第四十四話
・ガルフォード視点
剣が再びぶつかる。
『剣豪』のおかげでかなり優勢だ。
剣劇だけならこいつは手も足も出ない。
ダリオスの体に傷をつけながら壁側に追いやっていく。
ダリオスの背中が壁とくっつく。
「処刑場がこんなに狭いわけねぇよなぁ!!」
処刑場の大きさが変わる。
先ほどの二倍ほどの大きさに膨れ上がった。
「ちっ!」
壁とくっついていたダリオスの背中の後ろには広い空間が出現し、追い詰められていたダリオスは余裕の顔を見せる。
驚いた直後にカウンターを貰うが、それを受け流し、右腕を切り落とす。
後ろへよろめいたところで、首を狙う。
「ここで死ぬわけねぇよなぁ!!」
またか…。
首から狙いを変えて、左腕を切り落とす。
腕と共に落ちた剣を明後日の方向へと蹴り飛ばし、追撃する。
「さすがだなぁ!!これじゃ打つ手なしだぜ!!でも、負けねぇ!!腕が生えるなんてなぁ!!」
突然生えてきた両腕にうろたえず、そのまま進む。
腹にパンチを打ち込もうとする右腕を切り落とし、胴体を両断する。
そのまま首を狙うが、視界が歪む。
足がふらふらになり、情けない力で剣を振るが当たらない。
「限界みたいだなぁ!!『共有』が無い状態で無理するからだよぉ!!」
ダリオスの後ろに倒れ込む。
『共有』。周囲に人が居なくても遠隔で魔力を供給してくれる『魔法』だ。これがあるおかげで【アルドリア】の魔法師は制限なく『魔法』を使い続けることができる。
これが無い今、これ以上『剣豪』を使うことができない。
あと一歩だったのに。
ダリオスが腕を生やして、自身の怪我を治してこちらを向く。
「最強様もこのざまかぁ?」
「クソっ…」
ダリオスは俺の剣を拾い上げて、目の前に剣を向けられる。
「言い残すことは?」
「……地獄で待ってろ。」
「じゃあな。戦友。」
「『風』」
ダリオスの腹に大きな穴が開く。
その不意打ちに反応できていない。
剣が手から零れ落ちて、剣が地面とぶつかるとようやく自分の死を理解したみたいだ。
死ぬことが確定した今、彼は『虚実』を使うことができないだろう。
血を吐きながら倒れる。
朦朧とする意識の中で、フィリスと目が合う。
「たす、、、かた」
「悪いね。ガル。良いところ貰ったよ。」
一人で戦うのが当たり前だった依然と比べて誰かに助けられないと勝てないほど弱体化した。
でもこれでよかった気がする。これが俺の望んだ自分の運命だ。
心地いいとは言えない地面で、満足感に酔いしれる。
そのまま眠りについてしまう。
目を瞑る前に翼のような影を視界に捉えて。
・レンジ視点
自分の背中の翼は人を二人運べるほどの力があった。
まだまだ余力があるところを見ると、5人くらいは運べるのかもしれない。
イザルナの体調も芳しくないので、どこに何があるのか分からない。
空を飛んで周囲に人が居ることころを探す。
視力も成長している。遠くのものがよく見える。
そして、嗅覚も。血の匂いを感知した。
どこに行けばいいのか分からないのでひとまずそこへ行ってみることにした。
外からの入り口が無かったので、天井を破壊して中に入る。
そこで目にしたのは、血だらけのフィリスと気絶しているガルフォードだった。
そして、見覚えのない男も寝ていた。腹に大きな風穴を開けて。
ガルフォードたちが戦った形跡がある。彼らは勝つことができたみたいだ。
イザルナを抱えたまま、重症のフィリスに声を掛けてみる。
「フィリス!大丈夫か!?」
「レンジ君かい?」
「フィリス!よかった!無事…ではなさそうだね。」
「ちょっとね。本当に死ぬかと思ったよ。」
「よくその傷で生きてるな。」
「秘術と言うか、奥の手でね。」
「どんな?」
「日ごろから魔力を貯めておくことで死んだときに強制的に魂を現世に持ってくるっていう『魔法』だよ。自分が考えたとはいえ成功するとは思わなかったけどね。」
フィリスは天才なんだな。
そんな『魔法』を独自で開発するなんて。
「目の前に居る私は、実際には死んでいるのだけどね。魂が自分の体を動かしている感じかな。」
「そんなことできるんだ…」
「うまくいくとは思わなかったけどね。反動で今日は動けそうもないから運んでくれるかい?」
「もちろん!ガルフォードは?」
「ガルは大丈夫だよ。気絶しているだけだよ。」
「良かった。馬車のところまで連れていくよ。」
「助かるよ。」
「じゃあ、行くよ」
フィリスを持ち上げると、両腕がなかった。
痛みはないのかと聞きたかったが、フィリスも限界のようで眠ってしまった。
布で止血だけして、ガルフォードを担いで空から馬車のところまで戻った。
「誰だ…?」
「俺だよ、ルガン。」
「その声…レンジか!?」
「ちょっと怪我人を預けたい。」
「それは構わないが……」
様変わりした俺に動揺しているらしい。
オルメンドが馬車から顔を出したので、3人を預ける。
「変わったね…レンジ君…」
「そうですね。また、後で話します。」
「あ、ごめんね。頑張って!」
「はい!」
ジルとギルの援助に向かう。
俺が馬車の近くで倒れている親兵に気が付くことはなかった。




