第四十話 『神級ダンジョン ランドラ』
神級。
それはこの世界で、最大レベルの強さを持つものにしかつけられない称号。
人間であれば、その称号を持つ者が生きている者で五人。
それに対し、ダンジョンは攻略されない限り死なない。日々増え続ける。神級ダンジョンは現在十一。
その中の一つがこのランドラである。
神級ダンジョン、ランドラ。
古くからあるダンジョンで、攻略を目指した冒険者も多い。
だが、このダンジョンがあるように、攻略に成功した冒険者は存在しない。
それどころか、ダンジョン内部の情報もかなり少ない。
「このダンジョンはさー。普通の洞穴的なダンジョンじゃなくて、どんどん下に下っていく、要は迷宮的なダンジョンなんだよねー。
下に下っていけば行くほど、敵が強くなってく。
じゃあ、行くよー」
風雅の言葉によって、皆歩き始めた。
「なにこれ」
悠斗は驚く。
何故かダンジョン内が光っていた。
「LEDライトみたいな青い光。
アンリスさん、琴音さん、松明なしでいいよー。
なんか雰囲気あるねー。
流石は神級ダンジョンなわけだ」
「おい風雅、なんかのヒントになるかもしれないんだぞ?
観察とかしなくてもいいのか?」
歩き続ける風雅を悠斗は引き止める。
「この世界じゃ、あらゆる事象が魔法だからで理由がつく。
いちいちそんなことを考えてちゃキリがないよー」
だが、風雅はそう言ってまた歩き始めた。
元の世界で理解不能なことでも、魔法はそれを納得させる。
悠斗は改めて、それを理解した。
「おっ、敵だねー」
風雅が立ち止まる。
進行方向の先の方に、何かがいた。
「初めて見る魔獣だ。
みんな下がっといてねー」
風雅が言うように、その場にいる誰もが初めて見る魔獣だった。
人型の魔獣。
顔に大きな目が一つ。皮膚は動物の皮がツギハギになっているような見た目をしていた。
錆びた剣を持ち、まるで、彼らに剣士を思わせる。
「おい風雅!一人でいけんのか?」
「悠斗、あのさ?
てめぇがどうこう言える強さ持ってんのか?
風雅は神級だぞ?最強なんだ。
てめぇごときの助けなんざなくとも勝てるだろうよ」
一人で魔獣に向かっていく風雅に悠斗は言うが、青砥がそれに対し、強くものを言う。
「まー、二人とも落ち着きなよー。
すぐ終わるからさー」
風雅はアミキシファから貰った大鎌、暗業の三日月を構える。
「【絶対な等式:代入】」
それを詠唱すると、風雅はまるで風の如きスピードで魔獣に攻撃をしていく。
魔道具、暗業の三日月。
その効力は、その大鎌で斬った部分を麻痺させるもの。
魔獣の動きはどんどん鈍くなっていく。
だが、それは魔獣を倒す決定打にはならないようで、風雅は一旦魔獣と距離をとった。
「んー。結構硬いねー。
里香、あれ使おー」
「もう使うの?」
「流石に神級ダンジョンだからねー。
ストックは結構あるでしょー?」
「はい」と里香は風雅に何かを手渡した。
風雅はそれを持って魔獣に近づく。
「【絶対な等式:座標】」
手で触れられる程、魔獣に近づき、風雅は詠唱する。
次の瞬間には、風雅は里香の傍に立っていた。
元々風雅がいた場所、そこに残されたのは、里香に渡されたあるものだった。
「【統合な結合】」
里香の詠唱。
これまた次の瞬間。それが爆発した。
里香が風雅に渡し、魔獣の近くに残されたそれが、大きな音と共に爆発をした。
悠斗、青砥、アンリス、琴音の四人はそれとアラムクラックのあるものを重ねた。
あるもの、それはグレネードである。
この世界で作れるはずのないそれが、そこにあったのだ。
そのグレネードによって、魔獣はダメージを受けた。
死にはしなかった。が、皮膚がただれ、体の中心辺りにある心臓のような部分が剥き出しになる。
「あれはコアかな?」
風雅はそう言って、魔獣に向かって一気に加速し、その部分を突き刺した。
魔獣はまるで、電源を切ったように、急に活動を停止した。
そのままその場に崩れ落ち、崩壊が始まった。
「倒したっぽいねー」
風雅はため息をついて皆がいる方に戻った。
「風雅、あれって」
「もしかしなくてもグレネードだよねー!!」
おそろおそろ聞く悠斗に目を輝かせながら聞く琴音。
それに対し、風雅は「そうだよー」と軽くかえす。
「この世界で、グレネードなんて作れるのか?」
「普通であれば、不可能。だけど、里香の魔法を使えば話は別なんだよねー」
風雅は里香に説明を促す。
「根本的に、元の世界のものと、私が作ったものとじゃ別物。
なんせ、材料が違うから。魔獣の効力がついている部位を使うの。
爆発性のある部位と発熱性のある部位。それをね」
「どうやって?」
「私の魔法は、ものとものとを結合する魔法。
爆発を抑制しないような容器の中で、さっき言った二つの部位を結合させることで、擬似的にグレネードのような爆発を生み出せるの」
「それは、凄い魔法だ」
悠斗は魔法に感動をした。
いや、魔法だけでなく、魔獣の部位を使うという発想にもだ。
「はい、じゃあ進むよー」
風雅がそう言うことで、皆進み始めた。
少しした頃だろうか、同じ魔獣が彼らの前に立ちはだかった。
「里香」
風雅が言った時には、里香は既に風雅の手にグレネードを手渡していた。
「【絶対な等式:座標】」
敵に接近した後に、風雅は詠唱する。
先程と同じように、魔獣とグレネードだけが、その空間にあった。
「【統合な結合】」
里香の詠唱により、爆発。
あとは、心臓のようなコアに攻撃するだけ。そのはずだった。
「ん?」
魔獣は、爆発する前にグレネードを蹴った。
魔獣と風雅たちとの間で、ただ爆発するグレネード。
先程と同じように、当たるはずだったグレネードは、ただの演出と化していた。
違和感の後に、風雅は口を開く。
「さっきの爆発を見てた訳でもないのに、あんな風に回避するー?
いや、しないねー。魔獣にそんな知性ないと思うしー。
そうなると……」
風雅は少し口角をあげて言った。
「ダンジョン内の魔獣は、他の魔獣が受けた攻撃を学習する。
あってるかな?」




