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かみ・つき  作者: B-POP
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輝け! 青春

 呼吸困難寸前で肺が痛いし、脇腹も中身を直接ほじくられているようだ。

 どれだけ走ればここまで息が切れるのか知らないが、感覚的には何時間も走っている気がした。腕時計に目をやっても、分針が逆回転していたりしてあてになりそうもない。

 ただ、そろそろ走れる限界なのは間違いがなかった。

 美緒たちの喧騒はしばらく前にふっつりと途切れたが、かといって吹水の姿も全く見えてこない。どう考えても、学校の敷地の広さを超えて走っているはずなのに。

「風邪引いてさ、熱があるときに、走っても走っても全然進まない夢とか見るけど、あれ、みたい、だな。はぁ、はぁ」

 大きく上下する肩も効果は薄く、息がちゃんと吸えない。山の上の方の、酸素が薄いとこってこんな感じなのかも、と想像してみる。

 俺の体の疲労だけではなく、いよいよ世界が変わりつつあるってことだろう。

 それでも、無鉄砲とやらを装着してしまったらしい俺の脚は進む。歩いた方がまだ速そうな、膝もまともに上がらない無様なフォームで。

 歩かないのは、歩いてしまうとそこで色んなものが折れてしまいそうだから。

「シュウぅ、疲れたよぅ」

「俺もだ。ってかこれ、明日は筋肉痛決定だな」

 明日、なんてもんがくればだけどな。

「と、何弱気になってんだ。いかんいかん!」

 そんな、無駄に等しい抵抗を繰り広げる俺の脚が、根性でも気合でもドーピングでも無鉄砲でも動かなくなりかけたころになって、ようやくそこにたどりついた。

 何もかもを振り絞った脳みそが、朦朧とする意識の中でそれを認識できたのは、ちょっとした奇跡だろう。どうやってここに近づいたのか、その過程は記憶にない。

「吹水……」

 どんよりと薄暗い、濃紺の霧に包まれた中に浮かぶ、淡いピンク色の光。

 薄ぼんやりと闇を照らす行燈のような輝きは、ずいぶん頼りなく明滅を繰り返しては、時折夜色の帳の向こうに消えてしまいそうになっている。

「吹水!」

 何の確信もなかったが、叫んだ。

 駆け寄った俺が見たのは、糸で釣られているように宙に浮かび、放心しているようにどこか遠くを見つめている、吹水杏子だった。

 淡いピンク色の光は、まぎれもなくあの日見た魔力の色だ。

「モモの言葉を信じるなら、今の吹水は魔力を無限に生み出す装置になってんだよな」

「凄い量の魔力だよぅ。こんなのがどんどん出てきてるなんて、思わなかったよぅ」

 それは俺にもわかるレベルだ。さっきから、近づくほどに肌がピリピリして、意識も朦朧としてくる。暖房の効きすぎた部屋にいるみたいだ。

「しかも、何か意識も飛んでるみたいだし……どうすっかな。おい、委員長、聞こえてるか? おーい!」

 ダメもとで声をかけるが、案の定の結果だ。ピクリとも反応しない。

「かといって触れようとすると」

 差し出した俺の右手の手首から先は、ピンクの光に触れた瞬間、音もなく消滅する。

「はぁ……我ながら怖い体だ」

 魔力との対消滅なのだが、相手の力が膨大すぎて一方的にこちらの神気=俺の体が消滅した、ってわけだ。にしても、しばらく待ってるだけでにょきっと生えてくる右手って、あんまり嬉しくない光景だよな。

「もちょっとファンタジックな復活してほしいもんだ。RPGの回復魔法みたいに光に包まれて、とか」

「そのまま消滅していただければ幸いでございましたのに」

 背後からの予想外の声に、俺は慌てて振り返る。まだ感覚のおぼつかない右手でカナメをかばいながら。

「って、何やってんの? ナイアガラ」

「似合っておりましょう?」

 ええ、非常にお似合いですよ。プテラノドンを三割増しで不気味にしたような悪魔の翼や、日本の鬼と西洋の悪魔を合体させたような、実に魔界チックなデザインの頭部なんて特に。いつだったか、部室で見ていたRPGの攻略本から飛び出したみたいだな。

「ナイアガラぁ、杏子がたいへんなんだよぅ」

「えぇ、存じ上げております。が、それはナイアガラの感知するところにございません。結論から申しますに、ナイアガラはカナメ様を無事にお連れさえできれば、この世界などどうでもようございます」

