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序章 3話

魔王城〜氷の魔王の間〜


 「よく来たな!人間よ!」


 「たった一人で此処まで来たことには褒めてやろう。しかし!独りよがりのお前

  に倒される程、妾は柔ではない!」


 「お前を倒すのに、仲間なんて必要ねぇ。」



 魔王フェンリルは呼吸を整え、言い放つ。


 「妾の名はフェンリル、氷を司りし、魔王。妾と貴様では天淵氷炭(てんえんひょうたん)の差。

  自らの力を過信し、ましてや我を倒すなど、言葉にすることさえおこがまし

  い。孤独であることを悔やみ死にゆくがいい。」


 魔王の間の大気がピリピリと震える。



 その頃、この部屋の奥に身を潜めている側近ニールはフェンリルの言葉に聞き

 惚れていた。


 「ああ~魔王様~、普段の魔王様も美人で、優しくて、スマートだけど、人間が

  来た時は俄然それが増すんだよな~」


 ニールは自分の主人が勇者と戦うというのに、呑気なこと言っていた。

 しかし、ニールがそう思うのは、もはや、必然的なことだった。

 これまで、この氷の魔王城に訪れて、帰ることのできた人間はいない。

 大半が城内の大量のモンスターによって殺され、命からがらに魔王の間にたどり

 着いたとしてもフェンリルの手によって一瞬で亡き者にされてしまったからだ。

 かくいう訳でニールは呑気だった。


 場面は戻り、レオンハートはフェンリルの声を聴き、驚愕する。


 「魔王って女だったのか…」


 レオンハートの場違いな呟きに、フェンリルはイラついた様子で言い返す。


 「ここまで来た者は、いつもそれを言う。魔族の強さに性別など関係のないこと

  も知らずにな!貴様も所詮その程度の人間だったようだな!」


 フェンリルは言い終えると魔力を溜めはじめた。

 それを見たレオンハートも勝負しようと構える――しかし、

 



 フェンリルの首が装備している藍緑色のヘルムと共に落ちていった。床に到達

 すると、鈍い音が閑寂な部屋いっぱいに響きわたり、ヘルムの中から放り出され

 たフェンリルの頭はレオンハートの方を見ていた。フェンリルの首の切断面から

 はどす黒い血がダラダラと流れている。フェンリルの長く手入れの行き届いた

 赤い髪は血の色と、もはや判別できなかった。


 一方、レオンハートは眼前で起きた光景をまだ理解できていなかった。

 倒そうとしていた相手が死んでいるというのに、レオンハートが喜べていない

 のは、彼が思っていた程フェンリルの顔が人間となんら遜色ない、美しい顔で

 あるせいではなく、彼がフェンリルに一切干渉していないのにも関わらず目

 の前の相手が突如死体となり、転がっているせいだったからだ。


 「は?一体なに……が」

 

 ようやく、眼前の光景を理解し始めたレオンハートは唐突な横腹の尋常ではない痛みに襲われる。

 彼は自分の横腹に手を当て、絶句する。


 「血?誰が……」


 全身が麻痺し始めた彼は、僅かな力を使って振り返るも、そこに人影はなく、

 規格外に大きなドアだけがそこにあった。


 「ここで……死んでたま……る……かあああぁぁあ!!!!」


 空しく部屋に響きわたる彼の叫びは誰の耳に届くことなく、彼の命はそこで

 絶え果てる。

 


 

  

  

 

少し投稿に時間が空いてしまいましたが、これから話を加速させていく

予定です。

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