第二十五話
・イザルナ視点
遅い。遅すぎる。
交渉には時間がかかると思っていたが、これほど時間がかかるのはおかしい。
何かあったんじゃないだろうか。
焦りを紛らわすために立ち上がってうろうろする。
「どうしたのです?」
「いえ、ちょっと…」
「レンジのことですか?」
「えぇ。」
さすがガルフォード。
何を考えているのかお見通しだ。
「遅すぎない?」
「そうですね。少し、遅い気がします。」
「そうよね。」
やはり何かあったんじゃないだろうか。
焦りが恐怖へと昇華する。
捕らえられているのではないか。
何かに巻き込まれているのではないか。
はたまた、この世にはもう…。
嫌な想像だけが、自分を支配していく。
もう少しうろうろする。大丈夫だ。レンジは強い。今、帰路についているに違いない。
そうだ。もう少し待とう。
そうすれば、帰って来る。
いくら、自分を言い聞かせても消えない邪念。レンジの顔が脳裏に浮かぶ。
「ガルフォード見てきてくれない?」
「分かりました。フィリスを借りても?」
「えぇ。お願いね。」
「分かりました。フィリス。来い。」
「なんだい?」
「行くぞ。」
「分かったよ」
ガルフォードとフィリスは街の方面へと消えて聞く。
二人の髪色は目立つものがあるが、帽子を持たせたので大丈夫だろう。
「姫様」
「気分が」
「「すぐれませんか?」」
「大丈夫。心配しないで。」
「「そうですか」」
「えぇ。みんなが帰ってきたときのご飯でも採ってきましょうか。」
「「はい!」」
無事なら良いのだけど…。
・ガルフォード視点
姫様の予想は的中する確率が高い。
俺もレンジが遅すぎると思っていた。
あいつは正直者だから、船が手配できなければ帰って来るタイプだ。
船が手配できるまで帰ってこないタイプではない。
帽子を深くかぶり、髪色を隠す。
横にいるフィリスも帽子をかぶって、その青髪を隠している。
ふと、壁にあった手配書らしき紙を発見する。
その顔はレンジその者だった。そういうことか。
これは、何らかのアクシデントが起きてもおかしくない。
急いで、ある場所に向かった。
前にレンジと一緒に来たことのあるルガンの家。
ここの出身者に話を聞くのが一番早い。
ドアを叩く。すぐにルガンが出てきた。
「どうした。」
「すまない。少し力を貸してほしい。」
「構わない。何があった。」
「まだ、確定したわけではないが、レンジが行方不明だ。探すのを手伝ってほしい。」
「分かった。すぐに行く。」
「すまない。助かる。ありがとう。」
「いいんだ。」
ルガンと3人でレンジを探す。
船を手配しようと海の周辺で聞き込みしていたに違いない。
あいつならそうするだろう。
海周辺でルガンが話を聞いてくれる。
「昼間に人間が話しかけてきたらしい。」
「レンジだな。」
「レンジ君は近くにいるんじゃないの?」
「そうだな。昼間にここで目撃情報があるってことはそこまで遠くには行けないはずだ。」
あまりこういう場面で突っ込みたくないが、あいつは漁船で大陸を渡るつもりだったのか。
不可能を通り越して、泳いで行った方が現実的だ。
馬鹿すぎる。これを手配して、自殺でもしに行くのだろうか。
「レンジ君は漁船を借りようと思ったのかな?」
「そうだろうな。あいつアホだな。」
二人も同意見らしい。
さすがに船の知識が無くても、この大きさの船を借りることは考えなさそうだ。
その聞いてきた人間がレンジか怪しい。
別人かもしれない。
「借りに来たのは本当にレンジだったのだろうか。」
「疑問点だね。流石にレンジ君でも、この大きさの船で大陸を渡ろうとは考えないはずだよ。別人の可能性が高いね。」
「どうだろうな。あいつは知識に偏りがある。しかも、森の育ちなら考えづらくもない。」
頭を悩ませる。
純粋な馬鹿か、別人かの究極の選択。
ここで二手に別れてもいいが、聞き込みが困難だし何より土地勘がない。
3人で動いた方が良いのか。
ここで、悩み事が増えてしまった。
どうする…!
一刻を争う状況でのこの2択はかなりまずい。
「一旦、ガルと私でこの周辺を探索して、ルガン君はにはもう少し聞き込みをしてもらうことにしない?」
「そうだな。そうしよう。」
「分かった。」
「この周辺で人が居そうなところは?」
「そうだな…路地裏とかどうだ?」
「人が居ないだろ、そこには。」
「逆だ。レンジは強い。やられたとするなら人が居ないところに決まってる。」
「そうだな。周辺で探してみる。」
「俺はこの辺で話を聞くから、後で合流だな。」
「頼んだぞ」
「ああ。」
ルガンと別れ、フィリスと近場を探す。
路地裏を見て回ったが、なんの痕跡もない。
フィリスも『魔法』で痕跡を探しているが、何もないみたいだ。
帰ろうとした時。
「ガル。こっち。」
「何かあったか!」
「これ、」
地面を指さすが何も見えない。
「なんだ?」
「レンジ君の足跡だよ。間違いない。」
「本当か!いつのだ?」
「これは最近のだよ。そんなに時間は経ってないよ。」
「じゃあ、足跡を辿れば。」
「いや、誰かに連れ去られている。」
「は?」
「足跡が無くなっている。連れ去った側の足跡を辿るしかないね。」
「分かった。ルガンを連れて行こう。」
「そうだね。急いだほうがよさそう。」
急いでルガンと合流して、足跡を辿る。
手配書が出回るくらいだ。
誰がレンジを連れて行っても不思議ではない。
無事を祈って、街を徘徊する。