「おい、今そんなこと」

「はっきり申します。修太郎様、あなた様が消滅してカナメ様のくさびが解き放たれるのでございましたら、それもやむなしとかナイアガラは考えます」

 眉一つ動かさずにじっと俺を見るナイアガラの顔には、動揺なんて微塵もない。ただ淡々と事実を述べている、とでもいうような顔だ。そして、実際そうなのだろう。

「さらに申しますなら、その代償としてこの世界がどうにかなろうとも、でございます」

「マジか?」

「マジで、ございます」

 しれっと言ってのけやがった。こいつ、まさかこの期に及んでこんなことを言い出すなんて、さすがに予想外だ。いくらそれが使命だとか言っても、なんか、

「ムカつく」

「ご随意に。全てを想定した私は、この場所がカナメ様を連れ戻すベストな場面と結論付けました。誰の邪魔が入ることもなく、魔王と修太郎様を対消滅させ、カナメ様を自由にする。何とも無駄のないプランでございます。さあ、当たって砕けてくださいまし」

「ナイアガラぁ、それはひどいよぅ」

 抗議のためにナイアガラにかけようとしたカナメを制して、代わりに睨みつける。

「ひどい言われようだな。まるで、何もかもが失敗して全部消えちまうような言い草だ」

「そう申し上げたつもりでしたが、何か不都合でもございましたか?」

「ありまくりだ。俺達は失敗なんかしねぇし、消滅もしねぇ、委員長も無事に連れ戻すしこの世界だって元通りにするし、俺だって消滅しねぇしてやられぇよ!」

 最後のあたりはやけくそ気味に叫んだせいでちょっと噛み気味になったのは惜しかったが、気にしない。言いたいことはぶちまけた。

「その右手をご覧になってもまだそうおっしゃる。勇気と無謀は別物でございますよ」

「生憎、こっちは無謀が燃料なんで、今さらだよ」

 かっこつかねぇな、おい。

「おやおや、安っぽい挑発に乗ってくださるものでございますね。助かります」

「俺の周りはやたらと煽りスキルの高いやつばっかでな、乗り慣れてんだよ」

「意味不明でございますね。まあようございます。何とでもなさってくださいまし、どうせ無駄でございますので」

 ばっさばっさと悪魔の羽をはためかせると、何とも生ぬるくて不快な風が頬を撫でる。だから何で、羽の生えてないお前が翼を動かせんだよ。

「うっせぇ、見てろ! おい、委員長、帰るぞ。こんなとこで世界を終わらせたりしたら、お前の目的達成できねぇだろ」

 勢い余って両手を突き出してしまい、再び手首から先が消滅。しかも両手とも。

 それでも全く反応はない。対消滅で魔力が一瞬薄まりはするものの、そこに僅かでも可能性があるとは思えない。俺の持つ神気との、絶対量の違いが浮き彫りになるだけだ。

「学習なさらない方でございますね」

「外野うっさい! 委員長、聞いてくれ! このままだと高校生活を楽しむどころか、魔王になる夢だって叶わないかもしれないんだ」

 反応はない。

「世界も消滅しちまうし、そうなったらいい魔王になんて到底なれねぇだろ! 言ったじゃねぇか、いい魔王になるって」

 喉が痛くなるほどに叫んで、体中を震わせて声にする。

 なのに、目の前の吹水には全く届かない。どころか、じわじわと俺の体をむしばむように、疲労感が足の裏から体を這い上がってくる。いよいよ俺の体にも変化が起き始めた、ってことか。

「無駄でございましょうね。杏子様は既に魔力そのものに転位し始めておられます。自らの生み出した膨大な量の魔力による、副作用のようなものでございますね。位相の違う彼女には、声が届くことはまずございませんね」

「だから、外野うっせぇ! それでも俺に出来ることは、これしかねぇんだよ!」

 呼び続ける。求め続ける。もう時間がないにしても、最後の一分一秒まで諦めることなく、声にし続ければきっと、

「奇跡は起きる、でございますか?」

「そうだよ」

「起きませんね」

 ナイアガラの声が、ぼやけた俺の脳裏にはっきりと、刻みこまれるように届いた。内容はさておき、いつもは楚々とした、それこそいいところのメイドさんのような穏やかなしゃべり口調なのに、このときだけはそうじゃなかった。

 相手を非難するような、それこそ敵を切りつけるような、はっきりとした口調。

 刃物のような鋭い声が、さらに俺を切りつける。

「神の使いとして申し上げておきましょう。そのような気構えで奇跡が起こるなど、ちゃんちゃらおかしゅうございます。奇跡を起こす立場の者として申しておきますが、そのような奇跡は、決して、断じて、絶対に、起きません」

