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関わることになった女性の話

 この物語を書き始めるきっかけができるまでは本来は僕はこのことを書くべきではなく、心の奥底にとどめておくべきだと思っていた。

 本格的な文豪のような特別文章力が高いわけでもないし、人を無意識に引き付ける魅力もない、加えてこんな空想の話など吐いて捨てるほど存在しているし、何の意味も価値もない人生の一片の可能性だと思っていた。


―――――彼女との出会いまでは――――――


 これから話すことに、本当の僕、言わば山中一輝が登場するのはかなり後のことになり、ブロークンゲート事件の事件重要参考人であるサムライブレイナーである彼を僕の名前を当てたのは、彼を僕の代理であり、彼女の道先案内人とも言える立場とするためだ。

 サムライブレイナー、略してSBと呼ぶのが面倒だったと言うのもあるが、何にしても話を進めることにする。

 水先案内人とも表現すべきかもしれないが、分岐点を教え示すことに変わりはないと言える。


 追従して、彼女の名前は愛、姓は湯川、フルネームでは湯川愛だ。


 最初に肝心なのは、彼女がいかにしてこの空想の話にかかわることとなったかだ。

 あれほど長い前置きを書いて置いたのはこの長くなりそうな話をできる限り省略できるようにしたためで、彼女は仕事帰り、人気の無い夜道で突然ソーに襲われたのだ。

 SF小説家マイケル クライトン原作、スティーブンスピルバーグの「ジュラシックパーク」や恐竜が登場する系の映画を見たことがある人間ならばわかるが、恐竜系の怪物に遭遇し襲われたら人間などひとたまりもないものだ。

 実際に姿を表した際に太刀打ちするにはよほどの人間でない限り全裸のような武器なしや素手では戦うことは無理だし、熊のような現在でも生きている生き物を含め、空想や幻想の存在でない限りは互角以上に戦える存在など存在することが不可能だ。

 問題となるが実際に恐竜のような怪物に遭遇したら人間はどう対処したらいいかと言う質問だが、何にしても多くは逃げることが一番大切で、彼女も怪物に襲われ、人気の無い夜道を必死で逃げていた。

相手が生体不明なソーだが、熊ではないが、背を向けて逃げると自分が優位だと判断し、余計に執拗に追ってくると言う話が存在するが、考える暇もないと言うように必死で彼女は走っていた。

上流な職場で上級の身だしなみとして通用するヒールの高いハイヒールを脱ぎ捨て、必死で走っているためか足元が破れたタイツ、ストッキングと言うべきかにほぼ素足で走って足を痛めか、足に血をにじませて走っていた。

息を切らし必死に走る姿はよく見ればわかる人間が見ればわかる高級感漂う服に身を包み、腕には手荷物が入っていると思われる、本革ではないが、良い布素材だと思われるバッグを胸の前で抱え、普段は整えられていると思われる髪を激しく乱して走っていた。

 最近精巧な着ぐるみが製作され、テレビのバラエティ番組などでコントやドッキリに使用されていることがあり、少し考えると偽物かと考える場合もあるかもしれないが、ソーにおいては不可能だと言えた。

 何度も言うが目を赤く光らせているのだ。

 加えて僕の持っている知識だが、成体、言わば大人となった恐竜の声は人間と同様に声変りを起こし、意外と低く不気味な声であることが多く、彼女の走る後ろではソーは時折不気味な鳴き声を彼女に向けてか出していた。

「……っ?!」

 追跡され痛む足に上がる息、人気の暗い夜道とくれば彼女の行く末は最高死と言う残酷な結果と言え、走れないと思い始めただろうと言うとき、少し先に愛の目線に人影のようなものが見えた。

「―――――あ? あ、あ、あの?!」

 人影のようなものと表現したが、彼女の眼から見て微妙に人影のようなものは少しだけだが動き、人と認識した彼女は人影に対し、助けを求め、声をかけた。

「―――――!?――――――」

 光った。

 何が光ったかと言うと、光の反射の類ではなく、人影の眼で、夜行性の生き物の類の夜の眼の発光ではなく、照明のような青白い発光で、少し先を照らしていた。

『―――伏せろ!』

「―――?!」

 いったい何事かと考える暇も愛にはなく人影は動き、不意に、愛に対して警告だと言うように言い、愛は声に反応して思わずと言うべきか、追いかけられていた衝撃か、人に出くわした安心感か、思わず地面に伏せた。

