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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第四十話

・ガルフォード視点


「大丈夫かい?ガル。」

「フィリス…。名案が浮かばなくてな。」

「そうだろうね。ちょっと詰みに近いね。」

「ああ。」


 フィリスが隣に座る。

 街はずれの森の中に入ってくる者はいない。

 ここでは二人だけ。

 彼女は視野が広くて、いつも気にかけてくれる。


「どうすればいいと思う?」

「そうだね…なんで、ルシェルっていう人が来たのかな?」

「それは…」


 姫様が来たからだろう。

 姫様は王家の政治思想と教会の宗教思想を批判している。

 そんなことを王家の出身者がすれば信頼に関わる。そこで、王家と教会は協力して姫様を捕まえるのに躍起になっているのだろう。

 ルシェルという人物は親兵だ。レンジが負けるのも無理はない。


「いや、待てよ。」


 なんで、王家は姫様が教会に居るってこんなにも早くに知れたんだ?

 教会で最初に会った、あのおっさん。

 姫様は知らないみたいだった。これが、そもそもおかしい。

 姫様は何回も教会に行っていたはずだ。百回は超えているだろう。

 聖職者の階級はほとんど変わることはない。上の人間が死ぬか、譲るかしないと席が空かないからだ。

 これを考えると、姫様があの男に会ったことないのはおかしい。

 教会であそこまで自由を許されているのは、かなりの階級があるはずだ。なのに、なぜ…。


「そうか。あの男は存在しない人物なのか。」

「どうしたの?」

「あの教会で会った男だ。あの男は現実には存在しない。」

「それって、どういうことだい?」

「『魔法』で人格を形成した人間とかか…」

「そういうことね。『怨霊』とかが該当するのかな。霊体を具現化する『魔法』でね、結構制約が厳しいんだけどできなくはない『魔法』だよ。でも相当な鍛練が必要になるし、魔力もかなりの量が必要になるはずだけど。」

「それを可能にするのが王家の権力であり、教会の意向だったんじゃないのか?」

「でもそうだったとして、どうして教会で待ち伏せみたいな真似を?」

「どこからか情報が漏れたんだ。じゃないとありえない。」

「そうなると…」

「ああ。姫様が危ない。」


 拷問ではなく、処刑されてもおかしくない。

 すぐにでも王都向かわなくては。


「すぐに馬車を出すぞ。今すぐに出発だ。」

「分かった。」


 急いで全員が待っているところに戻り、馬車を動かす。

 数日で到着することを祈って。


・レンジ視点


 焦りで周りの景色が頭に入らない。

 自分で走ってでも、イザルナを助けに行かなくては。

 ルガンも急いでくれているが、街道を走る他の馬車が邪魔で思うような速度を出すことができない。

 全然落ち着かない。

 変な緊張と不安に煽られ足が震える。

 ガルフォードは特に話をしなかった。

 まだ、何かを考えているようだ。

 フィリスには「気にしない方が良い」と言われたが、気にしないわけない。

 イザルナが連れていかれた先でどうなっているのか想像ができないのが一番怖い。

 ここで自分の無知について怒りが湧いてくる。


 ルガンは休むことなく走り続けた。

 その結果、数日ではなく二日で王都付近へと到着した。


 王都【アルドリア】。元が荒野だったとは思えないほどに発展した【アルドリア】の中央都市。人々は『魔法』を駆使して豊かに今日も一時を過ごす。民間の『魔法』使用率は70パーセントを超え、『魔法』によって生活が支えられている。他種族を寄せ付けないこの街は、人間にとっては楽園とも言うことができるだろう。


「ここからは別行動だ。レンジとフィリスは先に乗り込め。俺とジル、ギルは走っていく。すぐにでも行け。」

「分かった」

「もちろん。行くよレンジ君。」

「頼む。」


 フィリスに肩を掴まれて、『移動』する。

 二人で魔力を補完しあうことで、魔力を温存する目的だ。


 『移動』した場所は何もない暗がり。

 周囲を見渡しても何もない。王宮とは思えないその光景に呆気にとられる。


「ここは?」

「失敗した。」

「え?」

「思ったより『結界』が強かったみたいだね」

「それって…」

「てめぇら、どこに侵入したのか理解できてるか?」


 周囲に光が灯る。

目の前からは銀色で長髪の男が登場する。

 怒っているのか、イライラしているのが肌で分かった。


「てめぇら、覚悟できてんだろうな!」


 光探したその場所を理解するのに時間はいらなかった。

 壁や床が真っ赤に染まった部屋。

 物騒な道具や拷問機器であろう物がきれいに並んでいる。

 ここは処刑場だ。

 多くの罪人がここで罪を償う。命を差し出す形で。


「誰だ。お前は。」

「死ぬてめぇらには関係ねぇだろ!俺は親兵!ダリオスだ!!」

「なんで、こんなところに俺たちが居るんだ。」

「てめぇらは知ったところで変わんねぇよ!ここは王宮に『移動』したアホどもを処刑するための場所だ!!俺はここの執行人なんだよ!!」

「聞いたらなんでも答えてくれるね。あいつ。」

「そうだね。」

「聞こえてんだよ!!俺は口が堅い方なんだ!!」

「イザルナはどこに居る。」

「てめぇらに質問は許されてねぇんだよ!姫様は収監中だ!!王宮の地下牢でな!!」


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