第二十九話 『現状』
「徹、ねー。
確かに、二人は仲いいもんねー。やっぱり心配だよねー」
「生きてんのか、どうなんだ」
「さあねー。俺にもわかんないよー」
「それは、どういうことだ......!」
少なからず、悠斗のその発言には、怒りがこもっていた。
「わかんないんだってー。言葉通り。
まだ発見できてないんだよー」
「発見、できてないだって?
ふざけんな、さっきの役職の変更をさせろ。
俺も救助にあたる」
「それはダメだねー。
そんなことされたら、俺たちの詰みが待ってる」
それを聞いても、悠斗は「はいわかった」と応えるつもりはなかった。
「関係ねーよ。親友助けねーヤツがどこにいるんだよ」
「じゃあさ、君が救助しに行ったところで、徹は確実に助かるのー?」
その風雅の言葉で悠斗は思い出した。
レギぺギド、彼の教会で徹はすでに四肢が切断されていたことを。
「風雅、四肢が切断されてたら、回復魔法で治せるのか?」
「ふーん。徹、四肢が切断されたのね。
まー、言ってしまえば、治せない」
「うそだ......」
「ただし」
嘘だろ。そう反射的に言おうとした悠斗を風雅はさえぎった。
「神級魔法なら別だ。
死んでなければほぼ確実に治せる。回復魔法の神級はそう聞いてる。
で、なんだけどさー。
悠斗に言ってきてもらうのはその回復魔法の神級が使える人のところなんだよねー」
「これは、悠斗にとって。親友の徹を助ける事に変わりないんじゃないかな」と風雅は微笑む。
「ダンジョンへの救出には、俺と里香がつく。
だから、安心をしてくれ。
できる限りは尽くす。
俺も、徹が生きていると思ってたいからねー」
悠斗の決意はここで固まった。
直接的に徹を助けるのではなく、関節的に、徹を治すために、行動をする。
その目標が、決意が、そこに宿っていた。
「神級の人のところには、悠斗と半田とあと一人......」
その時だった。
部屋の扉が開いた。
「私です」
「アンリスさん」
扉を開けて、部屋に入ってきたのはアンリスだった。
神級魔法を使う人間の元へ向かうのは、悠斗、青砥、アンリスの三名だということが決定した。
「詳しい話をしていこうか、皆、しっかりと聞いてねー」
風雅はそう始め、概要を話していった。
第一部隊。
その部隊に悠斗とアンリスを加え、第一部隊とする。
隊長を山口風雅、副隊長を上仮屋悠斗とし、これらの作戦を実行する。
風雅と里香はダンジョンへ向かい、行方不明となった人の救出と、そのダンジョンの攻略実績を狙う。
本来であれば、最低でも三人の冒険者パーティーを組まなければダンジョン攻略は許可されないが、神級の魔法を使える風雅がいるため、その枠組みから外れ、攻略が許可された。
悠斗、青砥、アンリスの三名は神級の回復魔法を使える人を仲間に勧誘し、シファー軍の戦略増加と共に、ダンジョン内で負傷した者の回復を狙う。
これらが今彼らに課せられた目標であった。
「とりあえず、こんなとこで大丈夫かなー」
ふう、と一仕事終えたとため息をつく風雅。
「じゃあ、解散だ。
またここに集合しよー。生きてたら、だけどね」
風雅がそう言ったことにより、第一部隊は二手に分かれた。
――――
悠斗、青砥、アンリスらは、神級回復魔法使いがいると知らされた、町はずれにある飲食店に到着した。
スイーツ店であり、物資が貴重なこの世界にとっては、かなりの金持ちか価値を知らない馬鹿かが来るような店だった。
悠斗と青砥、二人は異世界から来た者だ。
彼らにとって、この世界で初めての甘い食べ物のにおいは刺激的だった。
が、それ以上に、そもそもスイーツというものを知らなかったアンリスからしてみれば、この店は謎の恐ろしいものを提供している店と捉えることができた。
アンリスは無駄な緊張感を走らせるが、悠斗がそれを落ち着かせた。
そんなこんなで彼らはようやく店の中へと入ったのであった。
店の中は高級店というような感じではなく、どこからか溢れるオシャレさから、悠斗と青砥の目にはその店が現代のカフェのように映った。
「超うめぇ~!」
そんなオシャレさを壊すようにそう感動の声を上げる者がいた。
周りの目を気にせず、ただただパンケーキのようなスイーツをほおばっては声を上げていた。
ああいう人もいるんだな、と悠斗は不思議そうにその人を見ながらも、ポケットの中に入れておいた、神級回復魔法使いについてのメモ用紙を見る。
スイーツ専門店アグレシオにて、午後三時前後に、窓際の最も奥に座っている人物。
そのメモ用紙を見るに、その人はかなりの常連客のようだった。
そんな人が急に予定を変えるはずがあるまいと、その席に座っている人物を見る。
「マジでうまいわ~」
その席に座っている人は、先程と同様に、スイーツに感動して声を上げる人だった。
メモ用紙を見る前、あの人はないだろうなと勝手に思っていた悠斗にとってはかなりの衝撃だった。
「あの人、みたいですね......。
何というか、その......」
「アンリスさん、言いたいことはわかります。
俺はあの人が神級回復魔法使いに見えないというか」
「ですよね」
人の趣味を否定する気はない二人ではあるが、流石にその雰囲気や覇気から、その人が神級回復魔法使いであるとは考えられなかった。
「何やってんだよお前ら、交渉するんだろうが」
青砥はそんな二人にお構いなしで、その人が座っているテーブル席の反対側に無言で座る。
「あんたさ、神級回復魔法使い?」
「ん?そうらけど」
まだスイーツをほおばりながら、その人は答えた。
そこで、顔を上げたその人を見て、ようやく彼らは知った。
声色や雰囲気で分かっていた通り、女性ということも分かった。
のだが、悠斗と青砥はそれ以外の重要な事実に気づいた。
口と耳に開けてあるピアス。
それはこの異世界では見たことがないものと同時にあることを証明するものであった。
「あんた、日本人?」
「ん!そうそう、あたしは日本人!
そして、神級の回復魔法を使う美少女、日比野琴音ちゃんだぞ!!」
スイーツを食べ終わり、そう元気で大きな自己紹介を彼女、琴音はしたのだった。




