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零の魔法講義~入門編~

「と、言うわけで薫に魔法を教えてやってくれ」


「いや、どういう訳なのさ」


「あはは……」


ーーーー


昨日、あれから咲さんが零さんに僕の境遇を説明してくれたらしいけど……凄い泣きながら『僕達に出来ることがあれば何でも言ってね。僕達は薫くんの味方だからね。』って言われた。咲さんは何をどう説明したんだろうか……助かるけども。


とりあえず、今わかった重要そうな事は


『この世界は3つの大陸があって、今僕が居る大陸は【オネ】ということ』


『元の世界に戻るのは【不可能】だとほぼ確定してしまったこと』


『魔物と人間はある程度共存しているが、最近は魔物が【凶暴化】しつつあること』


の3つかな。


戻れないって言うのは薄々思ってたからまだ諦めがついた。


他の大陸の名前は『もし行くような機会があれば教える』って言ってたけど、しばらくは関係ないかな。


魔物に関しても、今の僕は戦闘能力が無いからどうしようもないと。


そして、他の細かい知識も教えて貰い、夕ご飯まで作って貰って(食事はあまり元の世界と変わらない物だった)咲さんの家に泊めて貰った。


で、僕が『魔法について知りたい』というお願いをした結果が冒頭の会話という訳だ。


ーーーー


「まあ、別に断る理由も無いしね。今日は暇だし、大丈夫だよ。」


「うむ、話が早くて助かる」


「ありがとうございます。」


魔法かぁ。元の世界でも使えたら良いなーとか妄想してたから凄いワクワクするなぁ。何かこう、ドカーンとなる様なのが使えれば良いなぁ。……そもそもこの世界の住人で無い僕に魔法が使えるのか、って言うのは有るけど……


「じゃあ後はよろしく」


「あれ、咲も手伝ってくれるんじゃ無いの?」


「悪いがしばらく用事でな。少しの間離れなきゃならん。」


「……そっか」


「それじゃ頑張ってな、薫」


「あ、はい。」


よーし、頑張って覚えるぞぅ。


ーーーーー


~1日目~


「まずは魔法についてだね。魔法って言うのは簡単に言えば精神力を色々な形に組み上げて様々な効果をもたらす物を言うんだ」


「ふむふむ」


なるほど、大体元の世界で見た色々な小説とかの設定と変わらない感じなのか。


「とりあえず薫くんは初心者だから簡単な魔法、【発現】をやってみようね」


「【発現】ですか?」


「そう、火を起こしたり水を出したり、基本中の基本の魔法。発展すれば攻撃にも応用が効くけど、まずは生活レベルので行こう」


「はい、お願いします!」


「まずは手を開いて」


「はい」


「手のひらにちっちゃな火をイメージして…」


「むむむ……」


火のイメージ……火のイメージ……


「それをそのまま大きくするように力を注げば……!」ボッ


「むむむむむむ……!!」


火……火……!!


「……と、こんな感じなんだけども……」


「ぐうぅぅぅ!!」


火ぃぃぃぃ……!!


「ぷはぁ!!」


ぜ、全然ダメだ……火どころか火花すら出ない……


「まあ、まだ1日目だしね。ゆっくりやっていこう。」


「ううう……」


なんてこった、まさか本当に使えないのか……?




~2日目~


「うおぉぉぉ!!」


「もっともっと!強いイメージを持つんだ!!」



~3日目~


「はあぁぁぁぁぁ!!」


「よーし、良い感じだよ薫くん!」



~4日目~


「………………」


「が、頑張って薫くん!!」



~5日目~

「ぐおぉぉぉ……」


「……うーん」


「はぁ……はぁ……」


「……気分転換に違う魔法もやってみようか。」


「は、はい……」


全然ダメだ……零さんが言うには一般人でも最低3日あれば魔法が使えるって言うのに……一体どうなってるのか……


「今度は【召喚】だね。」


「【召喚】……」


難易度が高そうな響きだな……


「初級の召喚なら結構簡単だから頑張ろうね!」


「は、はい!」


「まずは紙にこんなふうに丸を書いてその中に五芒星を書く。多少歪んだりしても問題は無いからね」


「ふむふむふむ」


「そして力を込めつつ、召喚したい使い魔の名前を呼ぶ!」


「いでよ、毛獣【モコ】!!」ボンッ


「キュー!」


「うわぁ、可愛いのが出てきた!」


何だろう、羊なのかな?もっこもこだ。


「使い魔のご飯は魔力なんだ。ご飯をあげる代わりにちょっと力を貸してもらう。それが【召喚】。この子は初級使い魔、モコだよ。この子の毛は服とかに加工されるんだ。戦闘能力も悪くないとってもいい子だからね。」


「おおー……」


なるほど、そういうシステムなのか。


「じゃあやってみよう!」


「はい!」


えーと、丸書いて、五芒星書いて、後は力を込めつつ名前を……


「いでよ、毛獣【モコ】!!」


……………………


………………あれぇ?