 怪物が遭遇したこと自体おどろきの事態だが、人影の眼が光ることに加え、声も奇妙な声で、無線機のような機械を通したような声で、反響、言わばエコーのようなものが起きていた。

「……?」

 この時には愛は声が奇妙なことには気づいておらず、伏せた後に頭上で響いた、たとえると花火か、運動会のスタート合図用のピストルによく似た物凄く大きな音におどろいていた。

「……銃声?―――――ん?!」

 日本と言う法治国家の中では日本人にとっては常識だが警察や自衛隊などの一部の職種を除き銃火器の所持は違法であるが、愛の頭上で聞こえた音は紛れもない銃声で、加えて愛の後ろで何かが落ちたような大きな音が聞こえ、愛は後ろを見た。

「―――――」

 愛を追いかけていたソーは地面に倒れ、苦しそうに震えていた。

 銃で撃たれたと判断でき、顔から血だと思われる赤い液体が流れ出し、銃弾が撃ち込まれたと思われる頭の部位が銃弾の威力によってこじ開けられたか、大きい穴が開いていた。

『―――大丈夫ですか?』

「―――っ?!」

『手を貸しましょうか?』

 落ちた薬莢か、どこかから乾いた金属音が聞こえる中で、ここで僕の代理人、道先案内人の彼、言わば山中の登場だ。

 何事かと愛が見ていると人影、言わば山中は愛に近づき声をかけてきた。

 仕事着の1つなのだが、彼が身に着けている服はシャツは白だがネクタイまで黒のスーツに、膝よりも長く黒い色のトレンチコート姿で、中折れ帽を頭に被っていた。

 愛は何事かとおどろいたが、山中のほうはと言うと特に何か変なことがあったと言うような様子もなく平常なもの言いで言い、おどろく愛に対して手を差し伸べてきた。

 この機械越しのような声は本当に機械越しで、ハイブリッダーの能力の1つ、いかなる会話や言語でさえも意志疎通及び解読が可能な全自動(オールオート)翻訳機(トランスレーター)が作動している。

「あ、ああ―――――」

 精度を上げればなくなるが、反響、言わばエコーが起きるのがこの能力の弱点だが、人間外の知的生命たちとの意思疎通も可能となっており、ハイブリッダーは日常的にこれをもちいて会話をしていることが多い。

 何にしても声をかけられた愛は手を伸ばし、山中に手伝ってもらい、立ち上がった。

「―――」

 彼と僕はよく似ていると書き、フェミニストと言うわけではないが、自分で言うのもなんだが女性に対してかなり他人行儀過ぎる面は似ているが、一番違う点で僕は普通の人間で、彼がハーフハイブリッダーと言うことだ。

 彼の眼の前にいる愛は事情をこの時点では知らないが、何にしても目の光と、光越しに見える白眼の無い独特の瞳はなんとも言えない事態と言えた。

『―――失礼ですが湯川愛さんですか?』

「―――――っ?!」

 想像してほしいのだが、同じ状況で同じことが、言わば突然怪物に襲われて、奇妙な人間に助けられて名前を聞かれたら、誰でもおどろいて言葉を失うもので、愛もおどろいて言葉を失った。

『―――信じて貰えないと思いますが、怪しいものではありません。』

 加えて山中の物言いはよく言えば事務手続き的、悪く言えば機械的で抑揚のない物言いで、おどろいている愛も気にせずに愛のほうを見つめていた。

「あ、あのあれ……?!」

 同じものを見れば誰しも同じような疑問を持ち同じような質問をするのは当然で、愛は質問をして地面に倒れたソーに眼を向け指さす中で、ソーは溶けはじめ、愛は言葉を失った。

