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救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第六章 ランドラ編

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第四十話 『神級ダンジョン ランドラ』

 神級。

 それはこの世界で、最大レベルの強さを持つものにしかつけられない称号。

 人間であれば、その称号を持つ者が生きている者で五人。

 それに対し、ダンジョンは攻略されない限り死なない。日々増え続ける。神級ダンジョンは現在十一。

 その中の一つがこのランドラである。


 神級ダンジョン、ランドラ。

 古くからあるダンジョンで、攻略を目指した冒険者も多い。

 だが、このダンジョンがあるように、攻略に成功した冒険者は存在しない。

 それどころか、ダンジョン内部の情報もかなり少ない。


 「このダンジョンはさー。普通の洞穴的なダンジョンじゃなくて、どんどん下に下っていく、要は迷宮的なダンジョンなんだよねー。

  下に下っていけば行くほど、敵が強くなってく。

  じゃあ、行くよー」


 風雅の言葉によって、皆歩き始めた。


 「なにこれ」


 悠斗は驚く。

 何故かダンジョン内が光っていた。


 「LEDライトみたいな青い光。

  アンリスさん、琴音さん、松明なしでいいよー。

  なんか雰囲気あるねー。

  流石は神級ダンジョンなわけだ」


 「おい風雅、なんかのヒントになるかもしれないんだぞ?

  観察とかしなくてもいいのか?」


 歩き続ける風雅を悠斗は引き止める。


 「この世界じゃ、あらゆる事象が魔法だからで理由がつく。

  いちいちそんなことを考えてちゃキリがないよー」


 だが、風雅はそう言ってまた歩き始めた。

 元の世界で理解不能なことでも、魔法はそれを納得させる。

 悠斗は改めて、それを理解した。


 「おっ、敵だねー」


 風雅が立ち止まる。

 進行方向の先の方に、何かがいた。


 「初めて見る魔獣だ。

  みんな下がっといてねー」


 風雅が言うように、その場にいる誰もが初めて見る魔獣だった。

 人型の魔獣。

 顔に大きな目が一つ。皮膚は動物の皮がツギハギになっているような見た目をしていた。

 錆びた剣を持ち、まるで、彼らに剣士を思わせる。


 「おい風雅!一人でいけんのか?」


 「悠斗、あのさ?

  てめぇがどうこう言える強さ持ってんのか?

  風雅は神級だぞ?最強なんだ。

  てめぇごときの助けなんざなくとも勝てるだろうよ」


 一人で魔獣に向かっていく風雅に悠斗は言うが、青砥がそれに対し、強くものを言う。


 「まー、二人とも落ち着きなよー。

  すぐ終わるからさー」


 風雅はアミキシファから貰った大鎌、暗業の三日月(アグリラス)を構える。


 「【絶対な等式(パル・ドレア)代入アッド】」


 それを詠唱すると、風雅はまるで風の如きスピードで魔獣に攻撃をしていく。

 魔道具、暗業の三日月(アグリラス)

 その効力は、その大鎌で斬った部分を麻痺させるもの。


 魔獣の動きはどんどん鈍くなっていく。

 だが、それは魔獣を倒す決定打にはならないようで、風雅は一旦魔獣と距離をとった。


 「んー。結構硬いねー。

  里香、あれ使おー」


 「もう使うの?」


 「流石に神級ダンジョンだからねー。

  ストックは結構あるでしょー?」


 「はい」と里香は風雅に何かを手渡した。

 風雅はそれを持って魔獣に近づく。


 「【絶対な等式(パル・ドレア)座標コンパス】」


 手で触れられる程、魔獣に近づき、風雅は詠唱する。

 次の瞬間には、風雅は里香の傍に立っていた。

 元々風雅がいた場所、そこに残されたのは、里香に渡されたあるものだった。


 「【統合な結合(アル・イーデム)】」


 里香の詠唱。

 これまた次の瞬間。それが爆発した。

 里香が風雅に渡し、魔獣の近くに残されたそれが、大きな音と共に爆発をした。

 悠斗、青砥、アンリス、琴音の四人はそれとアラムクラックのあるものを重ねた。

 あるもの、それはグレネードである。

 この世界で作れるはずのないそれが、そこにあったのだ。


 そのグレネードによって、魔獣はダメージを受けた。

 死にはしなかった。が、皮膚がただれ、体の中心辺りにある心臓のような部分が剥き出しになる。


 「あれはコアかな?」


 風雅はそう言って、魔獣に向かって一気に加速し、その部分を突き刺した。


 魔獣はまるで、電源を切ったように、急に活動を停止した。

 そのままその場に崩れ落ち、崩壊が始まった。


 「倒したっぽいねー」


 風雅はため息をついて皆がいる方に戻った。


 「風雅、あれって」


 「もしかしなくてもグレネードだよねー!!」


 おそろおそろ聞く悠斗に目を輝かせながら聞く琴音。

 それに対し、風雅は「そうだよー」と軽くかえす。


 「この世界で、グレネードなんて作れるのか?」


 「普通であれば、不可能。だけど、里香の魔法を使えば話は別なんだよねー」


 風雅は里香に説明を促す。


 「根本的に、元の世界のものと、私が作ったものとじゃ別物。

  なんせ、材料が違うから。魔獣の効力がついている部位を使うの。

  爆発性のある部位と発熱性のある部位。それをね」


 「どうやって?」


 「私の魔法は、ものとものとを結合する魔法。 

  爆発を抑制しないような容器の中で、さっき言った二つの部位を結合させることで、擬似的にグレネードのような爆発を生み出せるの」


 「それは、凄い魔法だ」


 悠斗は魔法に感動をした。

 いや、魔法だけでなく、魔獣の部位を使うという発想にもだ。


 「はい、じゃあ進むよー」


 風雅がそう言うことで、皆進み始めた。


 少しした頃だろうか、同じ魔獣が彼らの前に立ちはだかった。


 「里香」


 風雅が言った時には、里香は既に風雅の手にグレネードを手渡していた。


 「【絶対な等式(パル・ドレア)座標コンパス】」


 敵に接近した後に、風雅は詠唱する。

 先程と同じように、魔獣とグレネードだけが、その空間にあった。


  「【統合な結合(アル・イーデム)】」


 里香の詠唱により、爆発。

 あとは、心臓のようなコアに攻撃するだけ。そのはずだった。


 「ん?」


 魔獣は、爆発する前にグレネードを蹴った。

 魔獣と風雅たちとの間で、ただ爆発するグレネード。

 先程と同じように、当たるはずだったグレネードは、ただの演出と化していた。


 違和感の後に、風雅は口を開く。


 「さっきの爆発を見てた訳でもないのに、あんな風に回避するー?

  いや、しないねー。魔獣にそんな知性ないと思うしー。

  そうなると……」


 風雅は少し口角をあげて言った。


 「ダンジョン内の魔獣は、他の魔獣が受けた攻撃を学習する。

  あってるかな?」

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