第五十七話
・レンジ視点
全員が起きて話し合いが始まる。
「みんな大丈夫…じゃなさそうだね。」
ガルフォードは疲労で憔悴しているだけで、回復すればいつでも動けるそうだ。
フィリスは両腕を失った。『魔法』のリバウンドにより、自由に『魔法』を使うことができないらしい。もう、戦闘不能と捉えてもらっていいそうだ。
ジルとギルは負傷と同時に『魔法』による弊害で両腕を使うことができなくなった。彼らもまた、戦闘不能とみなして欲しいらしい。
俺も体調が芳しくないので、数日は戦うことができないだろう。ガルフォードと一緒で、回復さえすればすぐにでも動ける。
イザルナは体中の傷とトラウマが蘇ったことで休養が必要だ。と思ったが、本人は気にしないで欲しいらしい。問題ないと本人は豪語していた。心配だが、心配しすぎて、負担を掛けてはいけない。
レイヴァン、ルガン、オルメンドの3人は怪我もなくすぐにでも動くことができる。ルガンなんて、馬車の前で待機しているほどだ。
これが現状の、本人たちが言う状態だ。
本当はもっと深刻かもしれない。
かなり良くない状況である。
3人が戦線離脱。2人は休養が必要。
すぐには動けそうもない。が、王宮と教会であれだけの騒ぎを起こしたんだ。ここをすぐにでも動かないとまずいだろう。
これはイザルナも理解しているらしい。
表情では分からないが、内心焦っているみたいだ。
幸い、馬車を動かすことはできるらしいので移動を続けながら打開策を練るしかない。
と言うことで、移動が始まる。目的地はない。
教会と王宮の連中から身を隠すための旅路。
ガルフォードはかなり疲れているらしい。馬車の揺れですぐに眠ってしまった。
フィリスは腕が無くなってしまったので、眠っているガルフォードの肩を借りて休憩している。
ジルとギルは腕が使えないし、俺の傷を共有しているので休養中だ。オルメンドの膝を片側ずつ使って、眠っている。
俺は、翼を広げて膝の上に居るイザルナを隠すように覆う。光を遮断している。
こんな人間とは程遠い生物の近くで安心できるのだろうか。
「イザルナ?」
「何?」
「そんなところで安心できるの?」
「うん。一番安心できるよ。これを毎日やって欲しいくらい。」
「俺が、こんな姿になってもうろたえないんだ?」
「なんでそんなことを心配しているか分からないよ。レンジはレンジでしょ。」
「そうだけど…」
「ほら、レンジも疲れているんだから寝た方が良いよ。」
「わ、分かった。」
ここまで信用されていると逆に心配になる。
この子の期待を裏切ることが無いように全力を尽くすしかない。
イザルナを抱きかかえて、静かに眠る。
俺もかなり疲れているようだ。すぐに夢を見ることができた。
夜は誰も寄り付かない森の中で、休息をとる。
ルガンは負傷しないとしても、数日動きっぱなしだからこの中で最も疲れているだろう。
こまめな休息が必要である。
オルメンドとガルフォードが食料を調達してきてくれる。
焚火の準備をして、火をつける。
イザルナは俺の膝の上から動こうとしない。翼の中で、しがみつくように抱き着いている。
「イザルナ、ご飯だよ。」
「…食べさせて。」
「分かった。」
焼けたキノコや果物を胸元にあるイザルナの口へと持っていく。
静かに食べる彼女の顔は確認できない。
食べ終わった彼女は静かな吐息を吐きながらすぐに眠ってしまった。
「レンジ。」
「姫様は」
「「大丈夫なのか?」」
「多分大丈夫だよ。もう、眠ってしまったみたいだけどね。」
「それなら良いんだ。」
「レンジにちゃんとお礼を言ってなかったな。」
「「ありがとう。助かった。」」
「え?助けてもらったのは俺だと思ってたけど…」
「そんなことない。」
「あの時にレンジが来てくれなかったら」
「「死んでた。」」
「よかった。また、足を引っ張ったんじゃないかと心配していたから。」
「そして」
「これまでの態度を」
「「謝罪したい。ごめんなさい。」」
「良いよ!そんな!」
「「謝らせてくれ。」」
「でも…」
「受け入れてあげなよ。レンジ君。」
フィリスはガルフォードの背中を借りながら座っている。
そこから声を出してきた。
「う、うん。」
ジルとギルは嬉しそうな顔を見せる。
オルメンドのところへと走っていき、頭を撫でてもらっている。
にこやかな光景だ。俺も、二人に認められたのだろうか。
「悪いね。ガル。介護してもらって。」
「良いさ。助けてもらっているし、長い仲だろ。遠慮するなよ。」
「助かるよ。」
絶望的な体にしては嬉しそうだ。
ガルフォードとフィリスはそんなに仲がいいのか。
知らなかった。




