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救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第一章 出荷編

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第四話 『魔力適性診断』

 色白な肌。白髪の長い髪。

 像では布一枚の姿だったが、今は薄手のドレスのような衣をまとっている。露出は控えめなのに、どこか目を引く。清楚で、穏やかで。それでいて、目を離せなくなる美しさだった。


 これは……正直に言おう。

 かなり、可愛い。


 そう思った瞬間、自分でも驚くほどの圧がのしかかってきた。

 喜びや高揚を、一瞬で押し潰すほどの威圧感。像の前で感じたものとは比べものにならない。


 呼吸が浅くなる。

 胸が締め付けられ、空気を吸っているはずなのに、うまく肺に入ってこない。


 「あなたは……多分」


 そう切り出した俺の言葉を遮るように、彼女は口を開いた。


 「ああ。お前が思っている通りだよ。アミキシファ。それが私だ」


 やはり、そうか。

 女神なのか、それともそれに類する存在なのかは分からない。だが、目の前の存在が危険だということだけは、理屈抜きで理解できた。


 「お前も魔力適性診断を受けに来たのだろう?」


 「ええと……はい。そうです」


 プレッシャーを感じる。声が裏返らなかっただけ、まだましだ。


 「ならば、すぐに済ませてしまおう」


 彼女は淡々と告げ、言葉を紡いだ。


 「【我儘な世界(シファー・ワールド)(ロウ)】」


 その瞬間だった。


 「......っ!」


 声にならない声が、喉から漏れた。


 理由は明確だった。

 ()()が、俺を襲ったのだ。


 熱。冷気。痛み。快楽。苦味。甘味。

 五感で捉えられるありとあらゆる刺激が、一斉に流れ込んでくる。


 一瞬だった。

 おそらく、一秒にも満たない。


 だが、俺の精神には明らかに過剰だった。

 足から力が抜け、その場に崩れ落ちる。


 「い、今のは……?」


 息を整えながら、ようやく声を絞り出す。


 「言っただろう?魔力適性診断だ」


 「……あれが、ですか?」


 正直、理解が追いつかない。

 ただ辛い感覚を味わっただけだ。


 「私は今、魔法を使った。【我儘な世界(シファー・ワールド)】。

  人間の精神を、私が創り出した世界へと送り込む魔法だ」


 「それと、診断がどう繋がるんですか」


 「焦るな」


 アミキシファは、楽しそうに口角を上げた。


 「お前は今、私の世界にいる。精神だけ、だがな。

  像の前で十秒間、目を閉じただろう?それが、こちらへ来るための引き金だ」


 そう言われて、思い出す。


 「この世界では、私が絶対。私の思うがままにこの世界を操れる。

  そんな世界で私はお前に様々な感覚を与えた。

  その受け取り方......特に、何を強く感じたか。それで魔力の性質が分かる」


 「なる......ほど......?」


 理屈はよく分からないが、魔法とはそういうものなのだろう。

 少なくとも、元の世界の常識で測れる代物ではない。


 「それで……俺の魔力は?」


 「ああ。()だ」


 「氷……」


 氷。

 水の固体形。冷たく、硬く、形を持つ。


 「可もなく不可もなく。扱いやすい部類だな」


 「そうなんですか?」


 「炎が一番扱いやすい。日常でも目にするし、危険性も想像しやすい。

  水や雷は難しい。目にしなかったり、危険性が容易に想像できないからな。氷は、その中間だ」


 淡々とした評価だったが、不思議と安心した。


 「これで診断は終わりだ」


 意外なほど、あっさりしている。


 「ああ、そうだ。一つ聞こう」


 「は、はい」


 「お前は、どの像からここへ来た?」


 「えっと……レギペギド、という神父がいる場所です」


 その名を聞いた瞬間、アミキシファの表情がわずかに曇った。


 「……あそこか。申し訳ないことをしたな」


 「申し訳ない……?」


 意味を問う前に、彼女は続けた。


 「もし生きていれば、私に会いに来い。

  この世界ではない。現実(リアル)の私に、だ」


 「……?」


 「生きていれば、だ」


 意味深な言葉。

 だが、それ以上を問う時間は与えられなかった。


 アミキシファは俺に近づき、人差し指を額に当てる。


 「では、会えたら会おう。我々と同じ、()()()よ」


 微笑みと共に、視界が反転した。



――――



 次の瞬間、俺は再び像の前に立っていた。

 というより、意識が戻ったという方が正しいのか?


