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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第六十九話


・レンジ視点


 息が上がる。

 しばらく飛び続けたからすぐには来ないだろう。

 俺の翼はそんなに長時間飛べないようだ。

 生えて間もないことも要因だろうが。

 見つからなさそうな木の上に降りる。

 馬では見つけられないだろう。


「大丈夫!?レンジ!」

「問題ないよ。イザルナこそ。」

「私は平気。良かった。ごめん、ちょっとヒートアップしちゃって……」

「ううん。そのおかげで良いタイミングで逃げれた。このまま王都を目指そう。」

「そうだね。うん。」

「少し休憩しても?」

「もちろん。」


 木の上で横になる。

 先ほどの張り詰めた空気が無くなって安心する。

 とんでもない口論だったが、イザルナに何もなくてよかった。


「レンジ。」

「?」

「誰か来る。」

「!?」


 全然気配がしない。

 先ほどもそうだったが、どうやって分かっているのだろう。

 何かの『魔法』だろうか。


「レンジ。」


 イザルナが小声で話しかけてくる。

 視線の先には人間が立っている。

 影になって顔がよく見えない。

 その男は剣に手をかけていた。

 離れたここでも聞こえるくらいの声を出した。殺気と同時に。


「『剣豪』」


 汗が噴き出る。

 今までに感じたことのない実力差。殺意。否定。

 自分の敗北が容易に想像できた。


「そこか。」


 男はぽつりとつぶやく。

 こちらを見る。

 その距離からなら気づかないであろう俺たちにその目を向けた。

 その視線には見覚えがあった。

 何か月も旅をして、世話を焼いてくれた人物。

 ガルフォードだ。

 生きていたんだ。彼が。

 顔を視認できたときに緊張が解れた。

 木から滑り落ちるように地面へと足を付ける。


「レンジ!!待って!!」

「ガルフォード…いきt」

「死ね。」


 刹那。その剣技は俺の腕を飛ばした。

 相手は首を狙っていた。間違いなく。

 反射で何とか態勢を崩して腕でガードした。でも、ほぼ間に合っていなかった。

 首に切り傷ができた。


「かはっ!」


 その抜刀は綺麗に俺の戦意と実力をねじ伏せてきた。


「が、、、ふぉーど、、どう、、して、、、」

「王の御命令だ。死ね。」


 次の剣が飛んでくる。

 震えが止まらない。

 集中できない。


「『浄化』」


 ガルフォードの攻撃が止まる。

 何かで抑えられているように。


「レンジ!!大丈夫!?」


 木から降りてきたイザルナが駆け寄って来る。


「かはっ…だ、じょ、、う、、、。」

「大丈夫じゃないんだね。分かった。」

「い、るな!」

「!?」


 イザルナを抱き寄せる。

 ガルフォードが剣を振ってきたのだ。

 イザルナを抱きかかえたときに腕で剣を受けてしまった。

 左腕も使い物にならないな。


「レンジ!」

「だ、じょ、か、、、?」

「レンジ!レンジ!!」

「しぶといな。次で命を貰おう。」

「くっ…!レオニス!!!お前ぇ!!!」

「王を呼び捨てとはな。恐れ入った。楽には死ねんぞ。小娘。」


 かすんだ目で捉えたガルフォードの攻撃。

 最期の景色としては最低な風景だ。


「『氷』」


 氷の壁によって、ガルフォードの攻撃は跳ね返される。

 しかし、二撃目を繰り出すとその氷の壁は簡単に砕けてしまった。


「『回復』。レンジ。頑張、、ってくれ、、る……?」

「もちろん。」


 ガルフォードの剣を爪で跳ね返す。

 そのまま一歩も引けない攻防が始まる。

 ガルフォードの攻撃を防ぎつつ、死角に攻撃をする。

 しかし、読んでいると言わんばかりのカウンターしか飛んでこない。

 押される一方だ。どんどん後ろへと下げられていく。

 『魔法』のリバウンドでもう座ってすらいないイザルナに傷をつけるわけにはいかない。

 気合だけで跳ね返し、ガルフォードを吹き飛ばす。

 腕から血が垂れる。


「これはお前の左腕だ。」


 ガルフォードは持っている俺の左腕を地面へと捨てる。

 汚物でも触っているような捨て方だ。

 そうか。今の無理な動き方で隙が産まれてしまったか。

 その隙をガルフォードが見逃すわけない。

 その一瞬を突かれた。

 これはかなりまずい。

 防戦一方とかの次元じゃない。勝てる要素が見つからない。

 どうやって、戦っても勝てないかもしれない。

 久しぶりだ。こんな気持ちになるのは。臆病で、弱小で、卑劣な自分に帰ってきた気分だ。

 よくない兆候だ。

 後ろにイザルナが居るのにかっこ悪いところは見せられないな。


「腕くらいあげるよ。ガルフォード。」

「この状況で、随分な言い草だな。」

「勝てるからさ。」


 もちろん勝機はない。

 でも、自分に言い訳でもしないと、鼓舞しないと、勇気を振り絞らないと。

 ガルフォード、過去の仲間には勝てない。彼を傷つけられない。


「行くぞ。」

「来い。化け物。」


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