 生物が溶解するなど自然現象的に絶対想定できない事態で愛が言葉を失うのは当然だった。

『―――話すと長くなりますし、銃声が通報されると思いますので、ご同行を願えないでしょうか?』

「………」

『―――すみません。わたしは雇われているんです。あなたを連れて来いと言われています。』

 実際問題同じ眼にあって言うとおりにする人間がどれくらいいるかわからないが、山中は愛に対し、最初は冷静に言ったが、愛が言葉を失っている中で少し焦った口調で愛に行った。

「……」

『あっ?! あの?!』

 どうすればいいかと迷っているような反応をする中で、愛は山中の目の前で腰を抜かして地面に倒れかけ、山中は愛の身体を受け止めた。

『……』

 愛は眼を開き、意識はあるようだが、眼はなんとも言えずおどろいているような目で、山中はと言うと、これからどうするかと言うような、何にしても困ったと言うような顔をして愛の顔を見ていた。

 事情をまったく知りえない人間に対し無茶をしたと言うまでもないと言える状況で、何にしても、山中は愛を少しの間後生大事に抱きかかえていた。


 眼を開けて気絶していたと言うべきか、心ここにあらず言うべきか、思考回路が焼き切れたと言うべきか、何にしても愛の意識が一時的にどこかに飛んでいたことは確かで、愛が再び自我を取り戻したのは少し経った時だった。

 自我を取り戻す一瞬の中で山中が愛を抱きかかえて運び、少し歩いた場所に行き山中の車の中に丁寧に乗せられ、車のエンジンがかかったことに気が付いた。

『―――――だと思うんだけど。さく―――――』

「―――しもそうおもいます。しかし、めい―――」

『―――わかった。』

 誘拐だと思うんだけど。桜。

 わたしもそう思います。しかし、命令です。

 わかった。

「……………」

 勢い良く起動し軽快なエンジン音越しに愛は先ほどあった男、言わば山中と、詳しくは後で話すが、監視官の桜の会話を聞く中で、車は勢い良く発進した。

「あ、ああ、あの………?」

『あ? 戻ってこれました?』

「はい……」

 何にしても愛は先ほど助けてくれた男にして、現在は車を運転している山中に声をかけると、奇妙な声は相変わらずだが、愛に対して丁重な返事で質問してきた。

「湯川愛さんですね?」

「え?」

 何にしても返事を返したが、なんと言っていいのかもわからず愛が山中のほうを見ていると、助手席のほうから先ほど山中と会話をしていた桜が愛に対して質問し、愛は助手席のほうに眼を向けた。

 バックミラー越しに助手席を見ると、山中と違い帽子は被っていないが、サングラスをかけ、ネクタイはしていないが、黒いスーツ姿の女性、と言うよりもどちらかと言えば少女の姿見えた。

 少女と言うのも無理もなく、どちらかと言えば子供のような顔であり、女性の年齢を書くのはいいことではないが、桜の年齢は実際18歳で十二分な未成年、言わば子供と言えた。

「こちらは警備会社AGSの佐藤桜です。」

「あ、はぁ………」

 先ほど愛にした質問に加え、桜の物言いは少々機械的で無機質なもので、愛は何にしても一応は、届いたであろう、必要最低限の返事を返した。

「それと、彼は上司の山中一輝さんです。」

『こんにちわ、いえ、こんばんは。』

「はぃ…」

 桜に紹介された山中は愛に対し、これ自体は奇妙そのものだが、ごく普通な夜のあいさつおこない、愛は少しおどろきながらも返事を返した。

『なぁ、桜―――――』

「だめです。」

『―――』

 声こそ大人の低い声だが、やめようよと言うような子供の物言いで山中は言うが、桜は幼さが残る顔と物言いで返した。

「わたしも反対です。同じ意見です。」

『―――』

「あなたも駄目です。中途半端な意見だからです。」

 運転席の山中に対して桜は率直にものを言い、山中は車を運転しながら難しそうな顔をするしかなく、桜は追い打ちをかけるように言葉を付け加えた。

「あ、あの? もう大丈夫ですから―――――」

『手厳しいな―――――』

「当然です。」

 何にしても愛は車に乗せられ、意味の分からない事態だが、下してもらおうと声をかけるが山中と桜は話を続けていた。

『―――何にしても―――』

「あ、ゲート装置の操作ならしますよ?」

『いいよ、3年もやってるんだ。さすがになれた。』

 何しても2人は愛の言葉に聞く耳持たないと言うか聞いてないと言う状態で、山中は運転席の横に設置しているカーナビの操作を始め、桜は手伝うと言うようにカーナビの前に手を出すが、山中は手で制し、桜は手をひっこめた。