「……出てこないね。」


「……出てきませんね。」


「ま、まあ、まだ召喚は1日目だから!まだまだこれからだから!!」


「ははは……ありがとうございます……」


零さん……そのフォロー、ちょっと傷つきます……



~召喚2日目~


「いでよ、毛獣【モコ】!!」


………………



~召喚3日目~


「い、いでよ毛獣【モコ】!!」


……………



~召喚4日目~


「いでよもうじゅうもこー」


…………


「な、投げやりな感じになってる……」



~召喚5日目~


「すみません、お願いします、出てきて下さい、お願いします。毛獣【モコ】様…」


………


「ついに下手に出ちゃったよ……」


………………



…………



……



「うわぁぁぁぁ!!」


「お、落ち着いて、薫くん!!」


何でだ!!召喚も最低3日って言われたのに!!才能か!!才能が無いのか!こんちくしょう!!


「いや、でもここまで魔法を『使おうとしてるのに使えない』人は初めて見たよ……」


「ぐふっ……」


僕の精神に9999のダメージが……


「よー、調子はどうだい?」


「あ、咲……帰ってきたんだ……いやね、それが……」


かくかくしかじか……


ーーーーー


「ふーん。薫は魔法がぜんっぜん使えないと」


「そうなんだよねぇ……」


「………………」


もうやめて……僕の精神のライフポイントはゼロよ……


「ここまで使えないとなると才能が全く無いか、あるいは……」


「……いや、そんなまさか……」


「……?」


あるいは何なんだ?


「……薫くん試しにこの松明持って力込めてみてくれないか?」


「え、あ、はい……いいですけど……」


松明を持って


力を


込め


ゴウッ


「「「!?」」」


き、急に火が強くなった!?って言うか……


「あっつ、あっつい!!」カラン


「…………信じられない」


「……マジかよ…」


?なんで2人ともポカンとしてるんだ?


「…【発現】も【召喚】もできない奴の理由は2つある。」


「咲さん。」


何か知っているのかな?


「ひとつはさっきも言ってたが才能がまったく無い場合。もうひとつは……」


「もうひとつは……?」


「【発現】とか【召喚】の比じゃない超激レア魔法【接触】が使える場合だ。」


「ふむ……?」


「【発現】やら【召喚】やらの低級魔法なんか使ってられるか。と体が勝手に制限を掛けるから超激レア魔法の持ち主はそのへんの簡単な魔法は使えない……らしい」


「な、なるほど……」


その説明ならわかりやすいね。つまり…………?


僕はその超激レアの魔法が使える……?


「……え?」


「……凄いねぇ薫くん。まさか【接触】の魔法が使えるなんて……僕も初めて見たよ……」


「零さん。」


「【接触】って言うのは、触れた物に色々な性質を足したり引いたり出来る魔法……らしいよ。」


「へぇ……」


うーん、ちょっと使い方がわかりにくい魔法だなぁ。派手さもあんまりないし……


「ところで、何でさっきから『らしい』ばっかり何ですか?」


「え、それは……」


「そりゃあ……」


「「……伝説として伝わってるだけだから本当に有るとは思ってなかったんだ(のさ)」」


「……なるほど」


そ、そんな凄い魔法なのか……何だかドキドキしてきたぞ……


「……とにかく、講義は今日でおしまいだ。」


「え?」


何で?まだ詳しい事がわからないんだけど……


「ごめんね、でも自分の魔法は自分で色々試していくのが一番わかりやすいんだ。だから、頑張ってね。」


「……はい」


そういうことなら仕方ないか。まあそうだよね。自分の事は自分がよく分かるって誰かが言ってたし。


「時間も遅くなって来たし、ゆっくり休むといいさ。俺の家貸してやるし。」


「……ありがとう、ございます。」


……でも、いつまでもこんな調子じゃあダメだよね。


人の好意に甘えるのにも限度が有るだろう。


魔法も覚えた事だし、明日辺り零さん、咲さんと話し合おう。


これからどうして行くのか。


ーー自分は何が出来るのかをーー

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