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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第七十話


 かつての戦友。仲間。同志。

 そんな相手を簡単に傷つけられるわけなかった。

 自分の攻撃に迷いと躊躇が入り混じる。

 戸惑いを見せないガルフォードは強かった。

 俺が付け入る隙が無いくらいに。

 俺を完全に抹殺対象として、この世にいらない存在として映っているみたいだ。


「これがお前の足だ。」


 冷徹な声色。彼にこんな声帯があるとは知らなかった。

 俺の足を斬り取ったガルフォードは、足を捨てて次の構えへと移る。

 油断も隙もない彼は冷徹な殺人鬼に変わり果てていた。

 左腕と右足を失い。

 立つことができなくなったので翼を広げて浮遊する。

 体力面でも限界が近い。これ以上長引いたらどこにも行けなくなるだろう。

 対してガルフォードはぴんぴんしている。このまま、登山でもできるのではないかと思うくらいに。

 体に傷がなく、無傷は俺の無力さを象徴している。


「……余裕だな。ガルフォード。」

「当たり前だ。だが安心しろ。俺は三下相手だろうと手加減しない。存分に血をまき散らせ。」

「……助かるよ。」


 以前の彼はどこにもいない。

 なぜ、彼は敵なのか。命を刈り取る戦士に変貌してしまったのか。

 自分の想像力では補えないその光景にめまいがしてきた。


 ガルフォードの攻撃。

 まっすぐなその突きをよけて、反撃しようとする。

 片腕しかないので簡単によけられてしまう。お前の行動なんてお見通しだと言わんばかりの行動だ。

 翼を引きちぎられ、地面に倒れ込む。

 力なく地面にひれ伏したところに剣を向けられる。


「積みだ。」


 その通りだ。これ以上は体が動きそうもない。

 腕を奪われ、脚を奪われ、翼まで失った。

 一歩も動けそうもない。

 痛みを感じる暇もない。

 腕が無くなってから痛みと言う感覚が遮断されているように、悲鳴すら上げられなくなった。


「遺言はあるか?」

「…いろいろなところに連れて行ってくれたよな。君たちは。」

「…?」

「俺が死ぬ直前でも助けてくれたし、傷も治してくれた。」

「…そう…だった…か?」

「ああ。尊敬してたよ、ガルフォード。ガルフォードという騎士は気高く、誇り高く、仲間想いだった。」

「……」

「そんなあなたを尊敬してたよ。」

「随分と長い遺言だな。」

「そんなあんたにも見せてないとっておきの物がある。」


 ガルフォードは即座に剣を振り下ろしてきた。


「追い込まれているのはあんたの方だった!!!」


 剣を残っている腕。右腕で受け止めて、抜けないように力を込める。

 かすかにしか映らない目。

 でも、そんな愚者の目にも希望があるに違いない。


「『水』!!!」


 俺とガルフォードの間に水の塊を作った。

 その水の塊はガルフォードの胸を貫いた。


「っ!!!」


 久しぶりに痛覚が復活したみたいだ。

 痛い。全身が焼けるように痛い。

 『魔法』のリバウンドにこの体は耐えれるのだろうか。

 欠損している部分から血があふれ出る。

 体がバランスを失い、その場に倒れ込む。


「、、、か、、、た、のか、、、?」

「無駄だ。」

「、、、はは、、、なんだ、、、それ」


 胸に大きな風穴を開けたガルフォードが何事もなかったかのように歩いてきた。

 その傷で生きているわけがない。

 誰が見てもそう思うだろう。

 決して俺が、希望的観測をしているわけではない。


「良い攻撃だった。確かに度肝を抜かれたよ。でも、足りない。俺の本質に気づいていないからだ。」

「はは、、、もう、、、無理、、みた、、ぃ」


 俺の腕に刺さった剣を取りにくる。

 剣を抜くとそこから最期の血液があふれ出る。

 体に血が残っているのを忘れていたみたいに。

 最期の血液は何色だったのだろうか。


・イザルナ視点


 レンジ……レンジはどこ?

 何も見えないこの空間で必死になって君を探す。

 レンジ…レンジ…レンジ!!

 君は私の正しさを否定した。

 死なないことを約束してくれた。

 英雄になることを望んでた。それが今はか細い炎を燃やす枯れ木のように、君が見えない。

 確かにそこに居るのに、見えないのだ。


「立ち上がるか。小娘。」


 誰かの声が聞こえる。

 でも、君の声じゃないね。

 君の声はもっと綺麗で、単純で、親切だった。

 今は誰の声も聞きたくない。

 目も見えないのに、どこへ進むべきか分かった。どこに君が居るのか分かったよ。

 ここだね。そう、この木の裏。

 なんだろう。とても痛い。痛いんだ。体の内側から何かがあふれているように熱い。

 ここが終着点じゃないよね。

 ここまで歩いてきたじゃないか。私たちは終止符を打たないと。結末を見ないと。結果を出さないと。

 この堅い目の前の壁はなんだろう…。

 でも、この握っている手はきっと君だよね。絶対に。私が間違えるはずないよね。

 だって、こんなに暖かいのだから。


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