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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第七十四話


「僕の話をする前に、レオニスにはすることがあるだろ?」

「そうだな。」

「じゃあ、後始末をよろしくね。」

「分かっている。」

「では!」


 暗がりから、レオニスが消える。

 霧のように。

 どこかへと姿を消した。


「これでゆっくり話せるね。ここには時間の概念が無いから。」

「待て。」

「何?」

「イザルナと話がしたい。」

「無理だと思うよ。」

「あ?」

「怒らないでよ。僕のせいじゃないし。それに事実でしょ?さっきの。レオニスの言っていることは正しかった。」

「黙れ。」

「レオニスの言い分には筋が通っているように感じたけどね。対して君たちは、自分たちの行いを否定するだけ。解決策や打開案を出すわけでもない。否定するだけなんだ。何かを自分で生み出すわけでもなく、他者の考えを否定するだけ。」

「違う!」

「違わないさ。結局何がしたかったの?聞くけど、あの段階で【アルドリア】がするべきことはなんだったの?言ってみてよ。」

「それは…。」

「ほらね。君たちは、目先の楽な方法を取った。レオニスは決断をした。この差だけだよ。レオニスが何もしなければ、人口増加に伴って問題が多発していただろうね。それを未然に防いだ。立派な王じゃないか。」

「……」

「君が王様だったらどうするんだい?人口増加したら。土地がなくなったら。資源が無くなったら。食料が不足したら。間引く?産ませないようにする?それは解決策ではなく、先送りしているだけだよ。君たちのは理想論にも届かない。少年の寝言よりも酷い。」

「イザルナは違った!!いつも誰かのことを考えて行動していたはずだ!!」

「それも疑問だけどね。君たちは被害者なのかもね。イザルナ・アルドリアの。彼女は自分の存在意義が欲しかっただけでしょ?そのために、戦争を利用した。それだけに過ぎない。つまるところ、彼女せいで多くが夢を失い、故郷を失い、家族を失った。最後に、自分は被害者ですって面で彼氏に泣きつくだけ。偽善者は辛いね。同情するよ。僕は優しいから。」

「てめぇ、次しゃべったら殺す。」

「怖いね。でも、恐ろしくはない。この空間では僕は最強だからね。さて、もういいでしょ。イザルナ・アルドリアは、立ち直らない。話を続けるよ。良いね?」

「……」

「睨まないでよ。同僚として、仲良くしたいんだ。なんだい?現実を突きつけたら怒るのかい?酷い理想論者だなぁ…。まあ、いいや。まずは君たちの話ね。管理人に抜擢されるには理由がある。禁忌を犯したこと。」

「あ?」

「怒らない。怒らない。禁忌って言うのは下界で言う、殺人とかじゃない。惑星の歴史を変えてしまった、又は変える可能性がある行為をしたことだよ。君たちは、【アルドリア】が負けるかもしれない可能性を作った。それが禁忌。」

「そんな、わかんねぇだろ。未来になってみなきゃ。」

「分かるっていうより、決まってる。惑星ごとに歴史は決まっている。その歴史を踏まないと、文明が滅びかねないから。」

「勝手なこと抜かすな!!なんで俺たちがそんなのに従わなくちゃいけないんだ!!」

「勝手?良い表現だね。そうだよ。勝手だよ。でも、その勝手のおかげで君たちの文明は守られている。これは現実だ。そして、管理人になった者は、惑星ごとに歴史を守ってもらう。詳しいことはそのうち覚えるよ。じゃあ、君たちがどこに配属されるか知らないけど、頑張ってね。」

「あ!?」


 なんだ?

 眠い?

 違うな、記憶が抜かれているのか?

 どんどん自分が何者か思い出せなくなる。

 

 イザルナの肩を掴んで揺らす。


「イザルナ。大丈夫か?」

「……」

「今は、失意の中に居ても良い。忘れてもいい。逃げたっていい。それでも、俺が絶対に、何があっても助けに行く。約束だ。俺が英雄として、お前だけの英雄として絶対に助けてやる。だから、自分のことを恥じる必要なんてない。君を助け出したら、俺の英雄譚を書いてくれ。馬鹿な俺でも読める本を。絶対に。」


 だめだ。引っ張られる。

 イザルナから手が離れてしまう。

 イザルナも弱く手を伸ばした。

 その手を掴もうと大きく手を伸ばして、翼を広げる。


「絶対に迎えに行く!!救って見せる!!」


 レオニスのやり方が正しいのなら、俺だって実演してやる。

 誰を否定してでも、イザルナのやってきたことを肯定してやる。


「誰を地獄に落としてでもお前を救って見せる。」


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