第五十一話
・ギル視点
ジルと共に剣を抜く。
呼吸を合わせる。
「申し訳ないね。侵入者を生きて返すわけにはいかないんだ。」
その言葉を皮切りに、剣の打ち合いに発展する。
あいつは『顛末』と言っていた。
どんな『魔法』なのか考えながら戦わなくては。
ガルザンの一撃目をジルが止め、俺がカウンターを繰り出す。その攻撃を避けることなくよける。
まるで当たらないことが分かっていたように。
「なっ!」
ガルザンがジルを吹き飛ばし、こちらに攻撃を繰り出してくる。
それを腕でガードする。腕に入り込んだ剣が腕を切り落とすことはなかったが、これ以上は剣を振れそうもない。
後ろから近づいてきているジルに蹴りで応戦し、俺は剣を腕に押し込めれて壁まで吹き飛ばされる。
おかしい。見えていないはずのジルの動きまで読まれている。そのうえ攻撃まで見切られている。
こいつは他人の動きを読み取ることができるのか。
壁に張り付いているジルも同じことを考えているみたいだ。
「「合わせろ!俺に!」」
二人で大声を上げ、ガルザンに向かって突進する。
剣が振れない俺が一撃目を担当する。その攻撃はガルザンを捉え、動けなくする。二撃目はジルが放つ。がら空きの背中は剣を受け入れてくれるだろう。
と思ったが、容易に体重移動だけで俺をいなし、ジルの攻撃を簡単に止めた。
床に倒れた俺はすぐに立ち上げり、次の攻撃態勢に入る。が、ジルが吹き飛ばされて、俺の方へ飛んでくる。
再び壁まで追い詰められ、血を出しながら立ち上がる。
「うん。素直だね。」
遊ばれているようだ。
通用しない相手。勝てない相手。呼吸すら崩れていない相手。
親兵と戦うのは初めてだ。何度か近くで戦いを見た程度だが、やりあいたくないと幼いながらも思っていた。
いざ、目の前に立たれると勝てる勝てないじゃなく勝負にすらならない。
向こうは、俺たちのことを明日にでも忘れているだろう。
「本を読んでいても良いくらいだね。」
ガルザンは机に置いてある本を開き、剣をその場に置く。
もう、こちらには興味がないみたいだ。
「「…舐めやがって。」」
「舐めていないよ。こうなることは分かっていたからね。計画に従っているだけだよ。」
何、訳分かんねぇことを。
立ち上がり、相手をにらみつける。
「行くぞ。」
「うん。」
「呼吸を乱すなよ。」
「ギルこそ。」
片手で剣を握り、相手の体を目の中に捉える。
血だらけの体でその場を駆け巡り、相方の動きを考えずに自由に走る。
兄弟そろって自分のことしか考えない動き方で、連携をなくす。
バラバラの攻撃で相手を翻弄する。
ガルザンに当てようとするが、簡単に剣で防がれる。ジルの二撃目も簡単に防がれる。
三撃目、四撃目、どんどんと攻撃を続けるが、一向に隙が現れない。それどころか、攻撃をしているはずの俺たちが追い詰められていく。
息が上がり、重症である腕も感覚がなくなってきた。
傷が体にどんどん増えていき、床は血で何かを描いているようにまばらな斑点が見える。
ガルザンは無傷のまま。
ついに俺がリズムを崩してしまう。
その場に立つことができなくなり、地面にひれ伏してしまう。
「ギルっ!!」
「待っていたよ。この瞬間を。」
ガルザンはジルを吹き飛ばして、こちらに向かってくる。
今までとは毛色が違う。殺気をむき出しにしたその行動に、身震いしてしまう。
「これで物語は完成した。私の勝ちだよ。」
その一太刀で胸が切り裂かれる。
「ギル!!」
血を吐き出しながら、腹から流れ出る臓物に自分の無力さを実感する。
ジルが近づいてくるが、その焦りをガルザンは見逃さない。
俺を斬り、最期のトドメを刺す前にジルの方へと向く。
殺意の方向がジルへと変わる。
焦りと混乱の中で、ジルに放たれるその一撃は空を斬った。
当たらなかった。彼の技量では外すことの方が難しいはずなのに。
その攻撃は誰も捉えることはできなかった。
その刹那。壁が破壊され、一人の男が突入してくる。
体に翼が生え、鱗に身を包み、その動物のような目が彼をなんと表現すれば良いのか混乱する。
しかし、動物と言うにはあまりに理性的で、人と言うには強すぎる彼には覚えがあった。
レンジだ。迷わずに即答できた。




