第三十九話
・ガルフォード視点
「ジルとギルはできるだけ騒ぎを起こして引きつけろ。フィリス、俺と来い。火をつけて回る。火をつけ終わり次第姫様と合流する。」
「分かった。」
「「分かった。」」
二人と別れる。
「書庫に火をつけないように気を付けろよ。」
「無茶言うね。この火薬とか言う物を使うのは初めてだから何とも言えないよ。」
「お前は天才だから、できるさ。」
「ガルも良いこと言うようになったじゃん。」
「おだててやったんだから頑張れよ。」
「分かっているよ。」
仕掛けてある火薬に火をつけて回る。
貴重な代物なので、あまり数はないがボヤ騒ぎを起こすのには十分な数だ。
火薬は『魔法』を使わなくても爆発を起こすことができる画期的な発明品だ。
武器への応用を検討しているらしい。
走り回り、すべての火薬に火をつけた。
中の兵士や聖職者は消火活動に躍起になっている。
地図ではこの先に書庫がある。
レンジと姫様はそこに居るはずだ。
『魔法』でも火を付けながら走る。
フィリスも俺も魔力が枯渇した状態だ。これ以上『魔法』を使うことは困難だろう。
大きな扉を開ける。
血の池とその上に寝そべっているレンジを発見する。
姫様はどこにもいない。
「姫様!!どこにおられますか!!」
「待って、ガル。レンジ君に話を聞こう。よくないことがあったみたいだ。」
「そうだな。」
レンジに近づく。
体に傷はなさそうだ。
でも、足元の血の池が気になる。
量から見るに誰かが死んでいてもおかしくない。
姫様が…?怖い想像を膨らませながらレンジに声を掛ける。
「おい。レンジ。おい!」
「寝ているみたいだね。傷もないし。彼は何かしらの『魔法』で眠っているように見えるね。」
「起こせそうもないか?」
「そうだね。二人とも魔力が足りなさすぎる。時間を待つしかないよ。どうする?」
「そうだな…この時点で本を見つけられていないのはまずい。兵士たちがここまで来るのも時間の問題だろう。姫様の安否が気がかりだ。一度、馬車に戻った方が良いかもな。」
「分かった。レンジ君を担いでくれる?」
「ああ。」
レンジを担いで外を目指す。
ジルとギルには集合場所を指定しておいた。
時間になれば馬車に帰って来るだろう。
しかし、あの本の量の中から特定の本を探し出すには数人では足りない。
もう少し人員が必要だ。
姫様も理解していたはずだ。あの量から探し出すのは現実的じゃない。もっと場所を絞る必要がある。
数人の兵士に対処しつつ、街はずれの小屋を目指す。
顔を隠して、できるだけ人目に付かない道を通ってきたからすぐにはバレないだろう。
小屋にはルガンとレイヴァンとオルメンドが居た。
あとはギルとジルが帰ってこれば問題ない。
姫様の安否を唯一知るレンジの回復を待つしかない。
・レンジ視点
目に光を入れる。
と言っても暗い。焚火の明かりのようだ。
全員が緊張の雰囲気で俺の顔を見ている。
体に不調はなく、ただ寝ていただけのようだ。
「起きたか。」
「…!イザルナ!!」
思い出した。こんなことをしている場合じゃない。
イザルナが連れていかれたんだ。
「落ち着け。何があった。」
全員の中でもっとも冷静なガルフォードが話をする。
「イザルナが!イザルナが連れてかれた!」
「何?どんなやつだった?」
「そんなこと関係ねぇだろ!!」
「姫様が連れてかれたのに!!」
「「レンジお前!!何してたんだ!!」」
ギルとジルの激昂。
二人は今にも殴りそうな勢いで立ち上がった。
ルガンとフィリスが必死に止めている。
「二人を落ち着かせろ。」
「やっているけど、無理があるよ。」
「こいつら力強すぎだろ。」
「「こいつ!!」」
「まずは、レンジに話を聞く。オルメンド何か飲み物を出してくれないか?」
「は、はい。すぐに。」
「レンジ。何があったのか詳しく正確に教えろ。」
「あ、ああ。」
事の顛末を話す。
静かに、正確に、冷や汗を垂らしながら。
「…はぁ。」
「ごめん…俺が…」
「少し考える。」
ガルフォードも疲れているようだ。
話を聞き終わると、頭を抱えて悩んでいる。
ジルとギルは相変わらず俺を殴ろうとしてくる。
俺のせいでイザルナが連れていかれた。
【共和国】でもみんなに迷惑をかけたのに。
ここでも、足を引っ張ってしまう。自分が情けなくてしょうがない。
「どうしますか?ガルフォードさん。」
「少し、時間良いか。」
もう少し長考したいみたいだ。
一人で暗い森へと入っていく。
・ガルフォード視点
どうすればいいんだ…。
ここで、今まで姫様に方針を考えさせたツケが回って来るとは。
おそらく、姫様は拷問に合う。
そこで、目的を知られる。そうなると、今すぐにでも本を見つけることが最重要になる。目的を知られて、先手を打たれるとどうすることもできなくなるから。
でも、姫様が心配だ。
大人びてはいるが、自分よりも年下の女の子。拷問に耐えられるとは思えないし、そんなことをされる前に助け出さなければいけない。
姫様は王都にいると考えた方が良い。
王都までは馬車で数日かかる。
その間に、拷問は確実に終わる。そうなると取り返しのつかないことになる。
救出組と捜索組に分かれるか?
いや、あの量の本を数人で見つけ出すのは無理だ。不可能と言い換えてもいい。
拷問には半日もかからないだろう。半日で、形も分からない本を8人で見つつけられる保証もない。
手詰まりか…。
クソ…!何も案が浮かばない。
『移動』でフィリスだけ救出に向かわせるか?
無理だ。【共和国】じゃないんだ。【アルドリア】では、『魔法』に対する『結界』が発達しすぎてる。
しかも、この距離を『移動』で往復するのは厳しすぎる。魔力切れによるリバウンドで命を落としてしまう。
姫様には申し訳ないが、本を最優先にするか?
無理だ。レンジは相当責任を感じている。一人でも向かうに決まっている。ギルやジルもそうだ。
そうなるとルガンが馬車を引くしかない。ここで4人に抜けられると、本は見つけられない。
クソ…!クソ…!!どうする!?




