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救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第六章 ランドラ編

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第五十話 『学使死戦 その二』

 隆起した地面が天井へと閉じ、最後に見えた仲間の影が完全に消えた。

 静寂。


 悠斗はゆっくりと息を吐いた。


「分断、ね」


 足元は円形の闘技場のような空間。逃げ道はない。

 空気が、震えた。

 視界の奥で何かが形を持つ。歪んだ四肢。捻じ曲がった関節。腕と一体化した刃。


 魔獣。

 人型の、ランドラ特有のあの学習魔獣。


 それは音もなく悠斗を観察していた。


「来いよ」


 次の瞬間、空気が爆ぜた。


 見えない。

 反射だけで身体を横に跳ねさせる。

 悠斗はさっきまで立っていた場所が抉れていたのを見た。


「速ぇな」


 魔獣が着地する。その姿勢、踏み込み角度、重心の置き方。

 すべてが悠斗の予想外であり、規格外であった。

 それこそ、学習。悠斗の戦闘経験から見ての新たな厄介な動き。


 二度目の突進。


 悠斗は踏み込まず、跳んだ。

 いいや、飛んだ。


「【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】!」


 動かす魔法。飛ぶのではなく、動かしている。

 宙で身体を自由自在に。

 それこそ、翼をもつ鳥なんかとは違い、さらなる自由が許可される。

 身体が浮く。

 

 天井近くまで一気に跳躍。


 他の誰にも干渉されないその場所から、悠斗は剣を魔獣に向かって動かした。

 その剣は魔獣を追跡するように動き、魔獣がそれをいなすたびに、再び魔獣に向かっていった。

 消耗戦。

 かと思われた時だった。


 剣が魔獣の腕に突き刺さった。

 完全に腕と身体と分断されてはいないものの、その手は宙でぶらぶらと動き、使えないように見えた。

 が、悠斗には、魔獣が自ら剣に当たりに行ったかのようにみえた。

 それこそ、かつてのアラムクラックで、琴音の攻撃に自ら当たったとの自分を重ねていた。


 悠斗はその魔獣の様子がおかしいことに気づく。

 その剣が突き刺さった傷口を広げていたのだ。

 広げて、裂いた。

 身体とは離れていない、が十分に肉が露出していた。

 腕と身体とのつなぎ目の肉は細かったが、役割は果たしていた。


 魔獣はその手を思い切り悠斗に向かって振りかぶった。

 ぶちぶちという音を立てながら、そのつなぎ目の肉は避けていく。


 が、最終的には血管一本がつなぎ目となり、悠斗の足をつかんでいた。

 血管一本。

 だが、それは十分なほど頑丈で、


「なっ――」


 思い切り叩きつけられる。

 背中に衝撃。肺の空気が抜ける。


 魔獣は、己の身体を武器として、道具として使うことをためらわなかった。


 悠斗はゆっくりと立ち上がろうとするが、そのすきを魔獣は見逃さった。

 魔獣は血管を鞭のように動かし、その遠心力で、魔獣の腕が悠斗を切り裂いた。


 ――冷静になれ


 悠斗はそう言い聞かせるが、悠斗の中では勝つビジョンが全く思い描けなかった。


 どうすればいい。

 何が必要だ。


 だが、この状況では何も得ない。

 今あるのは、ボロボロの身体とおぼつかない視界。

 それと、魔法、【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】。


 動かす、それだけの魔法だ。

 悠斗は以前から、動かしうまく立ち回ってきたつもりだ。

 だが、何かが足りなかった。

 風雅のような圧倒的な自己の力もなければ、徹のような努力の末の強烈な力もない。

 所詮は多少の力を持ったサポーターでしかなかった。

 その魔法を扱いこなせていない。


 ――知れ、俺の魔法を

 ――広げろ、魔法への知識を


「【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】」


 応用魔法もいらない。

 ただ、その詠唱だけで十分だった。


 魔獣は悠斗に近づこうとする。

 が、それ以上近づけなかった。

 逆に遠ざかっていた。押し込まれていた。


「相手を動かす。それだけだと、攻撃力に欠ける。

 剣なんかを動かすと、防御力に欠ける。

 だから三つ目だ。

 魔獣、お前は学習するんだろ?

 だからこれだって対処できるはずだぜ?

 最も、俺の魔法を完全に学習していればの話だが」


 人は物はこの世界にあるモノはすべて気体に触れている。

 それらを動かせば?

 そこには、そのモノだけが残る。


「疑似的な真空を作り出す」


 魔獣は何か対処をしようとするも何もできなかった。

 疑似的だとは言え、真空。

 音も聞こえず呼吸もできず。

 もがき苦しみ。

 最後に魔獣の皮膚は腫れあがり、はじけた。


「ああ、大変だった。一番強かったよ」


 悠斗はその場に倒れこむ。

 そして魔法も解除される。


 疑似的な真空状態。

 それが解除されれば、その空間に気体が流れ寄せる。


 が、意識を失った悠斗に、それへの対処をするヒマはなかった。

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