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街道山賊討伐戦 その四

「準備は?」

「問題なし。ご主人」

「こちらも大丈夫です」


 俺たちはゴブリン殲滅後に、ゴブリンの巣穴入り口にやってきていた。

 山賊たちの姿が見えなかったので、それを叩くのが目的である。


「入り口には見張りが二人。

 松明をつけている」 


 偵察から戻ったベルが小声で報告する。

 朝方、ゴブリンが見張っていた穴には山賊の二人が見張りに立っている。

 朝の襲撃でゴブリンの巣穴の入り口は三つと分かっている。

 それで、一つをリールが塞ぎ、もう一つを海軍陸戦隊の戦車が塞ぎ、俺たちは突入班となる。


「こちらでの戦闘はそちらの方が経験者です。

 指示に従うのでよろしくお願いします」


という訳で、突入班に海軍陸戦隊の小隊から一班が回されている。

 人数は十人。

 これに、俺とベルとボルマナが加わるから総勢十三人となる。


「始めるぞ」


 俺が三八式歩兵銃を取り出して狙いをつけようとしたらベルの手がそれを制す。


「ご主人のそれ、音が出るでしょ。

 私が二人とも殺してくる」


 たしかに音を立てずに殺せるなら楽だなと思った所に、ボルマナからも声がかかる。


「私もその手の技術は習得しています。

 ベルには及びませんが、ベルの足手まといにはなりません」


 ためらう事無く、俺は二人に許可をだす。


「わかった。

 とにかく失敗してもいいから生きて戻って来い」


「まかせて」

「わかりました」


 その声と共に二人の気配が消える。

 さすが盗賊とベルの事を評価すると同時に、ボルマナにもこんな能力があるのかと関心する。

 俺は状況を見る為に、草むらから入り口を見続ける。

 もちろん、手をあげていて振り下ろしたら、海軍陸戦隊の歩兵たちが銃で山賊たちを射殺する予定になっている。


「!」

「っ?!」


 山賊二人から漏れた最後の言葉はこっちにまで届かなかった。

 音も無く二人の首から血が吹き出て、それをベルとボルマナが音を立てないように地面に伏せる。

 入り口からしばらくして、気づかれていない事を確認して、ボルマナからテレパスが飛ぶ。


(大丈夫です。

 敵はまだ気づいていません)


