭い」。「どっかいけ」。そういう声がするのです。


 耳を塞ぎたい。しかし、耳を塞いだところで、その声は止むことがないように思われるのです。空気の振動が耳に伝わるというよりは、脳に直接声が送られてくるのです。脳の中で響くのです。


 脳の中の声は一つだけではありません。男の子の声、女の子の声。両方が混ざって、辛辣な言葉を投げかけてくるのです。「やめてほしい」と頭の中で念じたところで、何の効果もありません。声がぐるぐると回るのです。


 それに合わせて、脳の中の血も同じようにぐるぐると回るのです。そして、回る血液が血管を突き破ろうとします。そのせいで、脳がズキズキと痛むのです。血液の激しい流れも声もともにぐるぐると回るのです。


 一度、僕はこういった負のループにはまると、なかなか脱出できなくなりました。何一つ、自分には良いところもなく、ただ叱責を受けるために生きているかのような印象を自分の人生に対して抱くのです。睡眠薬でも飲んで、自分の意識の流れを中断したいと思ったこともあります。いっそのこと、自分の脳みそを取り出してもらいたいくらいです。


 おそらく、君にこんな話をしても、全く分かってもらえないでしょう。しかし、どうしても、これを書かずにはいられないのです。いつも僕はこういった脳の中の不思議な出来事に怯えていました。


 おそらく、何らかの病なのだと思います。しかし、そのときの僕は自分の脳の中で起こっている現象を客観的に言葉にする能力を持ち合わせていませんでした。今だからこそ、こうして、記すことができるのです。


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