表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第五章 アラムクラック編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/43

第三十七話 『乗り越える』

 「【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】」


 悠斗は詠唱をし、その落下中の身体を動かし、地面にそのまま降り立った。


 「アンリスさん、まじで助かりました!」


 「間に合ってよかったです!」


 二人は奥に立つ琴音に警戒をした。


 「【完全な再生(パーレス・キューマ)】。

  ギリギリセーフ。

  ていうか、悠ちゃん倒そうとすると助けが入るんだけど......」


 落下してきた琴音は、落下死の判定よりも前に詠唱をすることで、死を免れた。

 それを横目に、悠斗とアンリスは会話をしていた。


 「悠ちゃんにアンちゃん......。

  流石に最終戦じゃない?

  手加減はしないよ?」


 「もちろんこちらもその気です!」


 悠斗がまたも剣を握り、【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】で身体を動かし、琴音へと攻撃を始めた。

 が、それとは対照的にアンリスはビルディングへと入っていった。


 「どーゆー作戦なわけ?」


 「敵に教えるわけありませんよね!」


 悠斗が剣で攻撃をするのに対し、琴音は回避をしながら殴り蹴りで応戦していた。


 「まさか、さっきの攻撃。

  グレネード十個使ったんですか?」


 「いや、ちょっと違うかな」


 収納に入れることができるアイテムは十個まで。

 そして、現在琴音が収納から何も出してこないことから悠斗はそう言ったわけである。


 「つーか琴音さん。

  あの戦略、身のこなし......異世界に来て戦闘をたくさんしてきたわけでもないのに、それらが身についてる。

  アラムクラックを相当やりこんでたみたいですね。

  プレイヤーネーム。教えてくれません?」


 戦闘中に会話、悠斗は剣を振りながら琴音に問う。

 本来であればそんなことをしている暇などない。

 だが、悠斗にはしなければならない理由がある。


 「ミリミリクリー。

  わかる?」


 「やっぱそうかよ。

  トップランカー!」


 トップランカー。

 アラムクラックのゲーム戦績における総合的な順位で上位に入っているプレイヤーのことを指す。

 ミリミリクリー。

 琴音のプレイヤーネームである。

 彼女がアラムクラックで四位の戦績を持つ人であると悠斗は理解した。


 よりにもよって、四位のミリミリクリーかよ。

 速攻で戦陣に攻撃を仕掛ける戦闘狂。

 彼女のプレイは見てきた。

 憧れでもあったから。

 だからこそ......ここは!


 悠斗は覚悟を決める。


 琴音が大きく振った拳。

 身体を動かせば避けれたであろう一撃。

 悠斗はそれを、自ら。

 自ら体を動かし、当たりにいった。


 『プレイヤーがギフトを獲得しました』


 顔面に直撃し、悠斗は吹っ飛ばされる。

 それは、ゲームアナウンスからでも明白だった。

 だがそれは、彼自身が望んだことだった。


 「アンリスさん!!」


 「【平等な欠如(フェア・ドロップ)】!!」


 アンリスは詠唱をした。


 数分前、悠斗とアンリスの会話の内容。


 「私は先程。私の魔法を焼失させ、対象の魔法を焼失させる魔法を手に入れました」


 それを聞いた悠斗はすぐに勝利への道を構築した。


 「アンリスさんは一旦、俺と琴音さんが戦う様子を見ていてください。

  そして、俺が合図をしたら、その魔法で琴音さんが持っている身体強化魔法を焼失させてください」


 「彼女、そんな魔法を......。

  それで、合図とは?」


 「俺が、自ら琴音さんの攻撃に当たった時です」


 その会話が今、実行された。

 戦闘中に会話をしたのは、悠斗が油断をしていると誤認させるため。

 だからこそ、琴音は今、悠斗に向かって走り出している。

 吹っ飛ばされている悠斗に、最後の一撃を入れるために。


 だが。


 「うわっ!!」


 琴音は転んだ。

 アンリスの回復魔法を焼失させた代わりに、琴音の身体強化魔法を焼失させた。

 その影響だ。

 彼女は今までのスピードを失い、転んだ。


 悠斗の勝利までのピースがそろった。

 彼は、ほぼ勝ちを確信していた。

 あれを使えば、あれを使えば勝てると。


 「まっ!まじか!!」


 悠斗が狙っていた最後のピース。

 それはHPハードケースを使うことだった。

 だが、現在の彼のHPは11%。

 惜しくも、使用条件の10%未満を満たしていなかった。


 やばいやばい!!

 これ使わないと全部パーだってのに!!

 どうするんだ。

 あと少し、少しでもHPが減れば......


 悠斗はどんどん青ざめていく。

 ここまでして、敗北する。

 そのシナリオが、容易に脳内に叩き込まれていた。


 「悠斗くん!!大丈夫ですか!!」


 「アンリスさん......」


 「私に!まだ!できることはありますか!!」


 できること。

 アンリスの手を借りる。

 HPをどうにかして減らす。

 琴音は最後の一撃を、とその限りなく減速されたスピードで近づいてきている。


 悠斗は頭をフルで回す。

 今までの戦闘で、解決できるヒントがあるはずだと。

 そして思い出す。青砥の言葉。

 「邪魔をしたら殺す。

  味方にもダメージが入るんだろ。

  俺一人で殺らせろ」

 味方にもダメージが入る。

 その使用を、悠斗は思い出した。


 「アンリスさん!

  俺に向かって矢を放ってくれ!!」


 「な、なにを急に!?」


 「いいから、早く!!」


 戸惑いながらも、「責任取りませんよ!」と言いながら、アンリスは悠斗に向かって矢を放った。

 一番軽傷で済み、かつHPが10%のなるような場所。

 悠斗は右手で矢を受け止めた。


 右手からは血が滴る。

 だが、悠斗のHPは4%、条件は揃った。


 「まさか!!」


 スピードを上げようとする琴音だったが、身体強化魔法を焼失した彼女の動きは、悠斗にとってスローモーションに見えるほどまで落ちていた。


 「HPハードケース。使用完了!!


  【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)】」


 悠斗は身体を上空へと動かした。


 HPハードケース。HPを50%まで回復し、一時的にステータスを向上させる。

 その真価は、ステータスの向上である。


 「今ならできる。

  【巧妙な偽物(アレスト・ダウト)】」


 その魔法によって、剣を複製する。

 何本も、だ。

 本来であれば、一本でもキツイ魔法。

 だが、HPハードケースによって向上したMPがそれを可能とさせた。


 「見てたんだ。ちゃんと、この目で。

  あいつが俺を救ってくれたあの瞬間を。

  だから、あいつを救うために、あいつと同じように」


 悠斗は手を大きく上げた。


 「【飛翔な運動(ダグマ・ムーヴ)五月雨サミダレ】」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