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序章 人を銃にたとえた話

 話を終え、懐から手を出した彼女の手に握られていたのは45口径の改造が施された大口径拳銃で、タクティカルライトとレーザーサイトのセットがフレームのレール部分に装着され、手入れがいきわたっているのか彼女の手の中で鈍い光を放っていた。

 彼女は銃の向きを持ち帰ると、突然その銃を手に取るように、迷うなと言うように僕に差し出してきた。

「遺言に従い、遺体は灰も残りませんでした。焼き払われました。」

「……」

「この銃だけが、わたしの手に残りました。」

 彼女は言うと悲しげな表情で言い、銃を両手で持って胸の前で抱え、表情は悲しげだった。

「――くん」

「彼の、形見……? なら何で、僕に渡そうと?!」

「ここでは、わたしがあなたのパートナーです。」

 小さい声で聞き取りづらいが、彼女が彼の名を呼ぶ中で何にしても疑問だったので聞き返すが、彼女は泣いて一筋の涙が頬を濡らす中で、どう見ても無理をした笑顔で言い、再び銃を渡すように前に差し出した。

「いざとなったら、あの時と同じようにあなたがわたしを撃つ時が来る。」

「……」

「その時のために、あなたが持つべきもの、いえ、最初からあなたのものだったの。」

 拒否するように彼女の前で首を軽く左右に振るが、彼女は聞かず押し付けるような状態の中で涙を抑えようとするが、止まらないと言う様子なようで、先ほど片頬を濡らした涙は、反対の眼からも一筋の涙を流れだし、彼女の反対の頬を濡らしていた。

「彼はわたしを撃つ覚悟があった。だけどわたしは、逃げ出そうとした卑怯者……」

「……」

「記憶を奪って、まで……」

 言葉を続けようとする中で彼女の手は震え、不意にと言うほどに銃を落とし、地面に勢い良く膝をつき、顔を両手で覆って泣き始めた。

「あう? わ?……」

「何が神? 何でもできる? 本当にすくいたい人は救えなかった! 大切な人は救えなかった! 愛した人は救えなかった!」

「……」

 緊急の事態とも言え、弾丸が入っているかわからないが何にしても落ちかけた銃を受け止める中で彼女は泣きながら、少し弱かったが勢い良く叫んだ。

「わたしなんかが生き残るべきじゃなかった! 自分勝手なのは彼じゃなくてわたしのほうだった! どうしたらいいの!?」

「……」

「わたしは、どうすればいいの? どうすればよかったの?」

 泣きながら彼女は言葉を続け、地面に手をつくと涙が床に勢い良く落ちた。

 慰めるために、近づけばいいのか、落ち着くまで待てばいいのか見当がつかず、近づくことができなかった。

「……だけど、希望の未来が見えたの……」

「――?」

「だけど、わたしは彼みたいな覚悟も強さもない……」

 言いながら彼女は強引にだがなくのを止めるような様子で、強引にだが身体を起こすと立ち上がり、近づき、半場強引にだが、抱きしめられた。

「あなたが彼じゃないのは解っています。彼もあなたじゃない、あの人も、だけど、だけど会った時うれしかった。本当だった。信じてよかった……」

「……」

「一時でいいんです。お願い、忘れさせて、一時でいいから……」

 背も高くやわらかな身体に包み込まれるように抱きしめられる。

「巻き込みたくなった。ごめんなさい、だけど許してなんて言えない……」

「……」

「だけど、だからわたしが守る。二度と失わない、二度と絶対に失わない……!」

背の関係か女性の方には少々不謹慎な話だが胸が直撃している。

うれしくないと言えばうそになるが、抱きしめられてかなり力が入って苦しいが、雰囲気的なものもあり、彼女も泣いているし、動くに動けない状態となっていたが、彼女にいるもう一人の女性と、後ろの2人の男は何も言わずに見ているだけだった。


