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救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第三章 奴隷コロシアム編

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第十七話 『同郷』

 日本から、来た?

 そう言ったのか?


 「おい、違う?

  結構嬉しいんだけどな、同郷がいてさ」


 「い、いや。え?

  日本から来たって……うそ、だろ?」


 「うん。俺は日本から召喚された。

  お前、違うの?」


 日本から召喚。

 俺と同じように。奴隷として。売ると高値がつくから。


 「俺は、日本から来た。

  グラデュウスっていうやつの教会で、俺は召喚された」


 「俺も、日本から来た。

  レギぺギドっていうやつの教会で、クラスごと召喚された」


 「あっ、クラスごと。俺も同じ」


 彼はそう軽く言った。


 「名前は?」


 「徹。君は?」


 「俺は空。よろしく。

  まあ、よろしくって言ってもさ……俺ら殺し合うんだけどな」


 言葉に重みがない。

 殺し合うと言っているのに、だ。


 「それでは、開始!!」


 「悪く思うなよ、敗北認めるなら今のうちだぜ!!」


 試合開始の宣言と共に、攻撃を仕掛けたのは空だった。


 「【暗雲轟雷(グラスト・フルグル)】!」


 何も無い空間に、まるで夜の、天気の悪い時のそらのような暗闇が生成された。

 そこからである。


 「うわあっ!」


 俺に向かって雷が、電撃が走ったのである。

 無理やりではあるが、身体をひねり、それを回避する。


 「初っ端からヤバいな……」


 雷魔法。初めて見た魔法だ。

 それに、コロシアムに来てからのまともな戦闘だ。

 肝が冷える。


 「徹、凄いじゃんか!

  今の技、俺の十八番(おはこ)だぜ?

  戦闘慣れしてんな」


 「よく言うよ。

  確実に一撃で殺しに来てるってのに。

  そっちこそ戦闘慣れしてるよ!」


 俺も仕掛けなければ!


 「【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】!」


 まずは二本。

 俺は氷柱を生成させ、空に向かって放った。


 「ははっ!氷魔法か!」


 楽しそうにそう笑う。

 そんな姿を見て、正気ではないと思う。

 だがそれは、この世界では利点なのだ。


 「【暗雲轟雷(グラスト・フルグル):直下(アドル)】!」


 空はそう詠唱した。

 上空に二箇所の暗雲が立ち込め、そこから二本の雷が降り注ぐ。

 その雷は見事に俺の【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】に直撃し、二本の氷柱を突き落とした。


 「調子いいね!」


 高笑いをして、空は俺に問う。


 「徹。なんでお前はこのコロシアムに参加したんだ?」


 軽くは無い。

 まともな会話だからか、少し声のトーンが落ちている。


 「優勝商品って言ったらわかるかな。

  あいつ、俺の親友なんだ」


 「へぇ〜。だから救出に?」


 「ああ、そうなんだ。だから」


 だから、頼む。


 「この試合。負けてくれないか?」


 「負ける?」


 「ああ、そうだ。俺は殺し合いをしたくない。

  だから頼む。俺を勝たせてくれ」


 人間と殺し合い。

 ましてや、日本から召喚された人間なんかとは、殺し合いをしたくはない。


 「ははっ。そりゃ無理なお願いだぜ」


 「なっ、なんで」


 「お前さ、徹。

 このコロシアムにちゃんとした目的で参加したのは自分だけなんだと勘違いしてやいないか?」


 勘違い。

 俺が悠斗を救うという目的があるように、空にも。


 「俺はこのコロシアムで優勝すれば、奴隷として解放されるんだ。

  そして、お前の親友とやらを売って、恋人を救う。

  恋人とのハッピーライフのためだ。

  譲れるわけないって、わかるよな?」


 恋人を救う。それが空の目的。

 俺と同じように、勝利は譲れない。


 「じゃあ、どうすれば」


 「決まってるじゃん?」


 ニヤリと笑って、空は言う。


 「殺し合う。それ以外に方法なんざないんだよ」


 レニアさんとアンリスさんの言葉。それが今現実となった。

 ここで俺は人を殺すかもしれない、という言葉。

 それをしなければならない。

 そんな状況に、なっているのだ。


 「お話はこれくらいにするぞ」


 空は剣を構える。


 「【暗雲轟雷(グラスト・フルグル)】!」


 今度は三本。雷が俺の方へと向かってきた。


 攻撃パターンを学習するんだ!

