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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第七十三話


「お前が貴族の屋敷に通っているのを知ったときに父に質問した。なぜ、イザルナが貴族の玩具になっているのかってな。純粋な疑問を投げかけただけだった。子供だったしな。」


 その言葉使いは先ほどと同じ人物が発しているとは思えないほどになめらかで、親切なものだった。


「父から返ってきた返答は、沈黙だった。それが、俺の中では疑問となり、膨れ上がった。

 親兵に質問した。次は、命令のように。そいつは答えた。賄賂だと。だが、おかしいだろ?

 なぜ、王家が貴族にぺこぺこしなきゃならんのだ?疑問に思った俺は再度父に投げた。

 しかし、父は沈黙を破ることはなかった。

 俺なりに答えを得たんだ。これは前ぶりだと。これで我慢しておけという合図なんだと。イザルナが訪問した貴族はこの話に乗ると言う契約だと。

 父を含む国の上層部はある計画を練っていた。【共和国】への侵略。

 その理由は、種族間の問題なんかじゃない。

資源と土地だ。増えすぎた人口と、枯渇してきた資源を求めて。【アルドリア】よりも広大な【共和国】の土地が欲しかったんだ。

 しかし、名目が無ければ兵士は命を懸けて戦わない。そこで、目を付けたのが教会。

〈ルミナール教〉だ。〈ルミナール教〉の経典を作り替え、人々の思想を変えることで他種族を嫌うように洗脳した。

 『魔法』で国中の人々の思想を変えるのには犠牲が多すぎるからな。

 そこで父は俺と弟に試練を与えた。これを達成した者には王位をやると言って。

 その試練は、【共和国】を滅ぼすこと。その資源と広大な土地を奪い去ること。

 そのための教育がされてきたからな。話を簡単に飲み込んだよ。父のためではなく、自分のためではなく、国民のためだ。

 餓死者や家が無い者を救うためには少数派を犠牲にする。完璧な考え方だろ?

 俺が目を付けたのが『顛末』。シナリオをつくる際に最強の『魔法』だ。

 『顛末』にはデメリットが存在する。しかし、それを克服する方法だってある。

 誰を起点にするかでデメリットを克服できる。俺が選んだ相手はレイヴァン。先の時代の大英雄だ。

 彼を起点にすることで、大体のデメリットは克服できた。意識が無いからな。行動を計算しなくてもいい。

 『顛末』のおかげでかなりスムーズに、お前たちが『精神操作』までたどり着いた。

 しかし、俺も少し失敗をしていてな。『顛末』を発動するときに必要な魔力を見誤っていた。

 そこで命を落とした。はずだった。命を落とした先で管理人と出会い、歴史を守って欲しいと頼まれた。『蘇生』の『能力』を借り、お前たちをここまで導いたというわけだ。」


 淡々と話すその態度に恐怖を感じる。


「なぜ…なぜそのようなことを!!」

「理解できなかったか?妹。」

「できない!少数派を切り捨てて、多くを救う!?レオニス兄様がやったことは、国民のためとか息巻いて他国を滅ぼしただけだ!!多くを救えていない!」

「王の務めは自分の国民を守ることだ。国民が苦しんでいるのなら、他を地獄に落とすまでだ。」

「そんなの…そんな考え方は間違っている!!」

「何がだ?お前は、隣人が困っているのに見捨てるのか?隣人が食糧難になったのなら、都市部から食料を奪う行為を間違っていると?」

「そうです!!間違っている!!」

「そうは思わんな。隣人の見方であり続けるのが王の務めだ。他国の事情なんて知ったことではない。我々【アルドリア】の繁栄のためだ。仕方がない犠牲だ。」

「くっ…!分からず屋!!」

「そこで一生吠えてろ。俺はすべきことをやったんだ。誇りに思っている。お前が行動したおかげで俺の仕事は円滑に進んだ。間接的にお前もこの話に絡んでいる。お前も、【共和国】を滅ぼした一人だ。」

「なっ!?」

「実に皮肉だな。救いたいと願い、行動すればするほど破滅へと導いているのだから。お前が滅ぼしたんだ。あの大国を。多種族を。良かったな。成果が実って。玩具もここまで踊れるとは恐れ入ったよ。」

「ちがっ…私は…」

「何も違わないさ。お前が、自分がやっているエゴに気づかなかったんだ。操られているとも知らずに、自分の実力のおかげで成功していると勘違いしただけの犯罪者だ。恨まれるべきは、お前だな?イザルナ。国を滅ぼした気分はどうだ?清々しいか?誇らしいか?満足か?歴史に名を残したんだ。良かったな~。」

「わ、私は!」

「言い訳は管理人になってから、誰にも届かない天空から叫び続けてろ。そうすれば救われるかもな?死者から同情されるかもな?滅ぼした国から許されるだろうな?これで良いじゃないか。なぁ?」

「やめろ。イザルナは悪くないはずだ。」

「ほう?」

「お前が仕組んだことだろ。」

「そうだ。俺は正義を自覚している。」

「何?」

「俺はこれが正義だと自覚しているんだ。そして、こいつは悪を自覚した。これが差だ。こいつは二度と立ち直れない。」

「イザルナ。イザルナ!」


 だめだ。もうしゃべる気力もなさそうだ。

 目を合わせてくれない。


「なぜ…なぜこんなことをした!」

「イザルナにか?簡単な話だ。自分がやったことを自覚させようとしただけだ。この俺を悪党呼ばわりしたその玩具を。」

「はいはーい終了かな。もうそろそろ、僕の話に進みたいんだけど?」

「ああ。すまない。管理人殿。長話が過ぎたな。」

「まあ、良いんだけどね。さぁ!次は僕の話を聞いてもらおうかな!」


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