まばたき
掲載日:2026/02/27
僕は小学生。
だいたい夜九時には寝る。二段ベッドの下が僕で上は姉ちゃん。姉ちゃんが寝返りを打つたびに、ぎし、と軋む音がする。その音が眠れない夜にはやけに大きく聞こえる。
あれは四年生のときだった。
いつものように布団をかぶった。
別に眠くはなかったけどもう寝る時間だから。
ベッドに入ってまばたきをひとつ。
次の瞬間――朝だった。
カーテンのすき間から光が差している。台所からは母の食器の音。
(え? 明るい?)
目を閉じて数秒、なんて感覚はなかった。
ただのいつもの一瞬のまばたき。なのに朝。
(???)
不思議だったけどそのまま朝ご飯を食べて学校へ行った。
寝ていないのにまったく眠くならなかった。
(いったいどういうこと?)
それからしばらく、ベッドに入るたびに意識してまばたきをした。
もしかして、また起きるかもしれない。
いやそんなわけない。
でももしかして。
一か月くらい続けただろうか。
それはまた起きた。
布団の中でそっとまばたき。
ぱちり。
――あ、朝だ。
本当にそれだけだった。
誰かに言おうかと思った。
でもなんて言えばいい?
「まばたきしたら朝だったんだよ」
きっと笑われる。
嘘つきって言われる。
だから、まだ誰にも言っていない。
僕はもう六年生。
三回目はまだ起きていない。
終