 今こそ、習得したものを……!


 「【氷石ラッジ・グラキエス】!」


 雷を回避しつつ、俺は十個の氷の塊を生成する。

 タイミングも場所も不規則に、それを発射する。


 「いい精度してんじゃねえかよ!」


 空はそれを華麗に避け、俺との距離を徐々に詰めていく。


 「【迅雷轟雷(ダティスト・フルグル): 剣意グラディウス】!」


 剣意グラディウス。それを聞くのは二度目だ。

 レニアさんが使っていた。魔法を剣に宿す魔法。

 そして、その階級は上級。


 「喰らえ!」


 剣は感電したかのように、バチバチと音をたてている。

 その剣を、思い切り。俺に向かって振りかぶる。


 「【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】!」


 三本同時生成。

 その剣に氷柱を叩き込み、方向をずらす。


 「おいおい、羨ましい魔法だぜ。

  雷は氷みたいに物理攻撃ができないからな」


 舌打ちをして、空は言う。


 「徹さ。お前、異世界(ここ)に来てからどれくらい経つんだ?」


 「多分三週間くらい?」


 「俺とだいたい同じだな。その癖してこの魔法の威力……どんだけ鍛錬積んでんだよ」


 呼吸を整え、空は仕掛ける。


 「【暗雲轟雷(グラスト・フルグル)】!」


 「【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】!」


 同時に攻撃。

 共にぶつかり合い、共に届かず。


 次は、剣と剣とがぶつかり合う番。


 「おらよ!」


 見てきた。

 空。お前の攻撃を。

 だからわかる。お前は右に避け、右に攻撃する。


 だから!


 「ふっ!」


 空の剣をかわし、俺は剣を。

 剣を空の首筋に当てた。


 「頼むから。降参してくれ」


 少しの間の静寂。

 観客席からはバッシング。

 だが。


 「トオル!避けろ!」


 レニアさんの声。

 避けろ?


 俺は上を見上げる。

 暗雲が立ち込めている。


 「まさかっ」


 俺はすぐに空と距離をとった。

 その瞬間。俺の元いた場所に、一本の雷が降りた。


 「お前さ、甘すぎだろ。

  殺せてたぜ?」


 呆れたように、空は言う。


 「おいソラ!敗北を認めろ!お前は勝てん!」


 観客席の男が言った。


 「あれ、俺の主人な」


 空は軽く言う。

 が、その主人の「敗北を認めろ」という言葉に空の右手の甲にある奴隷印が反応する。


 「ちょっと待ってな」


 空はそう言って、簡単に。

 右手を剣で切り落とした。


 「な!お前!何を!」


 「奴隷から解放されたくて、この奴隷印を外すために何度か右手を切り落としたことがあるんだよ。

  結果としては、奴隷として、回復魔法かけられると奴隷印付きで治ったり、身分は変わらずなんだな。

  一つだけいいことがあるんだよ。

  切り落として少しは、奴隷印の効力が切れるのか、軽いことなら主人に逆らえるんだ。

  もちろん、主人に危害を加えるとかはなしだけどな。

  ほんの少しならセーフ。数分間だけだけど」


 笑いながらそういう空に、狂気を感じる。

 止血をし、【暗雲轟雷(グラスト・フルグル)】で右腕を感電させた彼は、「これで痛くない」と笑った。


 数分間。そのためだけに、彼は右手を切り落とした。

 それだけ、譲れない。そんな戦い。


 「てかさ、徹」


 「......なんだよ」


 「お前、人、殺したことないだろ」


 当たり前の言葉。

 だが、空。彼はまるで人を殺したことがあるかのようにそう言ったのだ。

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