 最後の「起きません」は、まるで物理的に殴られたような衝撃が脳を突き抜けた。

「と思ったら、マジでアイアンクローを食らっているんだが、何故だ」

「失敬。勢いあまりました」

 勢い余って俺の頭がい骨が軋むなんて、なんていやな世界だ。

 でも、そんな世界でも、俺にとっては消してしまうには名残惜しい世界だ。美緒やあの会計はまあいいとして、カナメや吹水、クラスに戻れば根隅の馬鹿だっている。

「あ、根隅思い出したらちょっとどうでもよくなった。失敗」

 ひどいさー、という非難の声が聞こえてきた気がしたが空耳だ。

「じゃねぇよ。ナイアガラに何と言われようと、俺は奇跡を信じて呼び続けるんだよ」

「残念ながら、世の中そのようにうまくいくものではございません。起きるはずのない奇跡に賭けるよりも、私には大切なものがございます」

 さらに握力が増し、頭だけではなく全身が軋んで悲鳴を上げているようにさえ感じられる。にしても何でこいつらはみんな、アイアンクローを選ぶんだよ。

「それでも俺は」

「この膨大な量の魔力を打ち消し、崩壊のトリガーとなった茜様に正気を取り戻させ、あまつさえほぼ同化してしまった魔界と人界を分離安定させ、そのうえで杏子様までその手になさろうと? そのようなことが可能だとお思いで?」

 改めて言われるとむちゃくちゃだ。どれか一つだけでもできる気がしない。

「でもだからって、やらねーわけにはいかねぇだろ!」

「ナイアガラぁ、そんなひどいこと言っちゃだめだよぅ」

 俺の服の裾を引っ張りながら、カナメがナイアガラを非難する。さすがにこれはこたえたようで、一瞬ふらついたナイアガラ。が、決意は固いようだ。

「私めはカナメ様のためだけの存在でございます。私のベストと他の方々の、ひいてはこの世界にとってのベストが必ずしも一致は致しません」

「でもぉ」

「最悪の場合、この世界の消滅に巻き込まれ、カナメ様を失ってしまうことにもなりかねません。それだけは、何としても避けるべき事態でございますゆえ」

「あがががっがっ! くそっ、このままじゃ、くそっ」

 いよいよナイアガラから手加減の色は消え、俺はじわじわと吹水の方に寄り切られそうになっている。あんな濃度の魔力にぶち込まれたら、たぶん俺の体など一瞬で消滅するはずだ。くそ、なんちゅうえげつない作戦を考えるんだ、こいつ。

「さて、では消えていただきましょう。他の皆さんがいらっしゃるところですと、私にも罪悪感が芽生えてしまいます。が、ここでなら」

「罪悪感だ? 嘘つけ」

 無駄とは知りながら、顔を鷲掴みする手に指をかけてみるが、びくともしない。何で両手使ってんのに小指の一本も動かせないんだ、くそっ。

「無駄でございますよ。何か言い残すことがございましたら、どうぞ」

 完璧に悪役のセリフだが、どうにもナイアガラがやると似合うので困る。氷のような無表情も、この場面では恐怖心をあおる最高の演出だ。

「さあ」

「ないあがらぁ! やめてよぅ、ひどいよぅ」

 もう後がないのは見るまでもない。背骨を引き絞るような寒気に、もうそこまで魔力が迫っているのがわかった。下手をしたら髪の毛ほどの隙間しか残っていないかもしれない。目と鼻よりも近くにあるのは、消滅という情けも容赦もあったもんじゃない現実。

 掛け値なしの、絶体絶命。

 その中で走馬灯のように浮かんだ、短い上に大した満足感もない人生。

 宗教の勧誘のような文句で誘われた部活。彼女の一人もできなかった中学時代。わくわくも、ドキドキも、ときめきも、あったといえばあったかもしれないが、何もかもが中途半端で圧倒的に不足している、寸足らずな人生。それが高校なら覆せると、本気で考えていた。本気、だったんだよ。

 わしづかみにされたままの頭を動かすと、視界の隅っこに吹水の眼鏡が見える。

 期待しなかったっちゃ嘘になる。いや、うそだ。嘘になるどころじゃない。

 その瞬間を狙ったように蘇る、ごく最近の記憶。その中の一言は、妙に鮮明だ。

 『青春、してみないかね?』

 何で今よりによってその一言かね。つくづく思い知らされるよ、結局この一言がずーっと俺を縛りつけてたんだって。

 何で縛りつけられてたかって? そんなもん決まってる。

 俺だって青春したいんだよ。悪いか。

 というわけで、

「くっそぉぉ! やりゃいいんだろ、やりゃぁ! カナメぇ、俺にかみつけぇぇぇぇ!」

 俺の口は、唐突にそんなことを叫んだ。叫びながら、脳が茹るほどに高速で考え、考え直す間もなく思考をぶちまけてゆく。

「シュウぅ? だめだよぅ、無茶したらシュウが消えちゃうよぅ」

「いいから!」

「いまさら何をなさっても無駄な抵抗でございます。それよりも大人しくカナメ様を」

 そんなもん今さらだ。無駄だってことを実感するためにここまで来たんだって言われれば、それはそれで納得だ。でも、敢えて他人にそれを言われると、腑に落ちないどころかなんかムカつく俺がいるんだよな。美緒に似てきたのか? 最悪だ。