 これから話すのはこれに関係する非常に現実とは思えないSFのような話だ。


 主人公は僕でも、彼女でもない、彼女の後ろにいる女性でもない、正確には後ろの2人の男性に関係する少し後の話で、その話に僕たちが登場するのは少し後の話となる。


 たとえると似たような、同じ銃の話と言うべきだ。


 僕の手に握られている彼女の持っていた銃は、僕にとても似た持ち主が持って戦っていた。

 僕よりも精神的にも肉体的にも強い男で、彼女の大切な人で、失われた人だ。

 彼が失われ、彼女が手を離した銃を本当に僕が持つべきかは、まったくわからないが、僕が似たような銃のような存在なのは確かだ。


 銃は工業製品のようなもので、一応は精密機械だ。

 彼は僕と同じ会社で同じような製造工程をえて生まれたある意味親子や兄弟とも言えるが、時や場所、使う人間が銃を変えてしまうが、銃は変わり映えせずにそこに存在しているだけで、本当はどれもこれも変わり映えしない存在だ。


 どちらにしても何かが変わるが、人が銃を変え、銃が人を変えてしまうのだ。


 銃弾(バレット)の装弾された弾奏が本体に装着され、弾丸が薬室内(チャンバー)装填(ロード)され、所有者が目標に狙いを定め引き金を引かれると撃鉄が叩かれ鉛玉が目標に命中すると言う極めて単純だが、ストッピングパワーを含め、使い方次第では非常に残忍な武器とも言える。


 口径、重量、速度などを徹底して的確に命中させれば人間を一瞬で死体とも言えない肉片に変え、五臓六腑をかき回し、身体の部品を一瞬で二度と使い物にならない肉片へと変貌させる。


 威力が非情なものも存在し、赤十字などの国際機関はストッピングパワーによる必要以上の痛みや苦しみを与えないために戦争時には一部の銃器や銃弾の使用を国際法的に禁じているほどだ。


 僕は張子の虎よろしく弾丸の発射されていない戦場に身を置かない飾り物の銃だ。

 発射されても弾丸はよほどの事情がない限り人は傷つく最悪の事態はないだろうし、時折遊びで射撃場などで人型を模した標的を撃ち抜く程度だ。


 彼が銃だとして僕に似ている銃なのは確かだが、正確には、僕の後ろにいる2人組の男の片方の男に似ていると言うことが正確だ。

 彼女に抱きしめられている僕は見えないが、同じ銃と言うが、使われた時や場所が変わったせいか、よく似ているが彼らば持つ銃と同様に服装のような外見と言い、装備と言い改良され、同じ銃とは言えまるで別物だった。


 僕と似たような目で、一重に見える奥二重で細く、少々怒っているようにも見えるが、もっとも違うのは瞳だった。

同じ茶の瞳で、黒い瞳孔だが、空想の話のように透き通ってきれいとは言えず、死んだ魚のように濁ってもおらず、何も言わずに見つめる目は、言葉を失い、何物にも代えられない狂気とも言えるほどの真剣な強さを持った瞳だった。


彼女の話に聞くように戦うために命を賭け、命を奪うために引き金を引ける人とも獣とも言えない、兵士を超えた、殺戮(キリング)機械(マシーン)としての意志の強さを持っていた。


使われる場所が変われば銃も人も変わり、似たような物でも別のものへと変わってしまう証拠とも言える。


 片手に感じる銃の感触は金属の部分が冷たく、思ったよりも重く、戦うために使われ命を奪ってきた物体としては軽いのか、重すぎるのか、人を殺したことがない僕にはわからず計り知れなかった。


 彼は時折、戦いと言う場に身を置く中で、隠れてこの銃口を自分に向けていたと彼女は言った。

時折酒にも溺れ、苦しみ追い詰められた人生に、死によって生からの解放によって自ら終止符を撃とうとしていたことがよくあったそうだ。


人は単純だと言えばそこまでだが、銃とたとえたが、確かなのは彼女が僕とは違う銃で、近くの女性は違う銃で、男の後ろにいる男は彼女に似た銃だと言えることだ。


 これから話すことが、どのような人間なのか、たとえるとどのような銃なのかは、この時の僕はまだ知ることはなかった。


 人を銃に例えるお前は何者かと聞かれると、困るが、これからよく典型文になると思うけど、敵でも味方でもない、正義でも悪でもない、たとえて言うと、調節者(バランサー)だ。


 一度ここで失礼する。


―山中一輝さんが当サイトからログアウトされました。―



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