第十六話 『コロシアム初日』
今考えてみれば、今俺は、奴隷になってことに対して嬉しさを感じている。
俺がドMだからではない。
この奴隷コロシアムにでて、悠斗を救えるチャンスを手に入れられたからだ。
俺はそのチャンスを必ずものにする。
そう誓って、俺はコロシアムのスタッフに着いて行った。
俺の初戦まであと三試合。
観客席の下。奴隷が登場する入り口に俺は案内された。
アニメとかでよくコロシアムで敵が出場するシーンは見たことあるけど、まさか登場する側になるとは……
俺はとりあえずそこから試合を観戦することとした。
なんせ試合まで三試合。
最初の方はすぐに決着が着くからすぐに案内されるらしい。
ただ、今の俺にとってはありがたい時間だ。
もしかしたら今後戦うかもしれないやつの戦闘スタイルなんかを見れるかもしれない。
それに少し緊張がほぐれる。
そんなことを思いながら、俺は鉄格子の隙間から試合を観戦し始めた。
両者ボロボロの服にボロボロの剣。
とりあえず参加させられたということなのだろうか。
魔法はともかく、剣がまともに使えていない。
「あああ!」
片方が剣で突進する。
本来であれば回避されるような攻撃だ。
だが、
「があああっ!」
その剣は身体を。
一人の人間を突き刺した。
「いいぞいいぞ!」
「最高だ!」
「もっとやれ!」
腹から吹き出る血を見て、観客達は一気に盛り上がる。
こいつら、正気か?
人が死ぬんだぞ?
俺は盛大に観客達に引いた。
だが、この世界で正常なのは俺ではなく、観客達だ。
奴隷は人ではない。モノだ。
モノとして扱われている。
俺のもといた世界で、普通に物が捨てられるように。
この世界では普通に奴隷は死ぬ。
数秒後に、刺された奴隷は動かなくなった。
それと同時に、観客達は盛り上がり、最終的には乾いた拍手を送った。
血や死が観客達に盛り上がりを提供している。
そんな非現実的な現実を俺は今改めて知ったのだ。
――――
俺の番がやってきた。
初戦。
目の前の鉄格子が上へと上がり、俺は戦闘場に足を踏み入れた。
反対側からの入り口からは、俺の対戦相手が登場した。
まだ、五歳六歳くらいの小さな子供だ。
やせ細って、剣を引きずりながら歩いてきた。
「それでは、開始!」
試合開始の宣言がされた。
「【氷結槍】!」
俺は宣言と即座に、詠唱を始めた。
様子見でまずは一本。
「おいおいあの奴隷、魔法使いやがったぞ!」
「中級魔法が使えるなんて、質がいいなぁ」
「あいつの勝ちだろ、もう」
そんな観客達の声が聞こえる。
だが、今集中するべきはこの戦いだ。
俺は【氷結槍】を放った。
狙いはどこに。
頭?腹?それとも……足?
俺の狙っている場所は……あの剣だ!!
【氷結槍】は剣に命中し、その子の手から吹き飛んだ。
それを確認し、俺は一気に距離を詰める。
「降参してくれ!」
俺は剣をその子の首に当てて言った。
できれば俺は、殺したくない。
この世界でいくら奴隷がモノとして扱われていようが、俺は奴隷を、変わらず人として考えているからだ。
だが、この子は何も言わない。
ただ怯えている。
もしかして、言葉が喋れないのか?
どうやって、この子に敗北を認めさせればいいんだ?
「もうよい」
そんなことを考えている時だった。
「敗北を認めよ、ロッカクよ」
観客席にいる裕福そうな男が言った。
この子の主人?なのか?
その男がそう言った瞬間だった。
この子の右手が光りだしたのだ。
「奴隷印」
奴隷につけることが義務付けらている奴隷印。
その効力は主人に逆らわないようにするというもの。
魔道具。
そう括られたものはそんな効力が付くのだとアンリスさんが言っていたっけ。
とりあえずは、そんな魔道具によってつけられた奴隷印の効力によって、この子は両手を挙げた。
「勝者!ナンバー十二!!」
両手を挙げたことによって敗北が認められたようで、俺は勝ち残った。
ただ一つ嫌だと思ったことは、今まで以上に、観客の声援がなかったことだ。
観客は奴隷の血と死に飢えている。
そう感じられた初戦だった。
――――
俺は控え室に戻ってきた。
「まずは一勝、おめでとう。
観客席で見ていたぞ。
まだ、剣技を使うまでもないな」
レニアさんはそう俺に言った。
「そうですね。殺さなくても済む」
「だな。ただ、これから勝ち進んでいくと、必ず出てくるぞ」
「何が、ですか?」
「降参しない者。魔法を使う者。強い者。
トオル。お前がそんなヤツらと戦う時に、やってきたことが活かせるか。
そして、お前は勝利を掴めるか。
……油断は、するなよ」
「わかりました」
一勝。
ただ、それはこのコロシアムの入り口のようなものだ。
これ以上に、もっと、強い敵が現れる。
それは、絶対に、確実に起こることなのだ。
――――
初戦から、七戦。
同じように、敗北を認めさせ、勝利を掴んだ。
それが出来たのは、言ってしまえば、奴隷の質が悪いからなのであろう。
魔法も剣も何もかも。
戦ってきた者は出来なかった。
人数が調整され、残ったのは十六人。
ベスト十六だ。
ベスト八になる試合。
そして、この日。コロシアムの初日、最後の試合。
俺は案内された。
鉄格子が上がり、戦闘場へ足を踏み入れる。
反対側から現れた。対戦相手。
彼は今までの奴隷とは違い、剣をしっかりと持っていた。
茶髪。俺と同い年くらいだろうか。やせ細っていない。
俺と同じ。
一気に緊張感が走る。
「あれ、もしかしてお前」
彼は口を開いた。
「日本から来た?」




