《short》この雨がやんでも、きっと。
【土曜日/PM3:00/Chiaréハウス リビング】
窓の外では、静かに降りしきる雨が庭の緑を濡らしていた。
粒の大きな雫が枝葉に跳ね、滑るように軒を伝う。
薄曇りの空に陽はなく、けれどその代わり、
リビングの照明がやわらかく皆の表情を照らしていた。
快斗「……なぁ、ぶっちゃけ今日のちーちゃん、めちゃくちゃ可愛なかった?」
千紘「えっ……う、うん……わかる……!あの部屋着、反則だよ……!」
耀「……あの、ゆるいカーディガン姿ね。首元、無防備すぎて困る。視線、逸らすの大変だった」
灯「うん……あれは、心臓に悪い。袖がちょっと長くて、手が隠れてて……ずるいよね」
焔「……あの……なんか、毛玉……ついてた。……かわいかった……」
窓際に並んだソファに思い思いにもたれながら、彼らはそれぞれの“千明可愛いポイント”を語る。
雨音が静かにリズムを刻む中、それぞれの声だけが温かく響いた。
快斗「わはっ、焔が言うと破壊力やばいな!毛玉て!」
耀「でも、分かる。普段しっかりしてる子が、ちょっとだけ気が抜けてると、急に庇護欲が刺激されるというか」
千紘「うぅ……僕もあれ見たあと、授業準備に集中できなかった……」
灯「それなのに、“雨で出かけられないね〜”って笑ってくれて……あんなの、恋じゃなかったら何なんだろうね?」
快斗「いや、恋やろ。全員、重症やわ」
焔「……でも、他のやつ……見てた。陽翔とか、めっちゃ近くいたし」
千紘「そ、そうなんだよ……陽翔くん、いつの間にあんなに距離、縮めたのかなって……ちょっと焦るよね……」
耀「僕は朔の動きが気になるかな。あの人、いつの間にか“当たり前に隣にいるポジション”取ってるし」
灯「……それでも、誰よりもちーちゃんを見てるのは……僕のつもりだったんだけどな」
雨の音が、会話の余白に寄り添う。
リズムを崩さぬように、けれどそれぞれの胸の奥を濡らすように、しとしとと響く。
快斗「お〜お〜、みんなしてピリピリしてきたな〜!じゃあさ、逆に“俺のここ、ちーちゃんにウケてる自信ある”ポイントとか、ある?」
千紘「そ、そんなの……ないよ……!」
耀「……強いて言えば、言葉。千明って、意外と“綺麗な表現”に弱い気がする。……甘いの、ね」
灯「僕も……言葉。あと、触れるときの優しさ。ちーちゃんって、人の手、すごく気にしてる気がする」
焔「……火事の時、助けた……ときの話。……何回も、聞いてくれる」
快斗「ん〜、俺はやっぱ……笑わせた時かな?あの子、笑い声まで可愛いもん。めっちゃ頑張ってる感、あるときほど、笑わせたくなる」
千紘「……なんか……ずるいな、快斗くん。そうやって自然に距離、近づけるの……」
快斗「嫉妬かな?ふふ〜ん♪ 俺は関西魂で攻めるで〜?」
耀「でも、快斗って……ほんとは繊細だよね」
灯「うん。冗談に隠してるだけで、ちゃんと気持ち見てる」
快斗「うっ……やめてや、そういうとこ暴くん……!泣いてまうやろ!」
焔「……ちぃは、誰を選ぶんだろうな」
一瞬、リビングがしんと静まる。雨音だけが、真実のように胸を打つ。
千紘「……ちあちゃんに選ばれなくても、そばにいられるならって、思ってた。でも、最近……欲張りになってきちゃって……」
灯「……わかる。ずっと見てるだけで満たされてたのに、今は……声が聞きたい、触れたい、独り占めしたい……って思っちゃう」
耀「誰かの“特別”になりたいって、想いが強くなるよね。でも……それでも、千明が笑ってくれるなら、どんなポジションでも受け入れたくなる。不思議な人だよ」
快斗「……そやな。でも俺は……正直、1番がええ。笑ってるちーちゃんも、泣いてるちーちゃんも、俺だけのもんにしたいもん」
焔「……俺も」
千紘「……ずるいよ、みんな。そう言われたら……僕も、諦められなくなるじゃん……」
灯「ふふ……雨、やまないね」
耀「……降り止まないのも、たまにはいいさ。こんな風に、話せるなら」
快斗「そうやな〜……よし、ほな千明が来る前に“告白の練習”でもしとく?」
千紘「な、なんで!?」
灯「……ふふ。ちょっと、してみたいかも」
耀「……俺が言ったら、誰か止めてくれる?」
焔「……練習、なら」
快斗「ほんまにやるんかい!……でも、俺も混ぜて?」
──それぞれの声が重なって、リビングに温かい色を灯していく。
外の雨はまだやまないけれど、
その中にこそ咲いた言葉が、彼らの本音だった。
はじめて読んだあなたへ。
え、ちょっとこの男子たち……恋のボルテージ高くない!?と思ったあなた。
はい、正解です。
でも、これでもまだ“雨の日の昼下がりの雑談”という顔をしています。
名前が覚えられなくても大丈夫。
気になるセリフを残した彼、たぶん次も“やらかして”くれますので、どうぞ気軽に覗いてやってください。