第三十話 『ゲームをしよう』
「まあまあ、そこに座りなさいな。
同郷ということで、ここはひとつ、あたしにおごらせて。
好きなの頼んでいいよー!」
「いえ、大丈夫です。
私たちは、あなたに直接話したいことがあるのでここまで来たのです」
「お堅い話は嫌いだなー」
アンリスが話を始めようとするが、琴音はそれを拒んだ。
「自己紹介してよ、まずはそれしないと!」
「めんどくせーやつだなー」
琴音が話を始めよとすると、それをさらに青砥が拒もうとする。
「はい!そこの反抗期の少年!
自己紹介、どうぞ!!」
「ちっ。
半田青砥。日本じゃ高校二年生だった」
「はいありがと~!」
ぱちぱちと拍手をする琴音は次に悠斗に自己紹介を求めた。
「俺は上仮屋悠斗。
青砥と同じ、高二です」
「はいおっけ~!」
また拍手をし、最後はアンリスの番になった。
「あなた、日本人じゃないよね。
そんな感じがする」
「はあ、その日本人というのが何なのかは知りませんが、私はアリス・アンリスと申します。
よろしくお願いします」
「いいね~!」
最後まで一人一人に拍手を送り、琴音は口を開けた。
「で、青ちゃんと悠ちゃん、アンちゃんはどうして私に会いに来たの?
聞いたげるから、しっかりと話してね!」
どうやら、自己紹介をして、話をする気になってくれたらしい。
と、三人は安堵する。
三人の中で一番話が上手いアンリスが琴音にできるだけ簡潔に話した。
「なるほどね~。
とりあえず、三人がいるとこの軍が困ってて、あたしが行けば助かるってことでいいんだよね?」
「はい、もちろん、ただでとは言いません。
それ相応の代価を支払うつもりであります。
いかがでしょうか」
「代価とかそういう難しい話はなしでいいんだけど。
いいよ~。協力してあげる」
「「本当ですか!」」
思っていた以上にすぐにOKをもらったことに驚き、悠斗とアンリスは大きく声を上げる。
それを見て青砥は「うるせーよ」と舌打ちをした。
「この世界に来て最初はきつかったんだけどさ~。
ぶっちゃけさ~。今はイージーゲームすぎるんだよね。
魔法使えば大金手に入るし、こうやっておいしいものたくさん食べれるし。
満足したら日本に戻る方法探そうと思ってただけだからさ、正直それ以外であたしが何しようと別にいいわけよ」
三人が感じてきた苦労を、琴音は経験したことがない様子だった。
それは、力を持つものと持たない者との圧倒的な違いで、その違いがここにあるということを三人は痛感した。
「でもさ~、すぐにOK出すのもつまんないよね~」
雲行きが怪しくなったことを三人は感じた。
「そうだ、ゲーム!ゲームしよ!!」
「ゲーム?ですか。
それは賭け事を行うということですか?」
「違う違う。アンちゃんは知らないと思うけどさ、そのままの意味。
ゲーム。それをやろう!
確か、三人のとこのお偉いさんの魔法が精神世界?的なやつなんだよね?
その人の魔法使えばさ、ゲームできると思うんだ」
目をキラキラと輝かせながら、琴音はそう言った。
「精神世界でゲーム......琴音さん、もしかしてですけど。
あなたがやりたいのって、VRゲーム的なことですか?」
「ピンポーン!悠ちゃん大正解!
あたしはさ、本当は回復魔法とかじゃなくて、バチバチに戦闘向きな魔法が欲しかったんだよね~。
だからさ、精神世界ならそういうことできるんじゃないかって思ったんだよね~」
「まあさ」と続ける琴音の声色が変わった。
「あたしにとっては三人のところの軍がどうなろうと、それこそ世界がどうなろうと知ったこっちゃないんだよ。
あたしが望んでいるのは、あたしが楽しめることただそれだけ。
だから、あたしを全力で楽しませてね。
それができたら、協力してあげる」
ワクワクと重さを両方とも含めたその言葉は三人に突き刺さった。
「いいですよ、やりましょう。ゲームを」
「いいね悠ちゃん。
乗ってるね」
「どのみち、俺らにはその選択肢しか残ってないんですよ。
アンリスさん、青砥、いいよね」
「もちろんです」「異議なし」と二人が答えたことによって、ここにいる四人で琴音を仲間に引き入れるためのゲームをすることが決まった。
――――
四人はシファ―軍基地に戻り、アミキシファがいる部屋へと訪れた。
「ほう、お前が。神級の」
「そう!琴音ちゃんです!
よろしくお願いします!」
「ああ、こちらこそだ」
「で、お前たちはどうしてここに」と問うアミキシファにアンリスがことの経緯を説明し、琴音がしたいことを伝えた。
「なるほどな。おそらく、可能だ。
琴音、まずお前に精神世界の部分的な権利を渡す。
それでルールでもなんでも設定しろ。
考えたことがそのまま世界に映し出されるはずだ。
ただ、お前がその権利を乱用して、そのゲームの有利性が失われたり、そもそも三人にゲーム以外の攻撃をした場合は権利を剥奪し、お前を敵とみなすが、いいか?」
「そのへんは安心してください。
あたしは楽しめればいいんで、あたしだけにチートもりもりしたりはしませんよ」
「なら、いいだろう」
アミキシファは深呼吸をして唱えた。
「【我儘な世界】」
その瞬間、四人の意識はアミキシファが創り出した精神世界へと送られた。
――――
「お!ここが精神世界ってことなんかな~!」
琴音はそう言って辺りを見渡す。
見渡すといっても、周囲にあるのは雲と霧のみだった。
「そう、ここが精神世界」
そんな中、アミキシファが現れた。
「お偉いさんも来たんだ」
「いいや、私は記憶をペーストしただけの分身に過ぎない。
要は、精神世界でのみ生きる案内役のようなものだよ」
「よくわからんけどそうなんだ~」
琴音は適当に返す。
といっても、ゲームのことに意識が行き過ぎてそれどころではないような身振りをしていた。
「では、【我儘な世界:与】。
これで、部分的な権限がお前に渡ったはずだ」
「ありがと~!
今度スイーツごちそうさせて!!」
琴音は子供のようにはしゃぎ、ゲームのイメージを深く考え始めた。
「う~ん......」
琴音は黙り込み、ただゲームのことを考える。
それは、着実に精神世界に反映されていく。
まずは地面、建物、既にそこには、ゲームのステージがあった。
「できた!!」
三人は辺りの見渡す。
信号、ビル、エトセトラ......それはまるで、日本の都市、東京を模しているようだった。
そして、悠斗は気づく。
一オタクとして。
「アラムクラックか......」
「知ってんのね。
そう、これは殺し合いのゲーム!!
あたしを楽しませて頂戴ね!」




