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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第八十一話


【共和国】にて。

 大きな扉を蹴破る勢いで兵士が入って来る。

 汗を掻き、息が上がっている。


「申し上げます!」

「どうしたの?」


 王の前で跪くと高らかに宣言した。


「はい!【アルドリア】が侵攻を再開いたしました!」

「何!?」

「指示を!!」

「兵士を集めて。あと少しで、終わるはずなのです。海へと押し返しなさい。神兵は全員出て。」


 王、レイ・アリセナは信じていた。彼女らが必ず帰って来ると。

 その先に平和を実現できると。

 

・レオニス視点


 【アッシュホルム】を拠点に侵攻を開始したはずだ。

 もう勝ちは確定したも同然だ。

 【アルドリア】中の貴族からの資金提供。

 これ以上ないほどに潤沢にある。

 これで、侵略後も安泰というわけだ。


 【共和国】に仕掛けた4つのポイント。

 それぞれの地方都市で発動する。

 その禁術の名は『雷帝』。天候に作用し、あらゆるすべてを蹂躙する。

 破壊し、除外し、否定する。

 7日間ほどの雷は【共和国】のことごとくに容赦しない。


 さて、そろそろ時間だ。

 俺も仕上げをするとしようか。


 メイドと廊下ですれ違う。

 自室の前の廊下だ。


「レオニス様。旦那様がお話したいようです。」

「ああ。そんな時間か。キャンセルだ。」

「え…で、ですが…」

「良い。無視しておけ。そして、この手紙を弟へ。」

「か、かしこまりました。」

「俺は寝る。今日は部屋に誰も居れるな。飯もいらない。」

「かしこまりました。」

「頼んだぞ。」


 扉を閉める。

 鍵はしない。

 もう出ていくこともないのだから。

 扉を背に、静かに目を閉じる。

 睡眠よりも早く、夢を見るよりも穏やかに、その深層へと入っていく。


「やぁ。」

「さっきぶりだな。管理人殿。」

「そうだね。妹さんは先に旅立ったよ。」

「そうか。次は俺だな。」

「うん。」


 その暗い空間から足音だけが聞こえてくる。

 彼の全身をこの目に捉えたことはない。


「最後に言い残すことはあるかい?」

「死ぬわけじゃない。」

「捉え方の問題だよ。死ぬと同義と考える生物も居るからね。」

「そうだな。でも、俺は違う。」

「覚悟が違うね。」

「ああ。俺は正義だからな。」

「そうやって自分を正当化するのは綺麗ではないね。」

「正当化?何を言っている。」

「違うのかい?」

「ああ。正義の裏は悪だ。つまり、俺が向いている方向には正義として映り、俺が背中を向けている方向には悪として映る。このコインと同じ原理の概念は、時として見失う。誰にとっての悪なのかを。」

「面白い考え方だとは思うけどね。」

「そうだろ?」

「うん。でも、僕には納得が必要のない考え方だ。」

「そうか。」

「管理人の仕事はコインじゃない。コインを投げる仕事でもない。コインを手渡す仕事でもない。」

「なら、なんだ?」

「コインで遊んでいる生物達を空から見下ろし、ほくそ笑むことさ。無駄な苦労をしている様を。運命と言う名のレールに乗った惑星の歴史は今日も紡がれる。生物達の思惑とは関係なくね。管理人から見た君たちは駒ですらない。歴史書の1ページにも描かれない、記憶の片隅にも残らない、存在していたことの証明すら困難な人物だ。それが君たちだ。前にも説明したね。役割のある人物など五万といるが、そのすべては必要ではない。必要だと思いたいのならそう思えば良いけど、上から見えれば全部点にしか見えないよ。」

「それもそうだな。しかし、生物であった俺は全うした。」

「役割をかい?」

「違う。俺の産まれた家の仕事をだ。」

「そうかい。満足のいく仕上がりになったのなら良いよ。」

「ああ。」

「君との会話は楽しいね。管理人同士の接触は禁止だけど、何度でも話していたいよ。」

「じゃあ、そろそろ良いか?」

「そうだね。話過ぎたね。じゃあね。」


 体を置き去りにして、上に引っ張られる。

 肉体を離れると同時に記憶を失う。

 成果に見合う報酬は貰った。

 これ以上ないほどに満足だ。

 俺は王にはなれないが、【アルドリア】が繁栄していく未来の糧になれたことを誇りに思う。


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