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Side-A 1

二人で過ごす初めてのクリスマスは、彼らにはやや分不相応な高級ホテルからのチェックアウトを迎え、終わろうとしていた。

互いのプレゼントや着替えを仕舞い込んだ洒落た紙袋、そして幸せと未来への希望といった大荷物を纏って、家路につくのだ。


二人はいつから恋人だったのだろう?

互いの時の流れが接したのは、この年の春のことだった。出会った時点で既に恋人だったのだろうか。

確かに彼は、一目惚れした。社交辞令的な挨拶までが、彼を虜にしてしまった。

彼女はと云うと、一目惚れではなかったが、いつか彼が自分を口説きに来ることを直感したという。

そんな彼らにとって、恋人の定義を云々することは無駄に思えた。

二人の出会いは運命付けられたものに違いなく、少なくとも彼らはそう確信していた。それ以上に何が必要だろうか。


最初に二人で出かけたのは、出会ってから2ヵ月後のこと。

何気ない週末だった。彼は日用品の買物にいくつもりで、彼女は美容院に行く予定だった。彼からの電話で落ち合った二人は、各々の予定を変更することもなく、表面上は淡々としていた。その時の心の昂ぶりを彼は忘れない。決定的だったのは、彼女が髪を切り終わった時に、「美容師さんに、外で待っているのはカレ氏? って言われちゃった」 と告げられたこと。

舞い上がった自分を可笑しくも思ったが、忘れられない思い出になった。

そしてその夜、彼は決心した。


この時点では、彼にはカノジョがいた。

その女性が嫌いになった訳ではない。

もっと好きな女性が現れてしまったのだから、しょうがないとも思う。しかし、それを認めてしまえば、キリがないのではないか。

また別の女性に恋してしまう未来の自分を想像し、それがとてもおぞましく感じた。

ところが、そんな女性はもう現れないと思えた。もし現れたとしても、一時の心の迷いとして片付けられるはず。それは打算ということではなく、残りの人生を賭ける価値があると信じる自分を見出していたのだ。

意を決して付き合っていた女性の肩書きと元カノに変えた彼は、彼女のもとに走った。


彼女とて迷いが無かった訳ではない。

カレシはいなかったが別れて間もない頃で、節操が無い女になり下がる気がした。なのに気付いた時には、彼の胸に抱かれている自分がいた。


二人の時間軸は、この時から重なり交わり、あるいは絡み合って流れ始めた。


この世に確固たるものは無いと云うが、彼らにとってそんな常識は何の意味も持たない。そんな幸福による盲目に陥った彼らの眼が、改めて現実を見据えた時、いったい何が起こるのだろう?


<続く>

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