第四十八話
(間話―騎士の葛藤④)
・ガルフォード視点
まだ朝だと言うのに、疲れた。
自室へと戻り、椅子に座る。
何が勧誘だ。馬鹿馬鹿しい。
俺が弱者に共感したい?昔のあこがれを叶える?
鼻で笑いたくなる。
俺は成長したんだ。現実を直視しなくてはいけない大人へと。
あんなのに協力する馬鹿はいないだろう。現実を正しく分析できていない結果だ。
昨日埋葬した丘へと向かう。
昨日は邪魔が入ったからな。少し、ゆっくりしたかった。
道中で買った酒を土にかけて、しみこませる。
隣へと座り、街を見下ろす。
これで良い。これこそが正しい。何も間違っていない。
俺は悪くない。地位もある。金も。やりがいも。なにもおかしいことはない。
そうだ。あんな小娘に絆されて、なにマジになっているんだ。
馬鹿らしい。
帰ろ。なんか、虚しくなってきた。
街の様子は普段通りだ。
物を売っている商人。おいしそうな匂いを漂わせる料理人。仕事から帰って来る兵士。
何一つおかしなことはない。
すれ違う人にお金を集る物乞い。人の視線に敏感に反応する掏摸。女性に必死に話しかける男。
おかしくないんだ。
誰もが自分よりも楽しそうで幸せそうな笑顔をしているが、俺は間違ってない。これが俺のしたかった仕事だろ。
俺は王に選ばれたんだ。何も恥ずべきことではない。
帰路の途中でいじめられている少女を見つけた。
少年が3人掛かりでいじめている。
ため息をつきながら、近づいていく。
「何してる。」
「わぁ!騎士だ!逃げろ!!」
顔を見た瞬間に少年たちは逃げて行った。
顔見た瞬間逃げるくらいなら最初からするなよ。
手を出して、少女を助ける。
「大丈夫か?」
「……うん。」
「そうか。もう家に帰れ。」
「……」
「?どうした。」
「…ありがとう。おじさん。」
「おじさんじゃない。お兄さんだ。」
「ありがとう。お兄さん。」
「ほら、行け。」
「うん!」
少女は嬉しそうにどこかへ走っていった。
これまでの自分を想像する。
何をやっても、向こうから聞こえてくるのは暴言だった気がする。
今まで、感謝されたことがあっただろうか。
どんなことでも、やって当然のような顔をされて。処刑、尋問、護衛。アホみたいに我武者羅にやった。
俺は、あのいじめっ子たちと何も変わらないことをやってきたのか。
少女の笑顔が自分に刺さる。
あんな顔を見たのはいつぶりだろうか。
部屋に戻って、ベッドに体を押し付ける。
考えることなく、眠りにつく。
朝、早めに目を覚まし着替える。
剣を腰に付けて、部屋をそのままに飛び出す。
王宮の外まで行き、一台の馬車を発見する。
何も言わずに、それに乗り込む。
中には、イザルナ・アルドリアと子供が二人乗っていた。
名前は、ジルとギルというらしい。
「来てくれてうれしく思います。」
「黙れ。俺は気分次第で帰る。」
「それで結構です。」
「おい。」
「お前」
「「姫様になんて口の利き方だ!」」
「ガキども世話はしないからな。」
「ええ。問題ありませんよ。」
「「誰がガキだ!!」」
「お前らだ。」
「「なんだと!?姫様!こいつはやめておきましょう!」」
「二人とも落ち着いて。」
「「でも…」」
「後でお菓子あげるから」
「「ほんと!?」」
「ガキじゃねぇか。」
「ガルフォードさんも大人げないですよ。」
「俺は、ガキと弱い奴が嫌いなんだ。」
「そうですか。じゃあ、子供みたいに騒がないでください。」
「あ?」
「なんだ」
「ガルフォードも」
「「子供か!」」
「黙れ!ガキども!」
「三人ともやめて。静かにしないとだめでしょ。」
「「「俺はガキじゃない!」」」
俺はこの選択を正しいと思える日が来るのだろうか。
後から姫様に聞いた話だ。
主犯の替え玉として王宮に来た青年は詐欺師だったらしい。姫様の名前を出して金をせびっていた。
そこをジルとギルが取り押さえ、王宮に連れ出したらしい。
その担当である俺を勧誘することができて一石二鳥ということだ。




