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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第四十一話

「ここでお前を殺したらどうなる?」

「てめぇらはそんなこと考えなくていいんだよ!心配しなくても俺が殺してやる!!」

「行くよ。レンジ君。時間がない。」

「ああ!」


 フィリスは俺の肩に手を置いて、『魔法』を行使しようとする。

 俺も剣を握って戦闘態勢に入る。


「『結界』は外敵からは強いんだ。」

「?」

「でも、入ってしまえば中では自由に『魔法』を使える。」

「それがどうした?」

「じゃあ、頑張ってね。」

「なに言って…」

「『移動』」

「ちょっ!」


 言葉を発したところはどこかの地下牢のようだ。


「フィリス…?フィリス!?」


 彼女を探してもどこにもいない。

 周囲にあるのは空の牢屋だけ。

 フィリスは『移動』を使って俺だけをここに飛ばした。

 自分はダリオスと戦う選択をしたらしい。

 おそらく、俺たちでは勝てないと判断したのだ。


「クッソ…」


 自分が無力なばかりに、フィリスにまで負担をかけてしまった。

 彼女の覚悟を無下にしてはいけない。

 イザルナを見つけてすぐにでも、援護しに行かなくては。

 邪念を払いのけてイザルナを探すために足り回る。

 

どこからか漂う血の匂い。

 不気味な匂いについて行ってみる。

 その先には、一つの牢屋があった。


「な…」


 イザルナが居た。

 全裸の状態で。

きれいだった体には痣が節々に残り、切り傷のような物がそこら中に生えていた。

 顔にも痣があり、目を開いていない。

 手を拘束され、天井からぶら下がっている。


「イザルナ…?」


 目の前に柵があるにも関わらず、何もなかったのようにそれを壊して前に進む。

 イザルナを拘束している鎖を剣で斬り、イザルナを抱きかかえる。

 まだ、暖かい生きてはいるみたいだ。

 でも、全身の傷が酷い。

 いつもの明るい笑顔の彼女は、気を失って話しかけてくれない。

 罪悪感に涙を流す。


「ごめん、、、ごめんイザルナ、、、俺が、、、」

「れ、、、んじ、、、?」

「イザルナ…?」


 彼女は震える手で頬に手を置いて、涙を拭ってくれる。

 顔を肩に押し付つける。

 安心する匂いと帰って来る体温で彼女の無事を再確認する。

 何度見ても、無残な彼女に腰が抜けてしまう。

 その場に座り込んで、彼女の彼女を強く抱きしめる。


「ごめん、、、イザルナ、、、、ごめん、、、」

「だい、、、じょうぶ、、、?ない、、、てるよ、、、」

「うん、、、ごめん、、、ごめん、、、ごめんなさい、、、」


 頬に触れる彼女の手を二度と離したくない。


「ここに居るとはなぁ。やっぱり殺しといたほうが良かったか?」


 振り返らずとも声で誰か分かった。

 イザルナを連れて行き、こんな姿にした元凶。

 先日教会でルシェルと名乗った男だ。


「『結界』内で『魔法』を行使するとは無茶するよなぁ?」


 涙を拭きとり、自分が着ている服をイザルナに被せて床に静かに寝かせる。

 背中が汚い床に触れないように、自分の服を下にして。上からも服をかけておいた。

 少し寒いだろうが、少しの間だけ我慢してもらおう。

 頭をなでて、立ち上がる。

 俺はほぼ、半裸に近い。


「かっこ悪い奴だな。負け犬にはちょうどいいかもなぁ。」

「お前を殺す。」

「強えぇ奴はいちいち宣言しなくても殺すんだよなぁ。」

「イザルナにこんなことしたのはお前か。」

「だったらどうするだよなぁ?」

「その胴体を引きちぎってやる!!」


 鞘を捨てて、剣で立ち向かう。


「こっちのセリフだよなぁ!!」


 剣がぶつかり、鋼の音が充満する。

 剣劇は互角のようだが、こいつの動きはどこか歪だ。

 動きに違和感がある。『魔法』で何かしているのかもしれない。

 徐々に動きを捉えられなくなる。

 剣がぶつかるが、ルシェルは余裕の表情で軸足とは別の方で蹴りを入れてくる。

 腹に入ったその蹴りを無視して、体重を押し込み相手を引かせる。

 態勢を崩したところに斬撃を繰り出す。


「遅せぇなぁ!」


 すべてを避けられ、ぶつかった剣が手元から離れていく。

 剣が宙を舞っている間にルシェルは俺の両腕を切り落とした。


「っ!!」

「弱えぇ奴はイキがるだけなんだよなぁ!!」


 首元に飛んできた剣を咄嗟に歯で噛み砕く。

 それに驚いたルシェルに宙を舞っていた剣を回収して、下半身と上半身をつないでいる腰のあたりを両断する。

 ルシェルは真っ二つになり、地面に転がる。


「はぁ…はぁ…。なんだ、今の?」


 自分でも何をやったのか分からない。

 剣ほどの強度をもつ鉄を砕いたのか?歯で?

 ありえないことだ。どうやってやったのか自分でも分からない。


「てめぇ…調子に乗るのはまだ早えぇんじゃねぇのかなぁ。『大回復』」


 ルシェルの胴体がくっ付き、そこに立ち上がる。


「ここからが本番だよなぁ。」


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