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Side-B 4

犯行声明が出されたのは数日前のことだった。

一億総中流と揶揄された時代が過去となって久しい現在、テロリズムの温床が日本国内に創出されてしまったのだという事実を知る者は少ない。その構図はカウンターテロを目的にした組織にしても例外ではなく、多くの国民にとって、テロは外国の問題なのである。

いったい日本という国において、正義とは如何にして主張されて来たのだろうか。前世紀が欧米化とその進化の時代だとすると、誰もが進歩し繁栄することを正義と見なし、漠然とした目的と考えていた。故に国民の意識は統一され、そこから導き出される恐るべき生産性が、戦後日本の奇跡と呼ばれる繁栄をもたらしたのだ。


そんな時代は終わった。


気付いている人の多少に関わらず、社会は階層化されていく。個人主義という美辞麗句の下、責任の所在だけを社会に帰結させ、行動の自由はなりふり構わず主張する。そのことにジレンマを感じることさえなく、個人の属性たる社会がカテゴライズされていったのだ。


既に模倣する相手はいない。


少なくとも経済面において、世界の先頭集団の一員になったのだから、前を行く者はいないのだ。自ら工夫し創出する苦悩、そしてその克服。これが現代日本の本質的命題であって、成し遂げねばこの国に未来は無い。

だが、この問題の根は深い。日常に汲々とする事態に陥った人々が求めるのは、今日の糧であってその後にある明日の改善なのである。ところが対処療法の効果は少なく、即効性が期待できるはずもない。


膿がたまっていた。


そして、膿の浄化が多様性を帯びる。それぞれの信念に基づいて、あるいはそれぞれが考える責任の所在、根本原因の解消を求めて。


「万人から搾取することで成り立つ一極集中、我々は一部の者だけが繁栄する社会を許さない。その者どもは、人のありようを思い知ることになるだろう。恐怖を通じて。」


哲学的でも文学的でもない脅迫文が、声明として流布してから数日後、クリスマス・イブの夜のことである。


<続く>

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