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Side-A 2

都心から25分の駅。そこから徒歩で5分。利便性に富んだワンルームと云えよう。

彼女の住む僅か20平米程度の空間が、恋人達の寝城になるまでに、クリスマスの朝から長い期間は必要なかった。シングルのベッドが部屋の大部分を占めていたが、肩を寄せ合う二人が

狭さに不満を持つことは無い。また、電気コンロが一つだけ設置されたキッチンでは、大したご馳走を期待すべくもないが、それは二人にとって最上のメニューであり続けた。


腕枕をしていると腕がすぐに痺れてしまうこと、その事実を彼が知ったのはいつのことだったか。前の彼女か、それとも他の誰かか。

なのに彼は、腕枕をせずにはいられない。彼女の最も魅力的な側面の一つがそこに現れるからだ。

疲れればいびきもかく。朝方には言いようもない口臭が襲っても不思議ではない。人とはそういう生き物であることを彼女は知っていた。そんな部分までを愛していると言えば、それは嘘になる。しかし、一つの望まざる側面だけで全てを形容してしまう程、彼女とて乙女ではなかった。


彼らの関係を恋人ならしめているのは、彼らを結びつけている因子が恋心だからで、恋心は幸せをエネルギーにして存続し得るものである。

どうやら彼らは、年齢相応の人並みな常識と感性は持ち合わせているようで、それらは、然るべき経験と考察の積み重ねから得られたものだろう。

しかしながら、恋心に絶えず幸せを供給し続けるということは、変化が求められ続けるという事実、既に幸福感に満ちた二人がそれに気付かないのは、止むを得ないと云うにも口惜しい。同等の恋心を存続させるには、同じ大きさの幸せを感じておく必要があり、それには継続的に変化すること、つまりは異なったアプローチでなければならないのだ。

とは云え、変化し続けることなど、不可能事である。よって、多くの人間関係が結末を迎える。二人の将来も同様なのだろうか。

変化を求める姿勢、結果ではなく姿勢を共有すること、あるいは敬意を持ってその姿勢に接すること。それが継続の要素であり、結局何らかの形や要素で尊敬できる相手とのみ継続できるということなのだが、概念的にしろ理解していたとして、なかなか上手くいかないのが世の常。これから二人に押しては寄せる現実が、恋色とは違った盲目に彼ら導こうとてぐすねを引いていた。


<続く>

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