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救いのないこの異世界で 〜異世界転移した俺は、英雄ではなく奴隷だった〜  作者: 鏡月胡桃
第三章 奴隷コロシアム編

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第十五話 『剣技習得』

 「剣技?レニアさんの?」


 「ああ、そうだ」


 レニアさんは一旦木刀を置き、話始めた。


 「とは言ったものの、一週間ですべてを習得するのは不可能だ。

  だから、聞いておきたい。

  お前は、剣と魔法。どっちを軸にして戦いたい」


 「どっち、ですか......」


 レニアさんの剣技を見ると、剣を主軸にした方が戦いやすそうだ。

 けれど、一週間。

 その期間で、鍛錬するのだ。


 一週間の剣を軸とする。

 異世界ここに来てからの魔法を軸とする。


 どっちがいいのかはわからない。

 だが、


 「魔法を軸にさせてください」


 「まあ、だろうな」


 「だろうな?」


 「一週間の剣を軸にしては、お前の魔法が本領発揮できないからな。

  剣を補助に回した方が適作なんだよ」


 どうやら、二択問題には正解したらしい。

 そんな俺にレニアさんは説明を始めた。


 「ヴェアリス流剣技、受動剣。

  名前通り、相手の攻撃に合わせていく剣技だ。

  魔法と剣を両方使い、相手の遠距離・近距離の攻撃に注目していき、最終的には確実に技を的中させていくという剣技だ」


 「なんか、すごそうですね」


 「まあ、実際にすごいからな。

  ただ、この剣技は補助の剣技だ。本来であれば、不利な状況でこそ輝く。

  なんせ、受動。戦闘開始直後は全く使い物にならないからな」


 レニアさんは一呼吸おいてから、「じゃあ、始めようか」と言って、木刀を構えた。


 「まずは、攻撃を与えるんじゃなくて、相手の攻撃パターンの方に目を向けろ」


 「わかりました」


 「じゃあ、行くぞ!」


 レニアさんは踏み込み、一気に距離を縮めてきた。


 ていうか、受け身の剣技とは言ってたけど、素振りでもなんでもなく模擬戦かよ!

 大技だとかそういうのだと思ってたんだけどな......。


 「【氷石ラッジ・グラキエス】!」


 レニアさんめがけて一直線に氷の塊を飛ばす。

 だが、今まで通り、簡単にいなされる。


 もう近い、ここからは、剣を使うしかない!


 「はっ!」


 レニアさんは俺の喉元にその木刀を向ける。


 ヴェアリス流剣技、受動剣。

 攻撃ではなく、補助の剣技。


 今すべきなのは、なんだ。攻撃か。

 いいや違う。するべきなのは。


 「ふんっ!」


 相手の攻撃に注目し、回避する!


 俺は木刀で思い切り振りかぶった。

 レニアさんの木刀の軌道がそれた。


 「そうそう、その調子だ!」


 「はい!」


 模擬戦は一日中続いた。



 ――――



 「ちょっとレニアさん!何してるんです!」


 「いやあ、すまんすまん。

  最近戦っていなかったし、剣を教えていたら、熱中してしまってな」


 ははは、と笑うレニアさんと心配するアンリスさん。

 そして、ヘトヘトな俺。


 丸一日戦い、もう体がボロボロだった。

 そのくせしてレニアさんは強度を上げてくるから流石にヤバかった。


 これがあと六日間。

 コロシアムまで続くのだ。



 ――――



 六日が過ぎた。

 奴隷コロシアム当日だ。


 流石にこの六日間。やることなすこと全部同じすぎて、精神的にも疲労した。


 ただその分の成果がある。


 「トオル。調整として、一回試合をしようか」


 「はい」


 レニアさんとの模擬戦も何百回目。


 「いくぞ!」


 「【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】!」


 二本。先のとがった氷柱が生成され、即座に回転・発射する。


 成長ポイントその一。

 魔法が相当使えるようになった。

 【氷結槍(ルピナス・グラキエス)】は三本まで生成可能。なんだったら、生成してすぐに発射ができるようになった。

 そして、【氷石ラッジ・グラキエス】は十五個まで生成可能となった。

 まあ、流石に最大同時生成は最後に放つようにしている。


 なんせ剣技。

 最終的な的中まで温存するためだ。


 「ふっ」


 レニアさんは華麗にその二本をかわした。

 かわした。

 だが、そこにいくつもの情報が眠っている。


 成長ポイントその二。

 相手への解析能力が上がった。


 角度。

 体力の消耗。

 剣の位置。

 体の位置。

 エトセトラ、エトセトラ......。


 今回は斜め、この位置。


 「ここだ!」


 剣を思いきり前へと突き出す。


 「はっ!」


 だが、レニアさんはそれをいなした。


 「なかなかよかったぞ!トオル!」


 「は、はい」


 成長ポイント?その三。

 師匠レニアさんには遠く及ばないという自覚。


 何百回と戦っても、勝利を勝ち取ったことはないのだ。


 「じゃあ。移動しようか」



 ――――



 ここが、会場。

 コロシアム。

 中央に戦闘場。それを囲うようにして、上に観客席がある。


 スポーツ観戦みたいな仕上がりだ。

 実際、奴隷を戦わせるのは、この世界の人にとってはスポーツ感覚なのかもしれないけど。


 「お集まりいただき誠にありがとうございます!」


 あの商人が話始める。


 「この奴隷コロシアムには合計三千四百二十二人の参加者様がお集まりいただけました!

  これから、二日間に分けまして、奴隷コロシアムの方を開催させていただきます!」


 息をのむ。

 とうとう始まるのだ。


 俺は控室に案内された。

 主人であるレニアさんとアンリスさんも同じ部屋に案内された。


 「トオル。わかっているな。

  今から始まるのは、今まで私とやってきた模擬戦などとはまったく違う。

  殺し合いだ」


 「覚悟はできています」


 「殺す覚悟も殺される覚悟もしておけよ。

  私たちは、手助けができないからな」


 そんな重い話をする。


 「レニア主人。奴隷を」


 「わかりました。

  じゃあ、いってこい」


 俺は頷き、案内がされる。


 今から始まるのだ。

 人間同士の殺し合いが。

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