「やけくそだ! 何だってやってやるよ! 世界だって救ってやるし日常だって取り戻してやるし、魔界? んなもん知るか、とっとと帰りやがれって感じだ!」

 叫んでいれば頭の痛みは薄れたし、わめいた分だけ無駄に熱量の高いエネルギーが自分の中にあふれてきた。なんだか後ろ向きの汚れたエネルギーのような気もしたが、この際何でもよかった。

 大事なのは無茶することであり、無謀に進むことであり、すなわちそれが、

「俺は生きて、生き残ってぇぇぇぇ!」

 ますます湧き上がる謎のエネルギー。と思ったらカナメの八重歯が見事に俺のわき腹に突き立っており、そこから燃えるような熱量が問答無用で流れ込んでくる。自分が空気をパンパンに入れた風船になったように錯覚する。

 けれど、俺の中にあふれているのはそんな純粋な何かではない気がする。

 カナメから注がれる神様エネルギー。それはそれで俺に力を与えているんだが、それとは別の何かが自分の中で精製されているらしい。

 火傷しそうなぐらい熱いくせに淀んだ色をして、しかも何だか甘酸っぱさの酸っぱい方を必要以上に強調した匂いを振りまく、鬱陶しいことこの上ないエネルギー。これを何と呼ぶのかは敢えて言葉にしたくはないが、どうやら俺にはそれしかないらしい。

 行き場を失ったきちゃないエネルギーを、俺はあふれさせる。

 奇跡が起きてくれないんだったら、無理やりその首根っこをひっ捕まえて俺の前に引きずり出すしかないだろ。俺の手は、それができるんだから。

 無茶と、無謀と、無鉄砲とはよく言ったもんだ。普通の脳みそじゃ自分が消えるのが怖くて、こんなことできねぇもんな。まんまとはめられた気分だ。

 はめられた気分だけど、

「シュウぅ、もう限界だよぅ」

 決心はついた。美緒がポケットに入れて持たせたもんを、全力でぶん投げてやる。

「青春したいんだよぉぉぉぉ!」

 人に聞かれた日には自殺したくなること請け合いの大絶叫。

「世界がなくなったら青春もできねぇし、相手がいねぇと恋もできねぇし、きゃっきゃうふふしてあとで思い返したときにほんのり甘い香りのする、ハイスクールライフなんて夢のまた夢に消えるんだ!」

「何をおっしゃって」

 こうなればもう止まらない。暴走特急と化した俺はとにかく欲求のすべてを吐き出して、持てるエネルギーの全てをぶちまける。

「文句あるか! そのために世界になくなられたら困るんだよ。エネルギー足りないならいくらでも俺の無尽蔵の青春エネルギー燃やしてやるわ! くそぉ! 言うよ、言えばいいんだろ!」

 その挙句にとうとう、最後の一線を、かるーく飛び越えたわけだ。

「好きだぁぁぁぁぁぁぁ! ふきみずぅぅぅぅ!」

 これを願いというのか告白というのか、はたまたただのアホの骨頂か。答えは神のみぞ知る、なんて言うとカナメに「知らない」と一蹴されてしまうんだが、とにかく俺は叫んだ。手に入れるんだか取り戻すんだか知らないが、とにかく己の欲求に素直に、従順に、燃え盛る情熱を形にした。

「だいっっっすき、だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 言った俺が一番びっくりしたんだからな。そうだったんだ、って。でも後悔はしなかった。俺はこれからはそういう人生を歩むんだって。青春って言えば恋がつきもんだろ? だからカミングアウトしたんだよ。文句は言わせない。異論も認めない。

 そして俺は、壊れた。

 混乱していたんだ、と言い訳をさせてもらいたい。

 ぐっちゃぐちゃになった頭の中で必死になって言い訳を考えて、急激に膨れ上がった恥ずかしさに悶え死にする直前の俺を襲ったのは、またしても美緒の言葉だった。

 ほんのり甘くって

                ちょっぴりほろ苦い

  プリンのような                       青春

「ぷりぃぃぃぃぃぃぃぃんっっっっっっっっ!」

 歪みまくって一周したせいで、逆に微笑ましい青春のイメージだ。文句は言わせない。

 俺から溢れすまばゆいばかりの光が、自分でも眩しい。

 ちょっと黄ばんだ、神々しさの足りない光が、すべてを包み込む。

 呆れたような、笑ったような、何とも表しがたいナイアガラの顔を最後に、俺の意識は光に溶けていく。

「普通ここは、吹水の顔だろ」

 そんな苦情も、どこにも届かない。

 世界がどうなるかってのが、なぜか気にならなかったのは、何でだろうな。でも、


 こうして、世界は救われた。

 らしい。

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