 カーナビにはデジタル表記の数字と英語の文字が写し出され、操作を終え数秒後、周囲の風景が一瞬だけ激しい光に変化した。


 ここで細かい話だがこの車の外見はマツダ製のRX-8の黒であるが、実は山中が未来でオーダーメイドしたもので、過度なエネルギー食いで使用は数回程度と限度があるが、極小型のゲート装置を搭載し、飛行形態、ドロイド形態への変形能力を持っている。

 カーナビには時間航行用の操作形態が存在し、山中は装置を操作し、愛を乗せたまま時間航行を行った。

「―――!?」

 夜が昼に、夜明けよりも、何にしても強く激しい光が一瞬車の周囲を多い、光は消えると先ほどとは違う光景を映し出す。

 一瞬で時間航行と終了したが、愛には何が起きているかわからず、山中と桜は慣れた光景と言うように車を走らせていた。

「―――」

 正確な時間は教えられないが、時は現在から数百年後、ワープ日本支社のゲート装置が置かれたホールで、天井の高さは推定最大50m、広さは東京ドーム2つ分ほどの広さだ。

 ホールと言うよりも空港のロビー兼メンテナンスドックと言う表現が妥当で、車の窓越しに見える光景にはスーツ姿や作業着姿の男女がたくさん歩き回り、彼女から見てみたこともない機械がたくさん並び、動き回っていた。


―――ようこそ未来へ。―――


 僕がこの時この場にいたならば、冗談交じりに行ったかもしれないが、その場に居合わせた桜と山中はそう言った言葉をかけることもなく、車を走らせ、愛はなんとも言えず、質問しかねる状況の中で、山中は車を止めた。

 愛の視点ではどこに止めたかわからないが、少し先の駐車場で、車を丁寧にバックで止め、車を駐車して山中はエンジンを切った。

「……」

 シートベルトをはずし、車から出ると山中は後ろに座っていた愛の近くのドアを開けた。

「?!」

『歩けますか?』

 何をされるかわからない状況と言うべきだが、物言いは相変わらずの紳士的な物言いで山中は愛に対して質問してきた。

 愛は足を少しだけだが痛めていたこともあり、山中は確認するように足のほうを見て、愛も確認し、少し警戒するような、脅えるような表情を山中に見せた。

『危害を加える気は? 桜?』

「?!」

「時間ありません。」

 眼が光り、機械越しのような声だが、丁重な物言いで、お嬢様か、奥さまかと言うような丁重に扱うと言うような物言いの山中だったが、桜が不意に横入りし、両腕を愛に伸ばしてきた。

「あ? え?」

「いきましょう。」

『……桜……』

 桜の伸ばした手は愛の身体を手に取ると、抱きかかえる状態となり、愛がおどろく中で桜は愛を軽々と持ち上げて運びだし、山中はと言うと少し困ったような物言いで桜を見ていたが、何にしても桜を追いかけて歩き始めた。

 桜は眼の発光もなく、声も普通の人間と変わりないが、実はハイブリッダーであり、山中よりも性能が高い部類に入り、筋力も高く、愛を持ち上げて運ぶなど造作もないことだった。

『なぁ、桜―――』

「結構です。」

「―――――」

 持とうか、代わろうか、重たくないかと言うようなことを言いたいような口調で山中は聞くも、桜は勢い良く返し、愛はと言うと、何も言えずに桜と山中を交互に見ていた。

『―――――』

 困ったしこれからどうするかと言うような表情で山中は愛を抱えた桜の後ろを歩いていた。

『ほ、ほら、桜、大学に―――』

「間に合います。間に合わせます。」

『―――』

 少しでもいいから代わって持ち上げようとする山中には意思はあるようだが、桜は言葉通り付け入る隙がない返事を返した。

 頭が上がらず困った様子で後ろを歩く山中と、何にしても用事があるので早く終わらせたいと言うような桜を、愛は何も言わずに見ていると、少ししてある部屋の扉の前に立った。

