第三十五話 『ギフトを獲得しました』
琴音は青砥の口を左手で覆って、右手で拳を握る。
口を覆ったのは、青砥に詠唱をさせない為である。
詠唱をさせさえしなければ、青砥の魔法を使うことが出来ないからだ。
一方的に、攻撃を行うため。
琴音の拳は青砥の腹へと撃ち込まれる。
ゆっくりと、一方的に。
連打だとダメージが少ないために、一撃一撃を重くするために。
右手を構え直し、何度も撃ち込む。
青砥も抵抗こそするが、身体が強化された琴音には為す術がなかった。
青砥のHPがどんどんと減っていく。
拳が撃ち込まれた腹は出血し、凹んでいき――琴音が見ても青砥のHPが残りわずかであることは明白だった。
「最後の一撃だね。
じゃあね」
琴音は最後の一撃を撃ち込んだ。
その時だった。
ドゴォン。
その音ともに、琴音は吹き飛ばされた。
その音。爆発音である。
「な、なにが……」
『プレイヤーが死亡しました』
ゲームアナウンスて、琴音は理解した。
「自爆……ね」
青砥には詠唱をさせなかった。
が、それ以前に既に詠唱を済ませていたら?
琴音と会うよりも前に、青砥は既に、自爆用に体内に爆弾を仕組んでいた。
それが今、起動した。
「かっこいいじゃん!
青ちゃんには五十点あげちゃう!」
ははは、と琴音は笑う。
「【完全な再生】
まあ、自爆したところで、あたしが全回復するってことを考慮してたら良かったかな」
神級回復魔法。
それを詠唱したことによって、青砥が自爆でつけた傷は完治した。
「まあ、最後の攻撃はなかなか楽しいものだったよ!」
――――
悠斗は青砥の言葉によって、なるべく琴音と青砥の邪魔にならないように【飛翔な運動】で自分の身体を動かしていた。
「青砥のヤツ、大丈夫なのか?
でも、戦いに行くと、青砥にボロクソに言われるし。
何より、あの銃の魔法。
青砥が最大限にその魔法を使うには、俺がいると邪魔......ってことだよな?」
そんなことを言いながらも、悠斗は体を動かし、離れた場所にある住宅街にやってきた。
琴音からダメージを回復するために、悠斗は収納から回復アイテムを取り出し、使用した。
「HPハードケース......」
回復アイテムとは別にそれを持っていた悠斗。
効果はHPが10%未満の時に、HPを50%まで回復し、一時的にステータスを向上させる。
どちらかというと、戦闘時に使うようなアイテムだ。
「地味にレアなんだよなーコイツ。
使わないから今使いたい気もするんだけど......またの機会に取っておきたいかなー」
悠斗はそう言って、HPハードケースを収納した。
現在の悠斗の収納には、HPハードケースのみしか入っていない。
剣もアイテムも、ほぼすべてを消費してしまっていた。
そんな悠斗は物資を取りに行くべく、住宅街を歩き始めた。
――――
色々な形の家々。
チャイムも鳴らさずに、鍵の掛かっていない扉を開け、土足で探索をする。
それを何度も何度も繰り返した。
その結果。
悠斗の物資はかなり潤沢なものになった。
HP回復アイテムが二つ。
S回復アイテムが一つ。
MP回復アイテムが二つ。
剣が三本。
グレネードが一つ。
HPハードケースが一つ。
収納は最大で十個までのアイテムを収納できるため、これは収納の最大値であった。
また、アイテムを物色していく中で、HPとMPを全回復、Sを三枚装備している状態になっていた。
Sで三回まで攻撃に耐えることができる点は、かなり強いといえるだろう。
そして今。
「【飛翔な運動】!」
悠斗は三本の剣を使い、猿型の魔獣と戦ってた。
住宅街にも普通に魔獣は出現するそうで、悠斗の現在のSPは90。
おそらく、この魔獣を倒せばギフトを獲得できるという状態だった。
『プレイヤーが死亡しました』
「おいおいまじかよ......」
そのゲームアナウンスが流れた。
この時点でもゲームが終了していないという事実。
これは、青砥が琴音に敗北し、死亡したという状況を簡単に悠斗に伝えた。
「まあ、とりあえずは......」
「ウギャア!!」
一本の剣が、魔獣の頭部を貫いた。
『プレイヤーがギフトを獲得しました』
「これで......」
悠斗はその魔獣を倒したことにより10SPを獲得した。
合計100SP。
悠斗はギフトを獲得したのである。
悠斗の目の前に、選択画面が現れた。
「さあ、何を選ぶか......」
即時に怪我を完治回復+回復アイテムの獲得。
戦闘向けの魔法を獲得。
サポート、回復向けの魔法を獲得。
チーム内の仲間の復活。
ギフトの専用アイテム、天界の塊を一つ獲得。
この中の一つを選ばなければならない。
悠斗にとって、魔法の獲得と仲間の復活以外は論外だった。
確実に、今いらないギフトだったからだ。
残るは魔法の獲得と仲間の復活。
【飛翔な運動】がどちらかというとサポート向けの魔法のためサポート、回復向けの魔法を獲得も除外。
戦闘向けの魔法を獲得かチーム内の仲間の復活で悠斗は熟考する。
戦闘向けの魔法を獲得はなくてはならないものだ。だが、ハズレの魔法を引いたときは一気に形勢が不利になる。
チーム内の仲間の復活は青砥を復活させて、確実な戦力を得られる。だが、魔法が割れており、ましてや敗北している仲間を復活させたどころでどうにかなるものなのか。
「う~ん......」
どっちだ、どっちだ。
想像しては、一旦止めを繰り返し、時間だけが過ぎていく。
「いや、こうするしかないか」
かなりの時間を思考に費やし、悠斗が出した結論は、戦闘向けの魔法を獲得のギフトである。
彼にとって、これは一か八かの賭けのようなものだった。
ギフトを選択し、選択画面が切り替わる。
『選択したギフトを受け取りました。
【巧妙な偽物】
対象を複製することができる魔法』
「おいおいまじかよ」
それを読み上げた悠斗は心底驚いた。
「コピー魔法かよ......」




