第五十九話
(間話―天才な凡人②)
・フィリス視点
意味不明の男を家に招いてしまった。
正体不明の男は椅子に座ってご飯を食べている。
対面に座って、食べ終わるのを待つ。
「それで何が目的なの?」
「ん?ああ、優れた魔法師を仲間にしに来た。」
「だかr」
「分かった。かわいい子をナンパしに来ただけだ。」
「正直に言って。」
「分かった。少し、力を貸して欲しい。仲間とはぐれてしまって探して欲しいんだ。」
「それこそ私じゃなくてもいいじゃん」
「足のつかない魔法師が良いんだ。」
なるほど訳アリらしい。それで人があまり居ないここでナンパしに来たのか。
このあたりで魔法師は私だけだから。
「それで、す・ぐ・れ・た魔法師に話をしに来たんだ。」
「気を悪くしたか?」
「そんなことないよ。このす・ぐ・れ・た魔法師は、そんなことで気分を害さないよ。」
「悪かった。そんなにこじれているとは思わなかったから。」
「だから、怒ってないよ。」
笑顔を作り、相手をにらむ。
「悪かった。怒るのも当然だとは思うが、力を貸して欲しい。」
「まぁ…良いけど、なんで最初からそう言わなかったんだい?」
「顔を見れば、どんな奴かは想像つく。正直に話したらだめだと察したからだ。」
「それであの方法を思いついたんだ。変わっているね。」
「そうか…俺は、変われているのか…」
ガルフォードは小声でほっとした顔を見せる。
なんか可哀そうだし、手伝ってあげるか。
時間が無いわけでもない。
この程度なら、凡人の私でもできる。
「で、どこではぐれたの?」
「ああ。街で買い物中に」
「なんだ。迷子か。」
「違う。その言い方はよくない。」
「じゃあ、何?」
「えぇっと…そうだな…方向を見失っただけだ。」
「迷子じゃん。」
いい歳だろうに、迷子らしい。
そんなに複雑な地形ではなかったように思うが。
この後も、迷子じゃないとごねていた。
あまりにうるさいので、無視して街へと向かう。
人であふれている街中では誰を探すにしても難しい。
相当、目立つ人物でなければ時間がかかるだろう。
「良いか。俺は迷子じゃない。」
「で、どこで迷ったの?」
「ここだ。」
何もない路地裏だ。
この一本道で迷えるこいつは天才だな。
しかし、こんなところで何をしていたんだろうか。
「良いか。俺は迷子じゃない。」
『魔法』で足跡を見る。
『魔法』でも、流石に顔も知らない人物を探し出すのは厳しい。
似顔絵を描いてもらったが、参考になるような物ではなかった。
「3人分?」
「ああ。俺含め、3人で買い出しに来たからな。」
「二手に別れているね。」
「買う物が多くて、別れたんだ。」
「集合場所とか決めてなかったの?」
「決めていたんだが、居なかった。」
迷子じゃないというのもうなずける。
向こうの二人が迷ったのか。
よく、この面子で土地勘のない場所に来ようと思ったな。
世の中不思議である。
「足跡を追うにも、一日分の足跡を探すのは魔力が足りないね。集合場所は?」
「近くの噴水だ。」
「あ~………」
なぜ、はぐれたのか分かった。
断言しよう。こいつは迷子だ。
なぜなら噴水はこの街の名物であり、この街が水の都とも謳われる所以であるからだ。
故に、噴水なんてそこら中にある。
そんなアバウトに集合場所を決めたら迷うに決まっている。
なら、場所はあてにならないな。
「もう一回相手の特徴を教えて。」
「絵を描いただろ。」
「うん。下手過ぎて参考になったよ。」
「そ、そうか…そっくりな顔をした双子で、赤髪。身長は低くて、まだ子供だ。剣を持っている。あ!あと男だ。」
「なるほどね…」
あまり使いたくはない手だが、使うか。
「ちょっと手を貸して。」
「ああ。」
ガルフォードの手を握る。
「『遠感』」
相手の心の声を一方的に聞くことができる。
この『魔法』は『精神操作』の下位互換だ。
そして、デメリットが多い。
一つ目に動いたら解除されること。
二つ目にうるさすぎて覚悟しないと脳が壊れること。
三つ目に一人一人を区別できないこと。
四つ目に声が聞こえたとしてどこに居るかは判断できないこと。
もっといろいろ制約があるが、現状で面倒なデメリットはこのくらいだろう。
たちまち周囲がうるさくなる。
悩んでいる人。仕事に熱中している人。心配している人。恐れている人。探している人。
様々だ。
『ガルフォードの馬鹿はどこに行ったんだ?』
見つけた。この子に違いない。
そこまで遠くに設定していないからすぐに会えるだろう。
「見つけた。」
「ほんとか!?」
「うん。この近くに居ると思うよ。徒歩で探そう。」
「助かる。本当にありがとう。」
「いや…」
素直に誰かに褒められたのはいつぶりだろうか。
この感覚をずっと忘れていた気がする。




