第六話
イザルナは話し始める。目標について。悲願について。達成しなければいけない事柄について。
「私たちは終戦を目的として動いているの。この戦争は、【アルドリア】が勝手に領土侵犯をして始まったものだからすぐにでも父を説得して終わらせたいのだけれど上手くいってなくてね。」
「どうやって、戦争を終わらせるつもりなの?」
「【共和国】の王は協定を結ぼうとしてくれている。今のうちに協定を結ばせて、両国に平和を実現したいわ。『魔法』の素材となってしまう人たちを解放して、『魔法』という技術を使えなくするれば【アルドリア】は戦争を続けなくなる。」
「だから、助けてくれたのか。」
「そう。まだまだ『魔法』の施設は多く存在する。これをすべて鎮圧しつつ、父を説得するのが方針。」
「なるほど…」
馬鹿な俺でも多少は理解できた。でも、この方法だと時間がかかりすぎると感じる。
いくつあるのか知らないけど、施設を一つ一つ潰して回っても数年かかるんじゃないだろうか。それに、解放した人々はどうするのだろうか。
先日もすべての人を解放していたわけではない。こんな場当たりの方法で成功するのか疑問である。
「不思議な顔をするのね。レンジは。」
「今説明してもらった方法では時間がかかりすぎるのでは?」
「そうね。ここの人数だけでは限界があるわ。」
「ここだけ…?」
「これですべてではないの。もっとたくさんの仲間が動いてくれている。だから、私たちは父の説得を頑張る班なの。」
そういうことか。別動隊が頑張ってくれているのか。先日はたまたま助けてくれただけで、本当はここに居る者は施設の破壊を目的としていないのだ。
「イザルナは」
「おい。姫様に向かってなんだその口の利き方は。」
「蹴り殺すぞ」
ジルとギルが話に割って入ってくる。
「良いのよ。そうやってお願いしたのだから。」
「「でも」」
「良いから。」
「「はい」」
しょんぼりした二人は、外へ出て行ってしまう。
「ごめんね。あんまり気にしないであげて。」
「俺の方こそ、馴れ馴れしすぎた。ごめん」
「良いの。フランクな方が話しやすいから。」
「話は夕食の時にしましょう。ガルフォード。部屋に案内してあげて。」
「はい。こっちだ、レンジ。」
ガルフォードに連れられ、部屋に入る。2人1部屋のようだ。ガルフォードと同室。
「こっちがレンジのベッドな。」
「ありがとう。」
「俺神経質だから、夜中は静かにしてほしい。」
「わ、分かった。」
「助かる。同室なんて久しぶりだ。騎士時代を思い出す。」
「そうなの?」
「ああ。懐かしいな。隣のやつがうるさくてな、一度外に放りだしたことがある。」
「え」
「今でも思い出すな。窓からあいつを捨てたときの顔。」
「ちょっ」
「ちょっとおもしろかったんだよな、あいつ次の日には怒って部屋から出て行ったんだよな。」
「ま、待て。」
「なんだ。」
「何その、話。」
「昔話だ。」
「全然楽しそうじゃないんだけど。」
「なぜだ。」
「いや、窓から捨てたんだろ?俺も同じことされそうで怖えよ。」
「大丈夫だ。」
「そう?」
「うるさくなかったら。大丈夫だ。」
「同室解消したいです。」
「冗談だ。廊下にしてやる。」
「助かるよ…」
不安すぎる部屋に入ってしまった。リオフィンが懐かしい。あいつとはなんでも張り合ったな。なんでも共有したし、なんでも言い合った。元気にしているだろうか。
いや、あの攻撃で何人生き残ったかを考えた方が堅実的だな。
「どうした。辛気臭い顔して。」
「いや、何もないよ。」
「そうか。なら良い。姫様は今追い込まれている状態だからな。あんまりそういう顔を見せてやるな。」
「追い込まれてる?」
「第二王女は売国奴だって街では言われている。ここは宗教色の強い国だからな。思想が一つでも違えば、すぐに嫌われ者さ。」
「思想ね…」
「お前は信じるか?神様ってのを。」
「【共和国】ではそういう風習がなかったから、あまり考えたことがないなぁ」
「そういうものだよな。何かを信じているのは良いことだと思う。でも、それに依存して、すべてだと思い込むことは間違っていると思う。偶像崇拝を人間のすべてだと思うのは間違っていると思う。」
「ガルフォードも思想が強いように見えるけどな」
「そうか?」
「宗教に馴染みのない俺からするとそう見える。」
「気分を害したなら謝る。」
「そういうのじゃないよ。」
「そうか。」
何か言いたげなその顔にはいろいろと影があった。その影の内容は聞かない方がよさそうだ。いつか分かるだろう。教えてくれるまで待つしかない。
「夕食だ。」
「下に来い。」
ギルとジルが呼びに来てくれる。俺には二人の見分けがまだできない。これも時間が解決してくれるのか。
「さぁ!召し上がれ!」
フィリスが手を広げて、歓迎してくれる。てっきり、オルメンドがすべてやっていると思ったけど役割分担がしっかりしているらしい。
「こ、これ…」
「ん?どうした?」
「なにコレ…」
「は?」
目の前に並べられた肉塊を見る。焼けた匂いが鼻を刺激し、気分が悪くなる。肺に空気が入ることを体が拒否する。