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Side-A 3

二人で過ごした初めてのクリスマスから1年が経った頃、再び恋人色に染まった街並みの中で、彼はプロポーズすることに決めた。


未だ早いか。

延ばす理由もない。


断られることを彼は想像すらしなかった。二人で寝食をともにして約1年。

冬には、スキー場ではしゃいだ。ともに上手くはなかったし寒さは苦手な方だったが、二人で滑っている時間が輝いて見えた。宿で見た湯上りの彼女の美しさは、魅惑という言葉すら陳腐に思えた。

春に仲間と出かけたキャンプで、皆にカノジョとして紹介した。たったそれだけでご満悦な自分に酔った。

夏の海辺では、ちょっと大胆なビキニの水着にドギマキした。二人で買いに行ったのだから、予め知っていたのに。

お盆には休みをとって、両親に彼女を紹介した。そのとても素敵な容姿と立ち居振る舞いが、言いようも無く誇らしく感じたものだ。

そして秋、夕日に染まったハワイの海辺でのキスは、人生で最良の思い出となった。

彼は、普段の日々の営みに彼女を求めていた。それだけでは飽き足らぬ思いが、四季を通した大袈裟なイベントを彼に催させたのである。

そして今、2年目のクリスマスには、プロポーズという花が添えられようとしていた。


彼にとって、結婚ということがそんなに大事な訳ではない。世間体や経済面、あるいは自分の立ち位置、そんなものが有利になることは理解している。だが、彼の結婚への動機はそんなところにはない。

自分と彼女を結びつけるもの、それがどんな種類の証であれ、全てを実践しておきたいのだ。結婚という行為からは、戸籍上の証、血縁からの承諾、知人友人への周知、その他多くの要素が、二人の結び付きを強めてくれる気がする。そして、そういった効果に見合うだけの演出をしたいとも思った。


彼が彼女に贈れる指輪は知れたものかもしれないが、それでも彼はとても真剣に、そして時間をかけて選んだ。多くの男性と同様、ダイヤモンドの品質を量る基準は、この時に知った。知ってしまえば、なるべくいい物が欲しくなるのも、人並みと云えよう。結局、一面に突出するよりも、まずはデザイン

を優先し、あとはクラスとクラリティとカラットとカラーのバランスを重視した。

手にとった指輪の美しさは、彼の一途な思いを伴って、彼女の可憐な指を、そして全体の艶やかさを見事に飾ることだろう。


いよいよその日は明日。言いようのない緊張感と高揚が、彼を包んでいた。


そんな彼のオーラに彼女の第6感も反応したのだろうか。ある種の予感が彼女にもあった。


<続く>

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