『待て桜。』

「―――何か?」

『このまま彼女を入れる気か?』

 扉の前で桜がドアをたたく寸前、山中は桜を止め、桜が言葉を返す中で山中は愛の足元を指さした。

 血が滲み、破れている状態、歩くと痛そうな足をしていた。

「―――どうせ断りますよ?」

『そうだが、まがり―――』

「行きますよ。」

 桜は冷静に言葉を返し、山中は何にしても言葉を返すが、桜の言葉に対し、本当に困ったと言うような顔をして顔の前に手を当てる中で、桜は勢い良くドアをたたいた。

「飛鳥さんはいります。」

『―――』

 桜は返事もまったく待たずに遠慮なしだと言うように室内に入り、山中はため息交じりに部屋の中に入った。

「………」

 部屋の中はごく普通の少しえらい立場の人がいそうな個室のオフィスで、中央のデスクには部屋の主、言わば飛鳥が座り、手を組み、難しそうな顔をしていた。

 彼女はチャイニーズクォーターで少々目が吊り上がった中国系美女で、深く考え込む顔は機嫌が悪そうでなんとも近寄りがたい雰囲気がある。

 初対面の愛にとっては状況的にも最悪なお出迎えと言うべきだった。

「………来たか。」

「はい。」

 山中とも桜とも、どちらとも言えない外見の飛鳥は桜の言葉に返事を返し、桜は返事を返し、後に続いた山中はと言うと、困り果てている顔だった。

「ご苦労だった。山中。」

『ああ………』

「―――シャキッとしろ?!」

 上司と言うような雰囲気で飛鳥は言うと、山中はあいまいな様子で答えを返し、飛鳥に対し軽く怒られた。

『………もう行っていいか? いいな?』

「―――わかった。」

『すまん。飛鳥。』

 上司の前でため息と言う愛から見て少々失礼千万な様子の山中だったが、何にしても少しだけ体制を整えると、飛鳥に対して少し機嫌が悪そうに質問し、飛鳥は返事を返し、返事を聞くと山中は帽子を被り直し、3人に背を向けた。

『何にしても―――』

「?」

『選ぶのは彼女だ。』

 愛、飛鳥、桜の3人に背を向け、ドアノブに手を伸ばす寸前、山中は口を開き、3人が注目する中で言い終えると、ドアノブに手をかけ、足早に部屋から出て行った。

「………」

「桜!?」

「?!」

 ドアの閉まる音が聞こえ、3人が見ていると、勢い良くドアが開き、10代後半ほどの少女、正確には桜の友人の恋がドアを勢い良く開けた。

「ガイダンス間に合わないよ?」

「あ、うん?」

「え?」

 勢い良く恋が言うと、桜は愛を丁重にだが少し早くおろし、愛がおどろく中で恋に走り寄って行った。

「大学行ってきます!」

「失礼しましたー!」

「いってこ~い。」

 振り返った桜は勢い良く飛鳥に言い、恋はあいさつすると2人は一緒に走り出し、飛鳥は手を振って軽い笑顔で見送り、少しだが勢い良く締めたドアの音が室内に響き渡った。

「……」

「―――――さて、?」

「はい!?」

 なんと言えばいいかもわからず、合わせて愛も手を振ったが、何にしても飛鳥のほうを見ると、飛鳥は先ほどと同様に手を組み真剣な表情をして愛に眼を向け、愛は返事を返した。

 突然怪物に襲われ、助けられたら助けた男は眼が光る怪しげな男と、なんとも言えない状況の中で、次はいかにも怖そうな女性と2人きりと言う状況に変化した。

 愛は返事を返したが飛鳥は何にしても返事を返さず、正々堂々と椅子に座って構えていた。


 地球の人口が20世紀末に50億人と言われ、日本のことわざで十人十色なんて言葉があるが、同じような状況に遭遇したら誰でも反応し、聞きたいのは、ここはどこか、飛鳥、桜、山中、恋が何者か、何が目的だと言う質問をすることだ。

