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英雄譚  作者: 鈴木 雫
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第二十六話

・ガルフォード視点


 足跡を辿った先は、何かの倉庫のようだ。

 どの国でも、やることは一緒だな。

 扉に近づき、中を確認する。

 気配がする。数人の。

 剣を構えて、突撃する。俺が正面から。ルガンが裏から。フィリスは俺の後ろで援護だ。


「『閃光』」


 フィリスが倉庫内を光で満たしてくれる。

 帽子をかぶっている俺からすれば明るい程度だが、不意打ちをされた側では対応できずに何も見えなくなるはずだ。

 数人の龍人を確認する。

 目を手で覆っている間に、制圧する。

 抵抗していなかったので、簡単に事が終わる。

 ルガンが突入してきたときには終わっていた。


「レンジは?」

「分からん。探すぞ。」


 3人で探すが見つからない。

 しかし、こんな連中にレンジが負けるとは考えづらい。

 何があったんだろうか。


「ガル、ルガン君」


 フィリスに呼ばれて、向かう。


「馬車の後だ。どこかに連れていかれてる。」

「しまったな。もう少し早く来るべきだった。」

「しょうがないよ。あともう一つ。」

「なんだ?」

「私の魔力が尽きたから、これ以上は『魔法』が使えない。」

「そうか。俺の魔力を使ってくれ。ルガン、馬車の用意を頼む。」

「分かった。」


 ルガンが走って、馬車を取りに行く。

 馬車の方向的に、【グレンウッド】か。

 何をしに行くのか見当もつかないが、追いかけるしかない。

 姫様たちを迎えに行きつつ、馬車を追うことにする。


「ガルフォードどうしたの?」

「レンジは連れ去られました。【グレンウッド】に行きましょう。」

「分かった。」


 3人を新たに乗せた馬車はレンジの故郷へと向かう。


「ガル。手を貸して。」

「あぁ。」


 フィリスが手を握ると、力が抜けていく。

 魔法師は常時こんな経験をしていると考えると、自分には向いていないと再認識できる。


「このまま、真っ直ぐにね。」

「分かった。」


 ルガンは今までには見せなかったであろう速度で駆け抜ける。

 『探索』は対象の人物を探し出す『魔法』だ。使用するにはある程度条件がある。一つ目に知っている人物であること。二つ目に直近の行動を知っていること。

 この二つが揃った今、レンジを見失うことはないだろう。


「ここを曲がっている。」

「分かった。」


 遠心力で体が傾く。

 どんどんと体から力が抜ける。

 今日一日中は使えないだろう。

 『探索』は一度やめると、もう一度直近の情報を集めなければいけない。

 だから、限界まで使う必要がある。

 幸いここにはまだ、3人魔力が余っている者が居る。

 それまでは追いつくことができるだろう。


「見つけたぞ。」


 全速力で走っているルガンが絞り出すような声で言う。

 前には一台の馬車を見つける。

 豪華な装飾がされているために、相当な重量があるだろう。

 これが、逃げ切れなかった要因だ。


「ジル、ギル馬車に乗り込め。」

「「分かった。」」

「フィリス、俺の魔力を限界まで使ってあの馬車を止めろ。」

「分かっているよ。」

「姫は、待っていてください。」

「私も加勢するよ。」

「レンジがどのような状態かわかりません。『回復』が必要になるかもしれませんから。」

「分かった。」


 真後ろまで追いつく。


「『風』」


 馬車を引いている獣人を追い風で遅くする方法か。

 こちらは真後ろについているために、抵抗を受けない。

 着実に距離を詰めていく。

 口の中から血の味がする。

 目から、雫が垂れるのを感じる。


「もう一度だ。」

「え、でも、ガルの体は」

「もう一度くらい耐えられる。」

「分かった。『水』」


 馬車が通るであろう道を湿らせ、走行を妨げる。

 かなり、速度が落ちている。

 向こうもこちらに気づいたようだ。

 ジルとギルは外に身を乗り出し、飛び込む準備をしている。

 耳から、水滴が顔を伝う感覚がある。

 自分の真下は赤色の水滴が垂れて、水たまりができている。

 これが、『魔法』によるリバウンド。本人は『魔法』を行使したのちにこれを支払わなくてはいけない。

 だから、姫様に『魔法』を使わせるわけにはいかない。

 ジルとギルが馬車に乗り移り、獣人と馬車を切り離す。

 馬車は完全に静止し、中から数人の兵士が出てくる。

 この兵士は見覚えがある。オルヴァニス卿の兵士だ。


「貴様ら!何の真似だ!!」

「お前らこそ」

「レンジを」

「「どうするつもりだ?」」

「外人には関係ない。」

「そうか。」

「足引っ張るなよ」

「ジルこそ」

「「お前が合わせろ!!」」


 ジルとギルの剣劇。

 彼らは意識がつながっていないとできないような連携を常にとる。数日に一回は喧嘩をしなくては気が済まない二人だが、お互いに信頼しきっている。

 兵士は4人。

 ジルが最初に剣を奪い、ギルが首を落とす。

 ギルが剣を受け、ジルが腕を落とす。

 ジルが剣を受け流し、ギルが追撃で腕を落とし、ジルが首を刎ねる。

 最後は二人で相手の腹に十字傷を刻む。

 腕だけ落とした兵士に剣を向ける。


「「レンジはどこだ?」」

「っ!…中だ…」

「「分かった。」」


 二人が中へ入っていく。

 ぐったりとしたレンジを外に連れ出して、帰って来る。


「どうです?」

「姫様」

「「俺が助けたんだ。」」

「違うこいつは何もしてない」

「こいつが居なかったらもっと早く終わってた。」

「二人とも落ち着いて、すぐにここを離れましょう。」

「どこへ行く?」

「【グレンウッド】へ。」

「分かった。」



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