 テレパスの魔法というのは便利である。

 こうやってしゃべらずに意思を伝える事ができるからだ。

 とはいえ、弊害も無い訳ではない。

 隠しておきたい心の声まで漏らしてしまうのが一つ。

 魔法技能者がいないと使えないというのが二つ。

 最後に、テレパス使用者の行動が派手に阻害されるのだ。

 そりゃ、耳もとでひたすら会話が聞こえて作業に集中できる人間は少ない訳で。

 俺がハンドサインで陸戦隊を引き連れて入り口に近づく。


「二人残れ。

 銃の使用は許可する」


「はっ」


 海軍陸戦隊班長が兵士二人を指名して見張りを置く。

 こういう出口確保ができるのは本当にありがたい。


「ベル。

 先行して偵察と罠解除を」

「まかせて。

 ご主人」


 ベルが先に巣穴に入ると俺は火炎放射器を背負う。

 地下水道用にもらったのだが、洞窟でも問題はない。


「洞窟内で銃は使うな。

 同士討ちになる。

 着剣を確認しろ」


 海軍陸戦隊の準備が整ったのを確認して、俺たちは洞窟の中に潜る。

 入り口は狭かったが、中に入ってゆくに従って空間が広がっている。

 天然に作られたものではなく、人造的に作られた空間に俺は思わずため息をつく。


「滅んだ古代魔術文明の地下街か地下道かしらないがかなり広そうだな。これは」


 もちろん、崩れて通れない所の方が多い。

 ゴブリンたちが根城にしているのは表層部のごく一部なのだろう。 


「ご主人。

 罠は解除した。

 落とし穴が一つ、矢が飛び出るのが一つ、虎バサミが三つ。」


 通路そのものは基本的に一本道だった。

 その途中でいくつもの部屋があり、ゴブリンが奪った小麦が腐ったままおかれたり、死体から剥ぎ取った装備や道具が適当に転がっている。

 また途中に大量のゴブリンの死体もあった。


「で、山賊のやつら何人ほど居る?」 


 俺の耳元まで嬌声が聞こえる。

 ゴブリンの財宝。

 つまり、彼らが繁殖の為に必要な人間・亜人間の牝達相手に山賊達が腰を振っているのだろう。

 中隊規模のゴブリンの巣だと、その繁殖の為に用意される牝は最低百体は必要になる。

 ゴブリンは種をつけてから生むのに一月程度しかかからない。

 ゴブリンを使って襲わせているのならば、山賊たちの数は多くないと睨んでいる。

 で、ゴブリンが壊滅して使うのがいなくなった牝たちを勝手に使っているという訳だ。


「喘ぎ声から考えると、三十人。

 多くても五十人って所だと思う」


 ベルが冷静に相手の人数を述べる。

 このあたり、娼婦兼盗賊のベルは使い勝手が良い。


「どうします?

 今ならば踏み込んで皆殺しにできますが?」 


 ボルマナも真顔で進言する。

 慈悲はないが、関係ないだろう女たちを巻き添えにするのも後味が悪い。

 しばらく考えた結果、俺は海軍陸戦隊班長にあるものを持っていないか確認し、それを受け取った。


「何です?これ?」


 渡された物を見てボルマナが尋ねたので、俺はそれの名前を教えてやる事にした。


「音響警報機。サイレンさ」



「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 洞窟内に轟くサイレンは思った以上に大きく響く。

 さかっていた山賊たちが部屋から出てきたのはある意味当然と言えよう。


「なん……」


 下半身裸で斧を持っていた山賊は、俺の火炎放射器でその命を奪われた。

 サイレンは洞窟内に響き続け、奇襲もあいまって簡単に山賊たちの士気崩壊を招く。


「逃げろ!」

「化け物だぁ!」

「俺はまだ死にたくねぇ!」


 そんな台詞を最後の遺言にして、山賊たちは焼かれて物言わぬ肉の塊になってゆく。

 十人ほど焼き殺すと火の勢いが落ちてきたが、かえって退路ができる結果となって、山賊たちが我先にと逃げてゆく。

 確認できた出口は既に塞いでいるので、彼らに逃げ場は無い。

 山賊たちが逃げ出した事を確認し、部屋に兵士二人を見張りに立たせて中に入る。


「ぁ……」 

「あはっ……」

「……ぃ……」


 一緒入った海軍陸戦隊の兵士の一人がたまらずに吐くが、それがかえって落ち着きを取り戻し、気合で己の吐き気を我慢する。

 俺も大陸で戦争をしていた身だ。

 人も殺したし、女子供の惨い目も見た。


「この世界、魔法があるじゃないですか。

 努力と才能と運が必要ですが、魔法はその気になれば、何でも叶うんですよ。

 けど、体は必要ならば、心を徹底的に壊すしかないでしょう?」


 ボルマナの淡々とした口調が、奴隷種と呼ばれていた彼女たちの境遇をむざむざと伝えていた。


「これがっ!

 これがこの世界なのかっ!」


 壁に拳をたたき付けて、海軍陸戦隊班長が叫ぶ。

 色気ではない腐臭すら漂う中で、妖艶に狂いきった花。

 だが、彼の怒りもボルマナたちの絶望には程遠い。


「これはまだましな方ですよ」


 ボルマナの苦笑に我慢できずに俺も力任せで壁を殴る。

 その痛みが、指揮官としての自覚を思い出し我に帰る。

 人間も居る。

 おそらくは返り討ちにあった冒険者なのだろうか。

 ダークエルフも少しいるが、最高級家畜をこのような所に繋ぐ馬鹿はいない。

 おそらくは奪ったものだろう。

 そして、ここにいた多くは人間より頑丈で、ダークエルフより安い獣耳族たちだった。


「先に山賊を始末しよう。

 一人伝令に走ってくれ。

 『人質を確保した。

  山賊追討後に救助に入る』と」


「はっ」


 伝令を走らせて俺は残りの山賊たちを追討に移ろうとして、ベルの聞いた事の無い叫び声にそれを中断させられる。


「アデナ!アデナじゃないか!

 畜生!ガースルのやつ、こういう事かよ!」


「ぁ……んっ……」


「どうした?ベル?」


 ベルが一人の女を抱きかかえて叫ぶ。

 それを俺は尋ねたが、ベルから返ってきたのは今まで聞いた事がないような低く響いてくる声だった。


「ここにいる娘で見知ったのがいる。

 みんなギルドの娼婦で、あたしと仲が良かった娘だよ」

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