 何にしても愛は足や身体が少し痛む気もするのをわすれ、飛鳥のほうに眼を向け、飛鳥と眼を合わせた。

「飛鳥だ。堂城飛鳥。」

「あ、ああ、始めまして。」

 眼を合わせた飛鳥は少し間が開いた気もするが立ち上がり、友好的か、商業的なものかは一切不明だが、愛に笑顔を向け、握手を求め、愛も近づき、飛鳥に握手を返した。

 連れてこられた経緯こそ荒唐無稽な状態だが、飛鳥は少々日本人らしくはないが、普通に言葉も話せ、愛は少しだけだが安心した様子を見せると、不意に飛鳥の近くから電子音のようなものが鳴り響いた。

「?!」

「? ああ、すまん。」

 おどろいている愛も気にせずに、飛鳥は手慣れた手つきで自分の服の腰のポケットの中に手を入れ携帯電話を出した。

「メール? ―――あいつは―――――?」

 メールか何かが来たようで、読んでいるようと、少しだけ笑顔を見せ、足の足元を見た。

「何するにしても、足の治療と、タイツか、ストッキングか、靴を買い替え、変わりを用意しろ、か。」

「はい?」

 苦笑と言うような物言いで飛鳥は言い、愛は訳の分からない言葉に返事を返すことができなかった。

「お前を運んできた男がな、代わりの服とか用意しろと催促してきた。」

「えっと、さっきの………? 山中、さん?」

「ああ、そうだ。」

 先ほどの様子と言い、愛は山中のことを思い出し、聞くと、山中はいないが、飛鳥は仕方ないな従うと言うような言葉を返した。

「あ、そう言えば?」

「なんだ?」

「さっき、彼が言ってましたが、選ぶのは彼女だとか、わたしと言うことになりますが………?」

 肝心な質問だった。

 何にしても肝心な質問を愛はすると飛鳥は少し困ったと言うような反応を見せた。

「それに、あの人、眼が? 声も? それにここどこ? あの怪物は?」

「―――」

 突然連れ去られ、頭のブレーカーと言うべきか、ヒューズと言うべきか、意識と言うべきか、何にしてもPCだとフリーズしていたのではないかと言うような状況だったが、愛は状況を飲み込み、飛鳥に質問を再開した。

 同じ眼に遭遇すればだれでも同じような反応だと思うが、何にしても愛は混乱しているようで、飛鳥は少し困っているが、慣れたような安心した表情をしていた。


―――これが彼女がこのことに関わることになった話だ。―――

―――本物の僕と彼女が会うのはかなり後の話だ。―――

―――言うのも億劫になるほどの先の長い話だ。―――


 この後の話をすぐにでも書くべきだとは思うが、少し騒々しい話になりそうだし、頭の整理もしたいし、してほしいし、正直一息入れたいし、僕は本格的な文豪を生業として書いていることで稼いでいるわけではないから仕事もあり忙しい身の上だ。

 続きはいつになるかもわからないし、短気は損気と言うし、僕の話の続きを読む場合は、長い眼と気を持って続きを待っていて欲しいものだ。


 加えて遠くで先ほどから以前に話した彼女が僕を呼んでいるし、手が付けられないとほかの人も呼んでいるし、始まったばかりだと言うのにも関わらず、書くのを半場止めておけばよかったと思うこのごろだ。


 千里の道も一歩からとか言うが、一歩眼の前に断崖絶壁が存在する場合だって存在するし、一寸先や闇とかとも言うし、何にしても進まないと行かないが、苦難と言うべき問題が現実を含め、挫折しかけているし、多すぎると感じるものだ。


―――とりあえず、何にしても向こうの要件を片付けてくるから一度少しの間失礼する。―――

―――仕事が多いのに仕事を増やさないでほしいものだ。―――

―――加えて彼女もこれからが忙しくなるのだから、なんとも言えないものだ。―――


―――山中一輝さんが当サイトからログアウトされました。――― 

 

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