 「どうでしたかな、十三番」


 隣には、神父が立っている。


 「氷属性……だそうです」


 「なるほど」


 そう言って、紙切れを一枚渡された。


 「これは?」


 「魔法使い(ウィザード)の魔法はかなり開拓されているので、こうやってリスト化できるのですよ。それは氷魔法の一覧表です。部屋で目を通してください」


 その後、俺は元の部屋へ戻された。


 三十分ほどかけて、紙の内容を読む。


 大まかな内容は魔法の使い方、魔法の階級、魔法名の三つだ。


 まず、魔法を使うには段階を踏む必要があるらしい。魔法名を詠唱して、その魔法を使うという意思を念じて、ようやく魔法が使える。電化製品で例えるとわかりやすいだろうか。電源が詠唱、スタートのスイッチが意思、そして、電化製品が使われる時間が魔法を使用している時間だ。


 そして、魔法には階級があるらしい。初級、中級、上級、神級。もちろん階級が高いほど扱いが難しい。神級の欄は空欄になっているため、それ以外を自分なりにまとめる。


 初級【氷石(ラッジ・グラキエス)

 氷を石くらいの大きさにして狙った方向に放つ魔法。


 中級【氷結槍(ルピナス・グラキエス)

 氷を先端を尖らせた氷柱状の形にしてから、回転をかけて狙った方向に放つ魔法。


 上級【氷結精製(アシッド・グラキエス)

 より複雑化した形の氷を精製する魔法。武器にしたり、放つ方向を多少変えたり、その応用力は計り知れない。


 この基本の魔法以外にも、どうやら、魔法名の後に魔法名を付け足すことで、元の魔法を少し変えて、魔法の性能や性質を変えたり、魔法を新たに作り出すことが可能らしい。おそらく、アミキシファがやっていたものだろう。彼女の【我儘な世界(シファー・ワールド)】という魔法に【我儘な世界(シファー・ワールド)(ロウ)】と【ロウ】という部分を付け足していた。


 そして、上級以上の魔法は、その応用力からか、自ら魔法を作る工程が必要らしい。自分で魔法を考えて、魔法名を考えて......それを作るのはおそらく大変だろう。

 けれど、妄想していた力が、現実になるかもしれない。

 そんな期待が少しはある。

 だが、今は浮かれている場合じゃない。


 今は努力のフェーズだ。

 初級の魔法を地道にコツコツと。

 今までの人生でやってきたように、普通の人であればいらないかもしれない、そんな努力を。



――――



 夕食は、硬いパンと牛乳だけだった。

 どちらとも味が薄く、本来であれば楽しい夕食というものが、パンで乾いた口を牛乳で潤すという作業のように感じられた。

 文句はあるが、食えるだけマシだ。


 夜。

 時計や外の明るさで時間を判断できない環境ではあるが、みんな眠くなって寝始めたため、体内時計的には夜。

 そんな時間。

 俺は悠斗と、真剣に話し合った。


 修学旅行で話すような内容ではない。


 レギペギド。

 俺たちはどうにも彼を信用できなかった。


 「やっぱり、英雄ってのはおかしいだろ?」


 「だけど、今は情報が少なすぎる」


 「だよな......そうときたら」


 俺たちは顔を見合わせる。


 「「レギペギドが油断した隙に、情報を引き出す」」


 レギぺギド。

 俺たちが何も持ってないと思っているのか?

 こんなガキだからって油断しているんじゃないか?

 制服のポケットには、文明の利器スマートフォンがあるっていうのに。

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