表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第六章 ランドラ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/45

第四十四話 『セイシンのツヨサ:我と我 その一』

 視点:半田青砥


 「クソがっ!どうなってやがるっ!」


 そう言ってはいるものの、それが空間に響かない。

 その声は聞こえない。

 なぜなら俺は今、沈んでいる。


 変な声が脳内に響き、しっかりとあったはずの地面がぬかるみのようになり、俺をそこに沈ませた。

 息はできる、だが何も見えない感じない。

 深海にいるかのような感覚だ。


 下に、この空間のどこか底へと落ちていく。

 それと同じように、だんだんと意識が遠のいていく。


 『ツヨサ、ミせたまえ』


 その言葉が、引き金になったかのように、俺の意識は沈んだ。



 ――――



 「それでは、期末試験の成績を返却するぞー」


 その言葉はしっかりと聞こえた。

 気が付くと、俺はあの魔獣どもが潜むダンジョン、いいやそんな世界から脱出していた。


 学校の教室。


 俺はその空間の隅っこにいた。


 「帰って来たのか......?」


 意味が分からなかったが、俺の心拍数は上がっていた。興奮していた。

 あの世界とおさらばできた、そう思うだけで胸が高鳴る。


 「青木ー」


 成績の返却、と先生は言ってた。

 それは、いつやったテストなんだ?

 つーか、そもそも俺はなんでこんな隅っこにいる?


 早く席に戻らねーと。


 そう俺の席へと戻ろうとした時だった。


 「は?」


 俺の席には俺がいた。

 完全に俺。

 教室にそれはしっかりといた。


 「おい、お前だれなんだよ!」


 俺はその俺の胸倉をつかもうとする。

 が、その手は俺をすり抜けた。

 まるで、俺が幽霊だとかみたいに。


 つーか、今気づいた。

 俺の声に誰も反応しちゃいない。

 俺が変なことしてるってのに誰も見ちゃいない。


 俺がそこにいないみたいに。


 「半田ー」


 先生から呼ばれた俺、というより、教室の俺が成績を取りに行った。

 まるで、盗み見るかのようだったが、誰からも存在を認識されていない俺は。

 その成績をしっかりと見る。


 総合学年順位34/142


 その順位を見て、俺はようやく状況を理解した。


 これは、三か月前の教室の風景だ。

 それと完全に一致している。


 なにかしらの魔法や魔獣の攻撃で過去を見せられているようだ。

 要は、俺は元の世界に戻っちゃいない。

 それよりも、これ、走馬灯とかじゃないよな?


 そう思いつつも、更に状況をまとめる。


 あの脳内に響いた声。

 あれは明らかに、俺に試練を与えているみたいなもの言いだった。

 精神の強さ。


 過去の俺を見て、何か精神が強いところを見せろと?

 馬鹿馬鹿しい。

 俺は過去を見せられているだけだぞ?

 そんな俺に一体何ができるっていうんだ?


 深くため息をつく。

 それをしたとしても、俺を見る者なんて誰もいやしなかった。


 「じゃあ、不備や質問があるものは職員室に来るように!」


 先生が教室から去り、チャイムが鳴るまでの時間は生徒たちの雑談タイムとなった。


 俺私はここが駄目だった、よかったなんて話を周囲の人間とかわすクラスメイト。

 そんな中、過去の俺は席を立った。


 そして、ある二人の元へと向かった。


 徹と悠斗、二人のところだ。


 「おいおい徹、お前の成績どうだったんだ?」


 「半田......お前から言えよ」


 二人のもとへと向かったとは言っても、本命は徹。


 「総合順位三十四位。お前は?」


 「六十七位。満足か?」


 徹の言葉に大きく笑う過去の俺。

 それを見て、割って入る悠斗。


 「お前、よく笑えるな。

  知ってるか?徹はとてつもない努力をしたんだぞ?

  努力をしたんだ。ただひたすらに」


 「それでその順位か?

  はーやだやだ。馬鹿に生まれなくてよかったぜ。

  もうちょっとマシな頭の構造に何なのかったのかね?」


 「青砥。お前さ。まじで何しにここ来てんだ?

  人を馬鹿にするためだけに俺たちのところまで来たのか?」


 「いやいや、俺の親切心だよ。

  もうちょっと努力しないと馬鹿にされちゃうぞっていう忠告。

  じゃあな」


 そういって過去の俺は二人の元を離れた。

 その時に悠斗の机に置かれた成績表を勝手に見る。

 総合順位十九位。

 俺よりも高いと知って舌打ちをする過去の俺。


 俺はその一連の出来事を少し離れた位置から眺めていた。


 「俺は、何を見せられてんだ?

  お前は悪い子だよって反省させようとしてんのか?

  無駄だよそんなこと。

  俺はひねくれてんだもん」


 俺は誰かさんの机で胡坐をかいた。


 つーか、どうやってこっから出るか。

 いくら元の世界とは言っても過去の世界だし、何だったら誰ともコンタクトをとれない。


 俺には魔法もない。

 どうやって、こっから出る?


 そんなときに、脳内に響く。

 響くというより、思い出す。


 『ノコリのモノのツヨサ、ミサセテもらうぞ』『ソのツヨサ、セイシンなり』『ツヨサ、ミせたまえ』。

 精神の強さ。

 それをどうにかしてここで証明しなければならない。


 それが唯一の手掛かりだからだ。


 わかっているんだ。

 それをしなければならないことも。

 そろそろ潮時だっていうことも。


 だけど、俺のプライドが邪魔しているんだ。

 俺はどうすれば、精神の強さを証明できる?


 いいや、強さを証明するんじゃない。

 どうすれば、俺は俺の精神と向き合える。


 はじめっからわかっていたんだ。


 俺は精神の強さを証明するんじゃなく。

 ここで俺の精神の在り方を証明しなければならないってことを。


 そして、それをすれば、俺が俺でなくなるということも。


 そんなことを考えている時だった。


 俺が、過去の俺が、俺のもとへとやってきた。

 この過去の教室の観測者である俺に、この場に干渉できない俺に。

 逆に干渉してきた。


 「お前は、なんで徹だけの順位を聞いたんだ?」


 それは、俺の醜い本質をえぐる質問だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