第四十九話 『学使死戦 その一』
「なるほどねー」
選別かー。と呟き、風雅はアミキシファから与えられた大鎌型の魔道具、暗業の三日月を構える。
ランドラの主によってダンジョン内を変形させられ、全員が一人に分断されている状態である。一刻も早く誰かに会うべきだという思考が全員の認識だった。そんな中、それを妨害する者もいた。
それが、風雅が暗業の三日月を構えた先にいる魔獣である。ランドラ道中にいた学習する魔獣に外見こそ似ているものの、感じる威圧が桁違いだった。
「【絶対な等式:座標】」
風雅は詠唱をするが、なんの変化も得ることができなかった。
本来であれば、【絶対な等式:座標】は風雅の座標を変えることで瞬間移動を可能とする魔法であるはずだった。それがかなわなかった。
風雅は仮説を立て、詠唱した。
「【絶対な等式:代入】」
風雅はその詠唱が成功したことを身体で感じ、結論を出した。
この空間にいる魔獣を倒さなければ、外部への接触は不可能だということを。
風雅の魔法の成功不成功がそれを立証していた。
「学習してるってことだよねー。
ランドラ内での俺の力をさー」
その魔獣は手に縫い付けれた剣を風雅に向ける。
「怖いなー」
そう軽く笑う風雅。
が、次の瞬間には、魔獣の視界から風雅は消えていた。
【絶対な等式:代入】によって得られた異常な身体能力を武器として、風雅は魔獣に攻撃を仕掛ける。
だが、それこそ相手は学習魔獣。
ランドラで見せたその攻撃はすでに学習済みであった。腕を異常な方向に曲げながらも、魔獣は風雅の攻撃を予見しいなしていた。
それだけではない。魔獣は使った。学習魔獣としての真骨頂を。無理やり身体を変形させ、剣が縫い付けられたその腕を鎌状に変形させたのだ。風雅と同じようにそれを使い、同じように動いた。まるで本人であるかのような動きをすることで、互角の戦いを見せていた。
「へー。すごいね」
風雅は一旦距離をとり、魔獣に拍手を送った。
いくら学習をしていてもここまで攻撃が防がれるとは思っていなかったからだ。
いや、学習だけではない。風雅が感じた威圧からもとれるが、この魔獣自体、相当な力を持っているのだ。それこそ、神級ダンジョンランドラの名に恥じぬ、神級魔獣の勲章を持っている可能性がある。
風雅はそう思いながらも、一つ。
「能ある鷹は爪を隠すって言葉、わかるかなー?
本当の実力がある人はその力を誇示しないってヤツ。
だからさー、俺も、結構隠してきたんだよね。
俺の実力ってやつを」
風雅は暗業の三日月を構え直す。
そして、実力を。彼の実力を発揮するための詠唱を始めた。
「【絶対な等式:変換】」
風雅は何かをした。何かをしたことで、その魔獣を倒した。
その何かを理解できたのは、当人である風雅だけであった。




