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ツインテール

作者: 悠莉

私たちは双子の女の子。名前は夏芽(なつめ)(姉)と冬芽(ふゆめ)(妹)。

「どうして夏と冬なの?」

二人でしているお店にきていた女の子に聞かれる。私たちは顔を見合わせて

「名前だけでも区別つくようにしとかないとね」

と答えておいた。女の子は「そっかぁ」と言ってお母さんのもとに言ってしまった。それを確認して、深ーいため息をつく。

「もう、この質問今日で何回目よー。これから先毎日のように聞かれると思うとうんざりだわ」

「そんなこと気にしてたらこれからさき生きていけないわよー」

夏芽が机の上に並ぶ小物を丁寧に整えながら言う。一方で冬芽は長い髪を床ぎりぎりまで垂らしながら机にうなだれている。顔は見分けがつけられないくらいそっくりなのに中身はこうも変わってくるものなのだった。

「なんで双子なんかになったのかね」

「言っておくけどあんたがあとからでてきたのよ」

「きっと私が先に出るはずだったのに、夏芽が図々しく押しのけていったのよ」

「はぁ?そんなわけないでしょう。どうせ冬芽が今みたいにダラーっとしてたのよ」

「なっ」

火花が飛び散るかと思うくらい強く睨み合った。口喧嘩は日常茶飯事だったが、なぜだか今日はお互い譲らなかった。しばらくそのままだったのに、冬芽の唇がふるふる震えだしたと思うとくるりと背を向けて店を飛び出していってしまった。夏芽は驚き追いかけようと思ったが、店にはお客さんも居て空けられないことに気がつき、仕方なく仕事の続きを始めた。



冬芽はしばらくして我にかえると、いつの間にか隣町まで来ていることに気がついた。もう冬目前の今、薄手の長袖の格好をした夏芽はどことなくまわりから浮いているような気がした。それになにより寒かった。

「うぅ・・・帰りたい」

でも帰れなかった。こんなときくらいこのたっかーーいプライドがなくなればいいのに、と思う。帰りたい、寒い、帰れない、でもやっぱり帰りたい・・・そんな葛藤を繰り返しているうちにとある公園の前まで来ていた。

「ここって」

小さい頃よく二人で遊んでいた公園だった。

「あの頃は二人で遊んでたなぁ」

ブランコ占領して。という言葉は心の中に置いておいた。二人とも高いプライドと大人びた思考と美貌を持った子供だった(悪く言えばただの悪ガキ、プチガキ大将のようなものだ)。そしてその権力?を活かして占領して遊んでいたのだった。ふと懐かしく思い、そのブランコに座ってみた。昔は届くか届かないか位だった足も今は曲がってしまうくらいになっていた。

「小さっ」

自分がでかくなったくせにブランコのせいにした。そんな自分も今日は寂しい。

「なんでこんなことで喧嘩してるのかしら。あっほくさ」

そういうと景色が滲んできた。冬芽はそれがなにかわかっていた。だからそれが溢れないように出てくる前に目を閉じた。



「ありがとうございましたー」

一方で夏芽は未だに接客中だった。

「あーもう、どうしてこういう日に限って人が多いのよ!」

冬芽のことが気になり仕事に手がつかない。しかも手につかない上にいつもは二人でやっていることを一人でやらなければなかった。もう限界だった。愛想笑いなんてしてもいられない。

「本日はもう閉店にします!」

そう叫んだかと思うと店のドアに掛けてあるOPENの文字を裏返しCLOSEにすると、二人分の上着を持って走り出した。

「あのこが行きそうなところというと・・・あそこだ」

あそこというのはそう、想い出の公園だった。坂を下り公園の前まで走っていくと、首から上のない人が居た。

「きゃあっ・・・って、あれ?」

首から上がなく見えたのは探していた冬芽だった。首から上がなく見えたのはブランコに乗り、腕を伸ばして鎖を掴んでいる状態で後ろに反り返っているような格好をしていたからだった。おそるおそる近づいてみると目元にうっすら涙のあとを残しつつ寝ていた。

「どうしてこんな格好で寝られるのかしら」

そう思いしばらく見ていたがなかなか起きる様子がないので思いっきり揺すってやった。

「冬芽。冬芽!おーい」

「うるせー・・・」

寝起きの悪い冬芽はこのときも悪かった。だが公園にいることに気がつくとブランコから落ちそうになっていた。

「なんでこんなとこに・・・あ」

今の状況を思い出すとばつが悪そうにちらちら見てきた。冬芽がしゅんとしておとなしい時は反省している時だった。

「ほら、これ着なさい。風邪引くわよ」

「・・・」

無言で受け取ると立ち上がって、素直に上着を着た。

そしてゆっくり

「・・・ごめん」

とこちらの様子を伺うような目で誤ってきた。でもその顔も夏芽が

「いいよ」

というと照れたような恥ずかしそうな顔になった。

「じゃー帰ろうかっ」

夏芽はそういうと左手を前に差し出した。それに応え、冬芽も右手を差し出す。二人はいつも喧嘩のあとは手をつないでいた。そんな決まりはないけど、小さい頃からそうなっていた。

「うわぁっ冷たい!」

外で寝ていた冬芽の手は氷のように冷えきっていた。でも夏芽の手の温度でだんだん暖まっていった。日の暮れた街を二人手をつないで歩いていく。

「どうして場所がわかったの?」

「想い出の場所だからあんたの行く場所はそこかなーとおもって」

「・・・ふぅん」

店の前の坂を上りきり後ろを振り返ると、真っ赤な夕日が沈みかけていた。

くるりと振り返り、二人で明るい町並みを見つめる。

「きれいだね」

「うん」

「あのね、言わないといけないことがあるの」

「なあに?」

「私別に想い出だからあの公園に行ったんじゃなくって、適当に歩いてたらついただけなの」

「は?・・・あんたって子は」

怒る気にもならず夏芽が呆れて笑うと、冬芽もつられて笑っていた。

そして今日は夜も一つのベッドに二人、手をつないで寝た。やっぱり昔より格段に狭かったけど、「若返ったみたいね」と前向きに考えておいた。

うとうととまどろみながら考える。

明日になれば全部忘れて、何事もなかったように私たちは会話してまたくだらないことで喧嘩するんだろう。

きっとこれから先、毎日喧嘩しては今日のように家を飛び出したり、泣いたり・・・。

でも私たちは大丈夫、離れたりしないもの。

喧嘩したら仲直りすれば良いわ。

壊れたら直したら良いわ。

涙が流れたらもう一人が拭ってあげて、悲しくなったら笑い合ってあげればいいの。

私たちが一緒にいることに、確かな理由はないけれどきっと意味があると思うの。

ツインテールが片方だけではそう呼べないように。

私たちは”双子”だからね。


初めての作品なので至らないところもたくさんありますが、ここまで読んでいただけて嬉しいです。ふと双子の話を書いてみたくなったので書いてみました。双子ならではのヘンテコな喧嘩の内容になっています。

読んでいただきありがとうございました。

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