表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

初戦、時間停止使い ③

ウサギはゆっくりと建物に入り、警戒しながら周囲を見渡した。


(……アイツは能力も何も持ってないはずなのに、なぜか怖い……驚きはしないさ。相手はゲン・ゴットだ)


頭上から物音が聞こえた。ウサギは銃の形に手を構える。


「『K』!」


光の球体が弾のように建物全体を貫いたが、何にも当たっていないようだった。


(『静寂空間』を使うのは怖い……アイツはすでに何か策を練ってるはずだ)


階段をゆっくり上りながら、再び物音が聞こえた。


「『K』!」


今度は頭上から「いてっ!」という声が聞こえた。


(当たったのか!? いや……ブラフか? まぁいい、ペースを上げよう)


ウサギは階段を駆け上がり、三階に到着したが、人影はない。


(このビル、そんなに大きかったっけ? 10階建てくらいか……屋上まで追い詰めればいい)


四階、五階──まだゲンの姿は見えない。六階に差し掛かった時、再び頭上から声が。


「『K』!」


「いてっ!」という声が響いた。


ウサギは階段を駆け上がった、七階で床に血痕を発見した。


(血……? 待て、やっぱり当たってる! 逃げようとしてるんだ! 出血があれば遠くまで行けない……もう逃がさない! 『静寂空間』!)


時間が止まった。


(連続使用には間隔が必要だ……屋上まで追い詰めるのに十分な時間だ)


五秒間で八階、九階、十階へと駆け上がった。


(あとは屋上にさえ行けば……もう一度『静寂空間』を使えば追い詰められる……って、動けない!?)


屋上階段からゲンが現れ、ウサギと顔を合わせた。


「……終わりだ、ウサギ。だが真相くらいは教えてやる」


「まず、お前の『K』は一度も当たってない。演技だ。急がせるためにな。床の血は俺がナイフで自分を切ったものだ。『静寂空間』の時間を無駄にしたくなかったから見せなかっただけ」


「お前が七階で時間を止めた時、俺はすでに屋上にいた。ビルの一階あたりの高さは約3メートル。お前の『K』の射程は10メートル程度だろう。屋上まで12メートル離れていれば、光の球は届かない。あとはお前ができるだけ近づくのを待ち──」


「球体が広がり始めた時、つまりお前の5秒が終わった瞬間、それを斬った。計算通り、お前は血痕に釣られて十階まで来た……そして罠にかかった」


「今、俺とお前は至近距離だ。残り3秒……今度こそ、確実に殺せる」


ウサギは悟った。


(……そうか、負けた……またか。だが、やるべきことがある)


ゲンがナイフをウサギの心臓に突き刺す。


「……勝ったな」


しかし『静寂空間』が解けた瞬間、ウサギは最後の力を振り絞ってゲンの額に触れた──そして息絶えた。


ウサギの遺体を見下ろしながら、ゲンは思う。


(……なぜだ? この感覚は……初めてのはずなのに、まるで前に人を殺したことがあるみたいだ……元からこういう人間なのか)


次の瞬間、ゲンとウサギの遺体は、ビルも何もない真っ白なプラットフォームへと転送された。周囲には巨大な観客席──神々か何かが歓声を上げ、野次る者たちの怒号も混じっている。


(こいつらが神か……マグバルもいる。全部が神とは思えないが……他の参加者か? マグバルは「重要な神々だけが参加者を選ぶ」と言ってたな。なら他の連中はただの観客だ。ウサギを選んだのは誰だ? ……どうでもいい話だ)


上空では巨大な目がゆっくりと閉じ、消えていった。その大きさは計り知れない──遠近感さえ混乱させるほどだった。


(あれが……神か)

気に入ってくれたらブックマークしてくださいね

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